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2008年08月14日(Thu)

「ダークナイト」 ☆☆☆★★

Text by Matsuyama
父さん、昨日、友達に父さんのこと言ったら『それは電波系オヤジだ』って言われたけど、父さん電波の研究もしてたの?
……
すごいね。
なぁ◯◯◯◯、父さんはバカにされているのだよ。
『電波系』っていうのはねぇ、一部の猟奇犯罪者が『電波にコントロールされている』って共通して言うことから、街のヘンな行動をする人、トンデモなことばかり言う店主のいる店なんかを、一部のアングラ系漫画家が『電波系』ってジャンル付けて笑いの対象にしていたんだよ。
でもね、そういう人たちの中には先天性の障害を持った人や、想像を絶する辛い出来事がきっかけでそうなってしまった人も多いから簡単に笑い者にしてはいけないんだよ。
『電波系』を作った人たちは『そうじゃない、笑い者にしているワケではない』って言うかもしれないけど『じゃぁ何なんだ!』って言ってやるよ。
そんな邪悪な世界にこそジョーカーが現れるのサ。
ダークナイト!
ババーン! クリストファー・ノーラン監督!
前作よりも面白かったぞ!
でも父さん最初の方の15分くらい寝てたじゃん。
えっ、あっ、あれはだな、父さんはクリスチャン・ベイルの顔を見たらつい眠たくなってしまうんだ。
あの人1年間寝てなかった人だから、顔見るだけで『寝なきゃ』って思って、ホントに眠たくなってしまうんだよ。
それ『マシニスト』って映画の中の世界ですから、そういう役やってただけですから、本人はちゃんと寝てたサ。
お前寝てるとこ見てたのか?
あいつ今だってヤツれたトム・クルーズみたいな顔してるぞ。
あれは絶対寝てないね。
いやいやクリスチャン・ベイルは元々ああいう顔だって。
トム・クルーズがヤツれているわけじゃないから。
ややこしいんだよ、父さんは。
で、『ダークナイト』だけど、いきなりオチ言っちゃってイイ?
えっ、あの映画でオチなんてあるのか?
たぶん見抜いたのはボクだけだと思うけどね、実はジョーカーという存在はね、バットマン、即ちブルースの妄想で、ジョーカーはブルース自身なん……
マっ、◯◯◯◯、それは『マシニスト』のオチだぞ!
親子でこんなことばかり言ってたら誰にも読んでもらえなくなるぞ。
話を元に戻そう。
とりあえず今回はネタバレ少しだけあるけど。
前回もそうだったけど、今回はさらに(視覚的に)暗い世界だったね。
ゴッサム・シティもずいぶんシンプルになってるし。
そうだね。
ゴッサム・シティがそれだけ荒んでいるということなんだ。
モノレールは前作『バットマン ビギンズ』で破壊したからねぇ。
ああいうオンナ、コドモを寄せ付けないような映像作品を堂々と作るところがシビれるんだよねぇ。
ジョーカーを殺すチャンスは何回もあるのにどうして殺さないのさ、シリーズが終わってしまうから?
いやそんな単純なことじゃないと思うよ。
ジョーカーの存在によって地下に潜んでいた悪が暴かれる。
悪があるから、ヒーローも存在するんだけど、そのバランスを保つには悪が無くなっては困るのサ。
悪がなければ無理矢理にでも作らなければならない。
誰にでもある邪悪な要素を引き出して、意図的にでも悪を作り出すのがジョーカーの役割なんだと思うよ。
邪悪な心って誰でも持っているの?
そうなんだ。
特に◯◯◯◯なんかは生まれてからまだ8ヶ月だから、邪悪の塊のようなものなんだよ。
悪というのは欲望を満たすためには手段を選ばないことなんだ。
お前はまだ欲しければ泣きわめくだけだけれど、このまま父さんや母さんが何も教えないまま大きくなれば、奪ったり殺したりするようになるのだよ。
『シティ・オブ・ゴッド』のような世界になるのサ。
それでも父さんたちも善意に満ちあふれているわけではないんだ。
じゃぁ人は善人にはなれないの?
100%は無理だと思う。
たとえなれるとしてもものすごい修行をしなければならない。
でも、この映画の中では2隻のフェリーのシーンで描かれているように、12時までに起爆スイッチを押して他方のフェリーを爆破しなければどちらも爆発するという状況で、今現在、自分が生きていることで、相手がスイッチを押していないことに気付き、自分は生きているのではなく生かされていることを知ったとき、そこにいた人たちは善意に満ちていたんだ。
12時になってもフェリーは爆発しなかったのは、悪のない場所にジョーカーの悪意は及ばなくなるということなのサ。
なるほどね。
で、深読みはないの?
もちろんあるよ。
でた! 電波系。
電波系って言うな!
じゃぁ何て言えばいいのさ。
ファンタジー系。
……
さて、アメリカン・ヒーローというものなんだけど、これは誰もが知っている通り『ヒーロー=正義=アメリカ』で、それはたとえダーク・ヒーローであるバットマンであっても同じことなんだ。
ブルース・ウェインのように大富豪で慈善事業家で、金で買えるものはすべて手に入れることができ、軍事力も強大。
そして司法も行政にも力が及ぶことが出来るのは誰か。
ロックフェラー?
正解!
デビッド・ロックフェラーを当主とする現ロックフェラー石油財団が今の世界の最高権力なんだけど、アメリカを手中に収めている一族は利益を得るため多くの戦争を仕掛けてきたんだ。
大統領はただのお飾りだから、JFKみたいに勝手な行動をとったら、ああやって暗殺されてしまうのサ。
前作『バットマン ビギンズ」では、独立後の合衆国が日本に勝ってから冷戦の初期を描いていたんだと思う。
えっ、そうだったの?ボクが思っていたのは911同時多発テロ以降の復讐の正当化を描いたのかと思ったんだけど。
それでもいいんだ。
いろんな解釈があっていいんだよ。
◯◯◯◯、いいか、人に流されず、自分の意志は簡単に曲げるものではないんだ。
正しいと思ったら貫きなさい。
そして間違いだったとわかったら素直に認めなさい。
うん、わかったよ。
じゃぁ『ダークナイト』の父さんの解釈を聞かせてよ。
そう、新作ではロックフェラー、そしてアメリカの弱体化を描いているんだ。
バットスーツは動き易いように改良はしたけど防弾性が弱くなり、バットモービルも途中で動作不能になったのは、国力が落ちたことだろうね。
ロックフェラーは蛇口から流れ出る水のように$紙幣をすり続けてきたことで$の価値もなくなってきた。
ジョーカーがそれを暴いている。
どうしてレイチェルは死ななければならなかったのサ?
レイチェルという名を聞けば思い出すんだ。
父さんが若いときの夜遊び仲間のひとりにレイチェル(自称、もちろん日本人、日本人ガオ)ってのがいてねぇ、って話を他人にすると、どこのグループにも自称レイチェルってヤツがいたみたいなんだよ。
それもオトコだったりオンナだったりして。
レイチェルって(笑)…ねぇ。
父さん、ダメだよ話しそらしちゃ!
オォっと、スマンスマン。
レイチェルってブルースの幼なじみだよね。
ロックフェラーにとってのブッシュ一族のような存在だと思うんだ。
レイチェルが死んでハーヴェイ・デント検事が生き残るだろう。
ハーヴェイ・デント役ってティム・バートン版では黒人だったんだけれど、そこが気になるんだ。
ちなみに次期大統領は最初からオバマに決まっているらしいねぇ。
よくわからないけど、とにかくアメリカ国民の意識が変わってきているということが『ダークナイト』最大のヤマなんだ。
さっき触れたフェリーのシーンだ。
もう戦争をするアメリカは好きじゃないっていうことなんだよ。
中国人のラウって出て来るけど、どういう存在だったの?
そこも父さんにはわからないのサ。
何で?
そこで寝てたのサ……

……
もう一回観ますか……
長いからイヤ!
バッチグーのオススメ。
それダサイよ。

Comments

投稿者 テラリー : 2008年09月04日 12:54

ご無沙汰しております。
先日やっと観てまいりました。やつれたトム・クルーズ、まさにといった感じで笑ってしまいました。
原作ではデント検事は白人ですので、ティム・バートン版のほうが設定変更されていたようです。

フェリーでの黒人囚人にしびれました。

投稿者 マツヤマ : 2008年09月04日 19:47

久しぶり!次のレビューはたぶん「20世紀少年」です。観てね!

投稿者 オガワトモコ : 2008年09月08日 17:52

黒人囚人,つまりディーボですな。出てくると嬉しくなります。
彼はいつだってディーボで、(たぶん)外見も芸風もちっとも変わりませんね。

投稿者 テラリー : 2008年09月14日 23:36

そうです、ディーボです。
ほんとにいつでも同じ芸風で、存在感抜群ですね。
アイス・キューブもそうですがほとんど外見が老けないですね。

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