パーティで女の子に話しかけるには [強制起訴シリーズ]
起訴者: 元店主
強制起訴シリーズ85弾
1977年、ロンドン南部特別区クロイドン。世の中はパンク旋風の真っ只中。エン(アレックス・シャープ)と友人二人のボンクラ三人組も、案の定流行に乗ってパンクスだ。ファンジンを真面目に作ってレコード屋に配ったり、クラブ巡りをしたり、チャリに乗って街中を“パンク”したりする毎日。でも、不良あがりのパンクスたちからはバカにされ、どうにもパッとしない所もある。まだ童貞だし…。ところがある日、エンは不思議な美少女ザン(エル・ファニング)に会う。実は彼女は宇宙人であった…。
監督は、先日も舞台版『ヘドウィッグ・アンド・アングリーインチ』で来日公演を行ったジョン・キャメロン・ミッチェル。原作はニール・ゲイマンだ!
- ヤマネ
- ダメでした!ダーメ。なにこれ。これなら『怪獣惑星』の方がましですよ!
- マツヤマ
- オレもダメだった。まったく、ちっとものれないし、面白くない。
- 元店主
- ええー、二人ともダメだったんですかー。私は割と、思ったよりずっと、良かったです。
- ヤマネ
- ふーん。前回の『怪獣惑星』に引き続き、ボクとマツヤマさんがダメ、ケンタロウさんがわりと良い、と分かれましたね。最近、ボクたち気が合いますね!マツヤマさん!
- マツヤマ
- おう。今度二人で温泉でも行くか。
- ヤマネ
- いいですねー。その話はまた後で…。まぁ、始まった瞬間は結構いいかも!と思ったんですよ。ダムドが流れて、それに乗って チャリを飛ばしながら街中にボムしたりして。お、かっこいいやん!と。
- マツヤマ
- そうなのか?オレはそこはキツかった。ダムドかなにか知らないが、いきなりあんなハイテンションで…正直ついていけん、と思ったわ。10代の若者ならともかく、ごちゃごちゃしてしんどいわ。最初から全然のれない。オレが唯一いいと思ったのは、劇中のバンド、ディスコーズだったか、あのバンドのライブシーンだけ。あれはいいと思ったな。
- ヤマネ
- うっそー!あのシーン最低〜。てかあのバンド最低。格好も悪いし、曲もダサい。ボクはあそこで一気に落ちました。あんなののどこがいいんですか?マツヤマさん、趣味悪い〜。
- マツヤマ
- …やっぱりオレたちは合わないな。もう温泉の話はなしだ!
- 元店主
- あの〜…私はこの映画の世界観とか雰囲気、美意識なんかが割と好きだったんです。イギリスの郊外の団地とかある感じ、そこにパンクとかレゲエが流れていて、宇宙人とかが出現する、という…ちょっと演劇的な感じとか。昔、若い頃に好きだった感じなんですね。具体的にはデレク・ジャーマンとか。
- ヤマネ
- はあ。デレク・ジャーマンですか…それはよく分からなかったな〜。むしろ色遣いとか、『ホーリーマウンテン』ぽくなかったですか?
- 元店主
- いや、それは違うな。全然違う。むしろこの映画はホドさんの新作『エンドレスポエトリー』と共鳴してるんだよ。この映画、「6」がテーマだったろ?『エンドレスポエトリー』も6の映画なんだよ。
- ヤマネ
- えええー、「6」の映画って何ですかー、全然わからない!
- 元店主
- 「6」っていうのは、簡単に言うと「別れる前に強く結びつく。その事によって別れた後も次の段階に進める」って事なんだ。詳しくは、uplinkや京都みなみ会館で行われたトモコの『エンドレスポエトリー』解説を聞いて貰えたら分かるんだけど…。まあ、とにかくこの映画は「6」のテーマを持った作品で、「6」の象徴が散りばめられている。うわー、『エンドレスポエトリー』と共鳴してるやーん、と、トモコと共に映画館でひっくり返ったよ。
- ヤマネ
- むむむ〜…そうなんですか…ボクにはよく分かりませんが…。でも確かにこの映画、象徴や比喩、なんとなくの暗喩に満ちていて、それがスノッブな感じで…ボクは膝にきました。ガクガク。宇宙人はニューウェーブなんですか?
- 元店主
- この映画がスノッブ?その感覚こそ分かんないよ。思わせぶりで訳わかんない薄っぺらな暗喩に満ちていたらスノッブだろうけど、この映画のはそうじゃないでしょ。さっきの「6」の象徴の話だって、別に分からなくても映画のストーリーを理解したり楽しんだりするのに支障はない訳だし。それともヤマネくんは、この映画の象徴や暗喩が薄っぺらだと感じたの?
- ヤマネ
- まー、そうですわね。単にボクの理解が浅かったのかもしれませんが…。ん〜、なんだろ、さっきも言った様に、ボクはこの映画の音楽やファッション、美術なんかがダメダメだと思ったんです。でも、ケンタロウさんはそれがいい!と思ったんですよね。そう言われたら、そうかも、としか言いようがないんで…もう、趣味の違いとしか言えない。
- 元店主
- うーん、趣味の違い、と言われたら難しいなぁ。人生とは趣味を巡る闘いだ、って言葉もあるくらいだしねぇ、うーん。
- ヤマネ
- ボク、この映画は『ナック』だと思ったんです。で、それなら『ナック』の方が音楽もファッションも世界観もずうっとカッコイイ!『ナック』に較べたら全然ダメやん、この映画!と。
- 元店主
- 『ナック』?そんな風にはちっとも思わなかったな…。でも、そう思ったのなら、この映画、楽しめないかもね。求めてるものが違う。
- マツヤマ
- オレは『グローイングアップ』だと思ったよ。
- 元店主
- 『グローイングアップ』?…ああ、三人組だし、童貞だからですか。
- マツヤマ
- それなのに、主人公一人が目立って他の二人が弱かっただろ?あれがダメだと思ったんだよ。やっぱ三人それぞれが活躍しないと。
- 元店主
- いや、だからそんな見方をしたら、映画を楽しめないじゃないですか。そんな自分の求めるものを映画に押し付けたら…。
- マツヤマ
- そもそもだな、世の中には無数の映画があるんだよ。そしてそれら全てを観る必要はないし、ましてや全てを理解する必要もない。世の中のほとんどの映画は自分に関係がないんだよ。だから…自分が興味がない、自分に関係のない映画に対して、多大な時間とお金、労力を使って話し合うのは無駄だと思う訳だ。
- ヤマネ
- ガーン!でたー、この鼎談の存在基盤そのものを無効にする意見!
- 元店主
- いやー…マツヤマさんの言う事はもっともなんですけど…しかし、そうやって自分が興味のある、自分に関係ある映画ばかり観てたら自らの視野が狭まるので、それを拡げるために、敢えてこの強制起訴鼎談をやってる訳で…。
- マツヤマ
- それはオレも分かってるよ。ただな、それは比較的時間があってたくさんの映画を観る事が可能だった時の話でな。今の様に時間がなくて、自分が観たい映画も満足に見られない状況で、なんで全く興味のない映画を必死に見なけりゃならないんだ!バカらしいよ。もうオレは降りさせて貰うぞ。
- ヤマネ
- ええー、そんなひとり降りて二人になったら鼎談じゃないしー、もう、いっそのこと…止めますか!
- 元店主
- そうだね…、事ここに至っては仕方がない、か。長きに渡って続いたこのシリーズも、今回で打ち止めとしましょう。
- ヤマネ
- …あー、なんか、いざ終わるとなると寂しいですねー。マツヤマさんと約束した温泉もまだ行ってないしー。
- マツヤマ
- 確かにな。振り返ってみれば色んな事があって、思い出せば…ちょっと胸にくるものがあるな…。
- 三人
- ……………(想いにふける)
- ヤマネ
- マ、マツヤマさん!ケンタロウさん!会わなくなってもボクのこと忘れないでね!
- 元店主
- 大丈夫だよ、ヤマネくん!別れる前に強く結びつけば、たとえその後一生会わなくても結びつきは消えない。それぞれが次の段階に進めるんだ!
- マツヤマ
- そうか!それが「6」の象徴か!やっとこの映画の意味が分かったよ!
- 元店主
- わかってくれましたか、マツヤマさん!
- ヤマネ
- うわーん!
…(三人でがっしり抱きあう)
- ヤマネ
- ………はい。では次は2017年のベスト10鼎談をやりますから、明日、同じ時間にここに集まってください。
- マツヤマ
- お、おう。
- 元店主
- り、了解。
- ヤマネ
- はーい、みなさん、ではまたー、バイならー。
Comments
投稿者 uno : 2018年01月13日 10:44
すごく好きな作品です。
まずエル・ファニングがキュートで最高!(昨年は20センチュリー・ウーマンもよかった)
ロンドンのさえないパンクオタク三人が登場した地点で、連想したのがハイ・フィデリティ(映画はシカゴが舞台だけど、原作はロンドン)でした。この設定、完全に趣味の問題なんですが、すごくグッときます。ミニコミを作るとか、レゲエが流れるクラブで7インチを探すとか、ライブに行って浮きまくるとか。その甘酸っぱさがたまらない。
で、好きになった女の子が宇宙人て。。。なんやねんそれ!と最初は思ったんですが、エル・ファニングがあまりもハマっていて魅力的なんで、グイグイ引き込まれました。
宇宙人がチープさ全開で(小劇場の演劇か!)これも楽しかったなあ。エンの友人が宇宙人と一緒にナゾの踊りを踊る姿には爆笑しました。この唐突な宇宙人の登場に、「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」を思い出したり。ちょっとイタくて甘酸っぱい疾走感も!(あっちはオッサンだけど)
ザンが決意をして故郷の星に帰る場面がまた切なくて。。。そしてラストに子供達がエン(ジョン・レノンみたいになってて笑った)を訪ねてきたときの優しい顔に思わずホロリきました。
愛情あふれる映画で私は大好きです。
強制起訴、今回で打ち止めなんですね。私がコメントを始めたのが2012年5月(第17回)なので、結構ながいことやってきたんだなあ。あとベストテンを残しますが、皆さんおつかれさまでした!
投稿者 オーソン : 2018年01月15日 08:34
思いのほか面白かったです。
宇宙人たちのパーティシーンが良かったです。衣装のデザインとか踊りとか、(安っぽさ含めて)格好良かった。
あと、『ネオンデーモン』に続いて、エル・ファニングが素敵でした。
町並みや衣装、小道具などが興味深く、それを見るだけでも楽しめる映画だったかと。
映画後半の帰るか帰らないかのやりとりは少々退屈しましたが、このようなトリッキーな恋物語は嫌いじゃないです。
強制起訴お疲れ様でした。
私は2014年6月(43弾)からの参加だったようで、いつの間にか3年以上経っていたのかと衝撃をうけております(汗)
打ち止め(充電期間?)は残念ですが、お疲れ様でした。
あと、ベストテンよろしくです。
投稿者 Anonymous : 2018年01月15日 15:41
ウノピ、オーソン
オレは無理だったけど、それぞれ受け止め方が違うんだね。この手の映画(と言えるかどうかは?だけど)、オレは「ムーン・ウォーカーズ」の方が好きだな。
映画コメントへの返信はさておき、いままでコメント、どうもありがとう。自分の言葉で書くっていうのも、けっこうな労力だよね。
ヤマネ君もおつかれさまでした。
元店主、忙しいなか記事をまとめて下さってありがとうございます。私が幾度かわがまま、勝手な注文をつけたこともありましたが、受入れてくださりありがとうございます。
休日にも道場を開いたり商品を作ったりで、今年は興味のある映画もぜんぶ観られるかどうか分からないけど、新たに何かをやるときは、また関わって行きたいと、勝手に思っております。HPがある以上はやった方がいいでしょうね…などと無責任に思ったりして。ベスト10、のんびりやりましょう。
みなさん本年もよろしくお願いします。
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