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2012年04月05日(Thu)

アール・ブリュット アート

先日、兵庫近代美術館に「解剖と変容」展といふのを観に行ったんだけれど、これは所謂“アール・ブリュット”と呼ばれる芸術の展覧会。“アール・ブリュット”とは“生の芸術”といった意味のフランス語で、まぁ、一般的には精神障害者による芸術を指します。でも、それだけではなく、正式な美術教育を受けていない、金儲けや虚栄としがらみになった美術界の外に居る人たちによる芸術も、指します。これの英語訳が“アウトサイダー・アート”ね。

この展覧会、「天空の赤」といふアール・ブリュットに関するドキュメンタリー映画もやってゐて、これがまたなかなか面白いんだけど(映画「レインマン」のモデルになった人も出て来る!)、その中でフランスの美術関係者の人が“アウトサイダー・アート”といふ呼び名に怒ってゐました。そんな呼び名はこの芸術の意義を正しく反映してない!イギリス人はほんとなんにも分かってない!と。ははは。フランス人とイギリス人が揉めてゐるのは、いかにも紋切り型で見てゐて微笑ましいですね。
この“アール・ブリュット”といふ呼び方には、多分“タブラ・ラサ”信仰があると思はれます。人間の心は“真っ白な紙”の様なもので、教育がそこに色々と書き込んでいく。が、それは一種の堕落であって、何も書いてない真っ白な紙の状態が一番純粋で素晴らしい、と。だから、美術教育に汚されてゐない人々の芸術が素晴らしいんだ、といふ訳でせう(むろん、その中でも優劣はありますが)。
しかし、私は“タブラ・ラサ”信仰なんて間違ってると思ってますので、さういった意味では、美術業界の外側に居る人たちによるアート、といった意味での“アウトサイダー・アート”といふ呼び名も、結構いいと思ってます。
ただ、“アール・ブリュット”といふ呼び名は、語感がいいよねぇ。ブリュッとしてて。

んで、この展覧会はアンナ・ゼマーンコヴァーとルボシュ・プルニーといふ二人のチェコ人による作品が展示されてゐました。アンナの方は有名ですが、プルニーの方は全く知りません。結構若い・・・っていふか、我々と同じくらゐの人です。が、このプルニーが良かった。めっちゃかっこいい!・・・ところで、この人の作品、ヤン・シュバンクマイエルの作品に結構似てるんだけど、なんか関係あるのかなぁ。かういったのって、チェコのなにかに基づいてる、とか。誰か知ってる人が居たら、教へて貰ひたいものです。

そんなこんなで、この展覧会のパンフレットも買ひ、オパールのカウンターの上に置いて、常連さんたちとあれやこれやと盛り上がったりしてゐたのですが、ある時、老紳士三人組がやってきて、オパールのカウンター席に座りました。「一人ではよー入らんけど、三人やから入ってきた」といふ通り、あまりカフェに入る様には見えない人たちだったんですが、とても感じの良い人たちで、且つなかなか面白い人たちでした。
と、そのうちの一人が、ふとカウンターの上のパンフレットに目を止め、「おお!アール・ブリュットや」と叫び、三人でなにやら盛り上がり始めたのです。どうやら三人は絵を描く人たちの様です。興味深げにその様子を眺める我々に、その人は「いや、ボクたち、滋賀から来たからさ」と言ひました。意味が分からず戸惑ってゐると、「ほら、滋賀はアール・ブリュットだから」と、さらに追ひ打ちをかけてくる。
後で調べて分かったのですが、滋賀県は日本のアール・ブリュットの最先端地だったのです!施設が多い、といふのは聞いてゐましたが、まさか積極的にアール・ブリュットを打ち出してゐるとは。いや、全く知りませんでした。

・・・てな話をマツヤマさんにしてゐると、マツヤマさんが「オパールの常連で作品を作って、展覧会をしませう。どうもブリュットな人たちが多い様な気がするし・・・。題して『オパァール・ブリュット展』!」と言ひ出しました。
まぁ、確かにブリュット感溢れる常連が、なぜか多い様な気がしますが。オイシンとかウメDとかK-Zとか。
「でも、オイシンはちょっと怪しいわよ。なんか世俗に塗れた不純な感じがする。純粋なブリュット感は薄いんぢゃない。」とトモコ。
「さうですね。彼はせいぜいジミー大西って所でせう。」
テラリーはどうですか。彼も微妙ですかね?まー、普通の人に見えますけど。
「う〜ん、でも彼は別の意味でブリュット感があるからなぁ。**っぽい、といふか」
それ、絶対テラリー怒ってますよ!なんか、素晴らしくツボを突いてるだけに(「シェイム」レビューのコメント欄参照)。
「やっぱウメDが最強かしら。昔、“クレヨン犬”とかいふ犬の絵を描いてたけど、なかなかいい感じだったし」
「そらね、ウメDは実家が滋賀だから」
ああ、さうか・・・。

まぁ、こんな話をしてゐる我々三人が、最も“ブリュット”なのかもしれませんがー。

Comments

投稿者 可能涼介 : 2012年04月23日 00:50

某精神科クリニックで働き始め、「アール・ブリュット」の実物に、日常的に接しています。

24(火)夜十時からBS11で放映されるらしい「宮崎美子のすずらん本屋堂」というのに、出演しました。
自分でも見られないんですが、見られる方は見て、できればyou tubeで見られるようにしてくださると、ありがたいです。
天敵の福田和也氏と同席しています(あっちは何とも思っていないようで、普通に話したそうにしていました)が、まったく会話をしていない様子に、一種の「突き抜け」が見られるかもしれません。司会の宮崎美子さんが、気の毒でした。

投稿者 元店主 : 2012年04月24日 00:42

ほほう、その番組、是非みてみたいものです。
私もテレビみられないからね、誰かがYOU TUBEにあげてくれれば、ありがたいです。

ところで、なんかこのコメント欄、可能涼介通信みたいになってきたな・・・。

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