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2016年12月14日(Wed)

この世界の・・・/萌え/片隅に etc

11月28日~12月12日

この世界の・・・

『この世界の片隅に』のマンガ版、つまりこうの史代による原作を読みました。上・中・下の3巻。誤解を恐れずに言ってしまへば・・・私はアニメ版よりこっちの方が面白かった!
・・・いや、アニメ版も素晴らしかったし、そもそもこれは較べられる様なものではないんですが、まぁ、個人的な好みを言へば、ね。

まづ、尺の問題があって、アニメ版はマンガ版より短い。といふ事はカットされた話があるのですが、これがまたいい話なので、マンガ版に愛着が沸く、といふのがあります。あと、絵がいい。アニメの絵もいいけれど、私は断然にマンガ版の絵が好き。マンガ版の方がすずさんが可愛い!!
しかし、なによりもマンガ版の方が表現的に攻めてるのが、私的にはグッとくるのです。
アニメ版も、空襲のシーンとかビックリするほど凄い表現力で、恐かったくらゐだけども、全体としては割とオーソドックスな作り。堅実で、洗練された、いい作品。
対してマンガ版の方は・・・筆で描いたり、左手で描いたり、全編当時の流行歌で通したり、愛国カルタ風にしたり・・・と、表現に様々な工夫があります。なにより、全体に複雑な構成になってゐて、様々な読解が可能な風になってゐるのです。
それはむろん、右手の解釈にかかってくるのですが・・・私がネット上で読んだものでは、全ては(広島で片腕を飛ばされて死んだ女性の)右手の描いた夢である、と。過ぎた事、選ばんかった道。みな覚めた夢・・・。つまり、すずさんは存在しない!といふ過激な解釈もありました。確かに、さういった読みも可能な風に描かれてゐるのです。なかなか一筋縄ではいかない、複雑で豊穣な作品です。(アニメ版の方は、もっと単線的です。それは多分、意識的にさうやってゐる。さうやって、お話としての強度をあげてゐる。そちらをとった、といふ事でせう)

私は俄然、こうの史代といふ人に興味が沸いてきました。さっそく他の作品も読んでみよう!と、『長い道』をアマゾンで探したら・・・絶版かよ!KINDLE版しかないけれど・・・。むむー、この映画の大ヒットを機会に、復刊せんかねー。

萌え

アニメを観始めて数年。未だ「萌え」といふのがよく分からん・・・といふのが正直な所です。この間も、ヤマネくんが来て「やー、ボクは『この世界の片隅に』のすずさんに萌え萌えですよー」といふので、いや、『この世界の片隅に』に“萌え”はないんぢゃないか?と私が疑問を呈すれば、「さうですか?でも、西島大介も、すずさんは『けいおん!』の唯ちゃんみたい、と言ってましたし、こうの史代も、もともと萌え四コママンガを描きたかった人なんですよ」とか言はれてしまった。
う~む、しかしその意見には色々と違和感がある・・・。そもそも“萌え”の定義がよく分からないんですが、ってか、今や“萌え”の定義は拡散してしまって実質崩壊してる、といふ説もあるさうですが、とにかく、まぁ、二次元のキャラクターに対する愛情、といふ大意はあると思はれます。
が、二次元のキャラが好き!といふだけの事なら、それがそんなに特別な事とは思へないし、そもそも“好き”といふのは人それぞれなので、“萌えキャラ”とか“萌えアニメ”といふ特定のネーミングは変、といふ事になると思ふのです。やはりなにか共通する、特定の何かがあるのではないか・・・。
私が漠然と考へてゐるのは、日本のアニメが歴史的に育んできた記号性の純化したもの、といふものです。目が大きい、とか、頭が大きい、とか、メガネとかネコ耳とか、ドジッ子とかツンデレとか・・・まぁ、さういった記号性の純化されたもの、それが“萌え”ではないか、と。
記号性が純化される、とはどういふ事かといふと、いはゆる内面性みたいなものが希薄化され、ペラペラの記号性のみの人格になる、といふ事です。私のイメージで言へば、『ガルパン』とか『アルペジオ』に出て来る女の子たち、みたいな感じ。ああいふのって、ああ萌えだなぁ、とか私は思ふのです。でも、あまりにペラペラに記号的過ぎて、私はちょっと惹かれない。やっぱ、ヲタクの方々は、女の子に不透明な内面性とかあったら鬱陶しいのかな、とか思ったり。
こんな事を書くと、萌え批判、みたいに思はれるかもしれませんが、さうではありません。たとへ“萌え”がペラペラの記号性の事であったとしても、それはそれで過激な意味を有すると思ふのです。それはキャラを象徴性として扱ふといふ事で、象徴劇としての特性を持つアニメ(やマンガ)の可能性を過激に押し進めたもの、とも言へるのではないか。(ペラペラの記号性に豊穣な意味を与へるのは、象徴に対する深い理解と、感受性、そして想像力だと思はれます)
ま、それはともかくとして、私個人の好みで言へば、記号性と内面性のバランスがとれてゐる(と私が感じる)ものが好きで、それはやっぱ『けいおん!』の唯ちゃんとかだな。だから私にとって、『けいおん!』は萌えアニメではないですよ。いはんや『この世界の片隅に』に於いてをや。
すずさん、メチャメチャ可愛いけどね。

片隅に

ヒマだ。毎年12月の始めはヒマだけど、今年はより一層、ヒマだ。お客さんの居ない店内を見回しながら、何杯目かの珈琲を飲んでゐると、世界中から忘れ去られてゐる様な気分になってくる。なぜ、誰も来ないのか。なにか、うちの店には足らないのだらうか。

「誰でも何かが足らんぐらいで この世界に居場所はそうそう 無うなりゃせんよ すずさん」by 白木リン

誰か、この世界の片隅に、オパールを見つけてくれんかねぇ。

Comments

投稿者 ワリイシ : 2016年12月15日 20:46

一冊持ってますよ。
凪の街・桜の国ってタイトルやったかな。
とても素晴らしい作品で、実写映画化されてたと記憶してます。
実家にあるはずなので探しておきます。

投稿者 元店主 : 2016年12月16日 02:36

おおー!それは有り難い。いつもありがたうございます。

ワリイシさんも『この世界の片隅に』はご覧になられましたか?もしまだなら、オススメです!来年からは、一挙に上映館数が増えるさうなので、観やすくなりますよー。
マンガ版も、私はヤマネくんに借りたんですが、むろんオススメです。

投稿者 ワリイシ : 2016年12月16日 07:30

もちろん観ましたよ。
桂川イオンで観たのですが、スクリーンが大きくて良かったですよ。
映画の帰り道にアマゾンでコミックポチりました(笑)
以前の作品より絵がこなれて上手になってはったので、いささか驚きました。
漫画はやはり完璧な世界観という感じですね。
映画はそれを損なわず上手にしてはるなぁと思いました。
動画でしか表現出来ない事をやってはったし。
ばっさり切られたエピソードがある無いで、夫婦の印象が変わるので、読後はその点が残念に思いました。

では前にお約束してた漫画と一緒に持っていきます。

投稿者 元店主 : 2016年12月18日 02:23

さうでしたか。桂川イオン、スクリーン大きくていいと評判ですよね。
私はシネ・リーブル梅田で観たから・・・スクリーン小さかった。残念・・・。それでも、良かったけどね。

では、御来店お待ちしてをりまーす。

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