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2016年08月21日(Sun)

シン・ゴジラ 強制起訴シリーズ

起訴者: マツヤマ

強制起訴シリーズ69弾

“ゴジラ”は日本の誇るポップアイコンである!・・・とはいえ、2004年の『ゴジラ FINAL WARS』を最後に、日本ではゴジラ映画が作られなくなる。その間に、レジェンダリーピクチャーズが制作したハリウッド版ゴジラ、通称『レジェゴジ』が2014年に公開され、世界的に大ヒット。批評的にも好評を博したため、このままゴジラは日本のものでなくなってしまうのか・・・と、危惧されていた所に現れたのが『シン・ゴジラ』だ!
監督はアニメ『新世紀 エヴァンゲリオン』で有名な庵野秀明と、平成『ガメラ』シリーズで有名な樋口真嗣。果たして『ゴジラ』は見事復活するのか?

ヤマネ
もう最高!最高最高最高!これ、超絶的な傑作でしょー。マッドマックス怒りのデスロード級に最高。ボク、庵野は『エヴァ』はそれほど好きではないし、実写映画に至っては『ラブ&ポップ』にせよ『キューティーハニー』にせよ全く面白くないし、実写撮る才能なんかないやんかー、とか思ってて、樋口は『ガメラ3』はめっちゃ好きだけど、『戦場のローレライ』あたりで「ん?」となって、以降どんどん下降線を辿って行き着いたのが去年の実写版『進撃の巨人』って、もう悲惨の極み。どん底。庵野も劇場版の『エヴァ』が行き詰まって、本人も鬱になるしで、そんなボロボロの二人が組んで作ったって、そもそもちゃんと映画になるんかーい、作品として完結するんかーい、と懸念しかなくて、全く期待もせず、仕方なくしぶしぶ観に行ったんだけど・・・最高すぎる!もう全力で二人に謝りたい。いや、感謝したい。素晴らしい『ゴジラ』を届けてくれて、ありがとー!
元店主
いや、ヤマネくん、えらい早口だね。まだ映画の影響が抜けとらんな・・・確かに私も予告編を観た時点では「あ、こらダメそう」と観る気が一気に失せたんだけど・・・素晴らしかった。これは間違いなく今年を代表する一本だよね。ところで、マツヤマさんはどうだったんですか?さっきから黙って下を向いている所をみると・・・あんまり良くなかったですか?
マツヤマ
・・・「良かった」とか「良くなかった」とか、そういう言葉ではちょっと軽いんだよ・・・オレは基本的にゴジラには何の興味もないし、期待も予断もなく観に行ったんだが・・・「凄い!」作品だったな。「すげー」作品。オレは、正にこういう映画が観たかったんだよ!
元店主
おおー、三人とも高評価って珍しいですね、強制起訴で。まぁ、三人とも期待値が低かったのも作用してるとは思いますが・・・。で、私は予告編を観た時に、これ『踊る大捜査線』みたいな作品じゃないか、と思ってゲンナリしたんですよ。つまり、映画っぽいテレビドラマ。ところが・・・こんなに映画らしい映画はない!正に、映画を観ている!という至福に打ち震えてしまいました。
ヤマネ
それは出演者全員に早口で喋らせ、カット割りもハイスピード、厖大なテロップも一瞬しか映さなくて何が書いてあるのか分からない、といった演出が効いてるんじゃないですか。それによって役者にいわゆる演技をさせないし、分かりやすくしようとする説明臭もない、という事ですから。
マツヤマ
全くだよ。日本のテレビドラマのあの大袈裟なオーバーアクションの演技とか、日本人にしては不自然なタメ口とか、気持ち悪いからな。まぁ、日本ではテレビドラマだけでなく、映画でもそんな演技が横行してるけどな。それらが清々しいほど一切なかった。それからオレが感心したのは、有名俳優も無名俳優も同じような存在感で撮ってるとこ。むろん出演シーンの多寡はあるけど、存在感はほぼ同等。最後のテロップも、メイン以外は五十音で出演者の名前が並んでたし。ひとりひとりは個性が薄くても、それぞれがそれぞれの役割をきっちりこなす事で、集団としての実をあげる・・・という、一昔前の日本人の良い所がきっちり描けてた。凄くいいと思ったよ。
元店主
日本人の良い所は、リーダーが居なくなっても、すぐにまた次のリーダーが出て来る所だ、とか言ってましたもんね。スーパーヒーローみたいなずば抜けた個人は居ないけど、その下の層が厚い、という事ですね。
ヤマネ
でもその分、1人だけオーバーアクションの演技&タメ口の石原さとみは浮いていて痛くなかったですか。これは、庵野や樋口が石原さとみ好きなため、残念な事になった訳ですがー。
マツヤマ
いや、オレは石原さとみは良かったと思うぞ。彼女は日系のアメリカ人な訳で、はっきり異物として描かれる必要があったんだ。それ故のオーバーアクション&タメ口な訳で、彼女の存在は、今の無自覚な日本の俳優たちに対する批評にもなってると思う。「タメ口で話してくれる?」みたいな自覚的なセリフもあったしな。彼女は大金星だと思ったな。
元店主
こういった役者を記号の様に扱う作品は、実写映画の方でも、それこそ庵野の大好きな岡本喜八や、外国ならウェス・アンダーソンとか居る訳ですが、とてもアニメ的と言えますよね。アニメは、登場人物を記号=キャラとして扱って、演出しますから。岡本喜八やウェス・アンダーソンにしても、アニメっぽいですからね。
マツヤマ
なるほどな。そういった所も、アニメ出身の監督故なのかもな。オレは始まりの雰囲気とか、テロップの字体とかが、『エヴァ』っぽいとは思ったけどな。あと、ゴジラもなんとなく使徒っぽいし。
ヤマネ
あれー?マツヤマさん、『エヴァ』観てるんですかー?
マツヤマ
お、おう。テレビ版だけだけどな。・・・な、なんだよ!だからと言って、オレがアニメ好きという事にはならないぞ。『エヴァ』や『まどマギ』くらいはみんな観てるだろ、き、教養として。
ヤマネ
ふーん。でも、確かにこれは優秀なアニメーターとしての庵野の実力が発揮された作品なんです。制作者たちのインタビューなんかを読むと、庵野の凄さが伝わってくる。画面全体を1ピクセルあげて!とか、凄く細かい指示が出るらしいし、この爆発シーンの3コマ目を抜いて!とかいう指示とかもあるそうなんです。つまり、コマ単位で映像を観てるんですよ!さすが、一コマづつ描くアニメ出身なだけありますよねー。
元店主
ゴジラ自体もカッコ良かったよねー。初めてゴジラが口から火を吹いて、その火が地面を這ってあたりを焼き尽くす所なんて、カッコ良過ぎて震えたわ。その後、全身から光線をあたりにまき散らすとことか・・・
ヤマネ
『巨神兵東京に現わる』ですね!あの、ゴジラがどんどん進化して大きくなるじゃないですか。あれもよく考えられていて、小さい時は、平屋や2階建ての家が潰れる恐怖、逃げ惑う人間の恐怖がよく描けてるし、大きくなったら、ビルが破壊される恐怖。都市そのものが破壊される、世界の破滅的な恐怖が描かれる。そこらのビジュアルセンスは最高だー!
マツヤマ
オレも幼少期(?)のゴジラは、なんか血みたいなのをボロボロ零していて、気持ち悪いことこの上なく、うわー、とか思ったよ。巨大化したゴジラも、不気味感満点で、いい。なんだかよく分からない存在として、不気味であり、崇高でもあるものとして描けてたと思う。あんまり観た事のないものを見せてもらった、という満足感があったな。
ヤマネ
自衛隊も良かったっすね。なんか凄いリアルだし。市民を守る事を最優先しつつ、少しづつ強い武器に切り替えていく所とか、弾を打つのに、いちいち許可をとる所とか。素直に自衛隊を応援したくなりますよね。
元店主
私は全弾命中してるのが凄いと思った。いや、ゴジラなんて素早く動けないんだから、全弾命中するのは、考えてみれば当たり前なんだけど・・・でも今までの映画って、けっこう弾外してたよね。それが、全部の武器が命中。でも、びくともしないって所が・・・いい。
マツヤマ
ヤシオリ作戦は良かったよな。
元店主
無人在来線爆弾!あれは爆笑でした。素晴らし過ぎる。
ヤマネ
『エヴァ』のヤシマ作戦のパロディなんでしょうけど、面白いですよね。あのゴジラの口の中に凍結液を注ぎ込むとことか、歯の治療をしてるみたいで可愛かったですねー。
元店主
そんな感じで、むろんゴジラとの闘いシーンはかっこいいんですが、この作品はなにより会議の映画でしたよね。会議シーンがとにかくいい。
ヤマネ
ですよねー。パソコンをバババッと並べていくだけでビジュアル的にもかっこいいし、緊迫した中で、様々な障害を撥ね除け、細かい懸案を処理しながら、大きな組織を動かしていく・・・その様が凄く面白いんですよね。むしろ、会議シーンこそが、この映画の肝かも。
マツヤマ
オレは政治家の描き方とかも興味深かったよ。特に臨時政府の首相な。あのノラリクラリとして、一見無能そうに見えながら、着実に実をあげる・・・という、小泉以前の古き良き自民党政治家を思い出したよ。映画の中で、日本はあくまでアメリカの属国であり、日本にとってアメリカは“やっかいな存在”である、として描かれているのもリアルでいいと思った。なにか大きな事件が起こった時に、その事件に対処するだけでなく、日本はそれに口を出してくるアメリカにどう対処するのか、というのも同時に処理しなければならない。その大変さが、うまく描かれていた。そんな邦画、今までなかったんじゃない?
ヤマネ
あのゴジラが最後に海に帰らずに、東京のど真ん中に固まったままでいる、というオチも斬新でしたね。
マツヤマ
あれは明らかに原発の比喩だよな。我々はゴジラ(原発)と共存していかなければならない・・・。集団疎開の様子や、国会前のデモ、など311を彷彿とさせるシーンも多かったし、これは日本が何らかの大災害に見舞われた時に、どう政府は対応すべきなのか、をシュミレートした作品ともいえる。そういった意味でも、これは優れた作品だと思う。
ヤマネ
そうですよねー。観ていて力が沸いてきますもんねー。みんなそれぞれ優秀で、かっこいい!本来、エンタメはこうでなくっちゃ!
マツヤマ
音楽の使い方も良かったな。従来の『ゴジラ』シリーズや『エヴァ』の音楽など、既存の音楽を使うセンスが抜群。それに、やたらセリフが多くてみんな喋ってばかり・・・という事で、オレはタランティーノを思い浮かべたよ。
元店主
同じオタクとして、感性が似てるんでしょうね。・・・にしても、これで庵野がふっきれて、調子が上向きになって、早く劇場版『エヴァ』を完結させたらいいと思うんですが・・・。
ヤマネ
いやー、もう『エヴァ』はいいでしょう。庵野にはこのまま実写映画を撮り続けてもらって、次は『ウルトラマン』あたりを撮ってほしいですよ!
元店主
ふーむ、私はまだ庵野にはアニメを作って欲しいんだけどな。
マツヤマ
まぁまぁ、もうアニメの話は終わりにして・・・で、9月の課題映画は何なんだよ、ヤマネくん。
ヤマネ
あ、えーと『ある天文学者の恋文』にします!ほんとはマツヤマさんに是非観て貰いたいから、アニメ『聲の形』にしたかったんですけど・・・お情けで、アニメは止めておきますよ!
マツヤマ
なにが“お情け”だよ!
元店主
まぁまぁ、では9月の課題映画は『聲の形』ということで、みなさんまた来・・・
マツヤマ
『ある天文学者の恋文』だろうが!
元店主
ちっ!
マツヤマ
“ちっ!”っじゃねーよ!油断も隙もあったもんじゃねーな。
ヤマネ
まぁまぁ、ではみなさん、また来月!

Comments

投稿者 オーソン : 2016年08月27日 01:14

面白かったんですが…。
ゴジラが東京を破壊しまくる所までは本当に凄いと思いました。感傷的なシーンはなく、官僚・政府関係者のやりとりも突き放した感じで描いていて格好よかったです。ここまでは傑作と言っても過言ではないと思いました。最初の気持ち悪いゴジラもいいデザインでしたし、立ち上がって空にむかって吼えるシーンの禍々しさもすごく印象に残るし、東京の破壊は本当に怖くて美しかったですし…。
でも、僕はこれ以降の展開に正直乗れなかったです。ここから映画のトーンが変わって、登場人物たちが前面に出て冷却液を集める話と核兵器を落とされないように交渉する話に移りますが、これらのやりとりがとにかく冗長に感じてしまいました。前半の話がゴジラという未知の脅威に対する対応に焦点が当たっていたのに、後半は核兵器を使用される前にゴジラを凍らせようという話になっていますよね?でも、時間内に凍結できるか、という点で物語を盛り上げるような作り方にはなっていないと思います。それよりも、破壊からの再生(→各人の頑張っている姿)・諸外国との対等なやりとり、といった点に比重を置いている。このあたりにさっぱりのれなかったです。
ここでの外国とのやりとりの見せ方はあまりスマートじゃなかったかと。特に、外国人の口から日本もなかなかやるな的な事を言わせる演出はちょっと苦手でした(何だか恥ずかしくなります)。
石原さとみは…どうだろうかと…。

作戦開始後は楽しかったですね。無人在来線爆弾は本当に笑いました。そして、凄い威力w
ポンプ車(?)で凍結液をゴジラの口に入れるまでの一連のシーンはもっと見たかったですね。一度ゴジラに車両が破壊されて、ゴジラが再度倒れた時、ちょうどの所にポンプ車があるようにしか見えなかったので、もっと悪戦苦闘している姿を描いてほしかったです。

色々書きましたが、楽しんだことは間違いないです。とにかく、観終わった後もやもやするものが残る作品でした。まだ消化不良です。

次回は『聲の形』ですね!舞台となっている都市の映画館で観てきます!

投稿者 uno : 2016年08月27日 16:51

率直な感想は胸が熱くなった!に尽きます。
疾走感溢れる展開であっという間にエンディング。
観客である私も、まるで破壊された東京に残された一人であるかのように感じました。

ゴジラ自体も痺れる格好良さだったのですが、ゴジラを含めて街を俯瞰的に見た時の精巧なジオラマ感がめちゃくちゃ格好良くて、まるで昔の怪獣映画を見ているような神々しさがあった。ゴジラの視点だと人間の世界はジオラマのように見えている、それを観客に感じさせることで、ゴジラに対する畏怖の念を強めたのではないか、と考えています。特に高層ビル群でゴジラに対しミサイルを発射するシーンや、ヤシオリ作戦で電車が吹っ飛ぶ様子に、そのことを強く感じました。

そして、胸が熱くなったのは、知恵を絞れば問題は解決するという熱気が作品からビンビン伝わってきたところです。「ヤシオリ作戦」は、もう最高に痛快!日本もやれば出来る!なんて普段は思わないのに、スゲーって興奮しました。

あと、マツヤマさんも言われてますが、ゴジラが原発の比喩になってましたね。起きてしまった福島の原発事故に対する批判ではなく、この問題を何としても解決しなければならないし、解決出来るはず!という庵野監督の強い思いが込められていると勝手に想像しています。そしてゴジラはいつ目覚めるか分からない。。。

グッときたのは、尾頭が提唱したゴジラの体内で核分裂が起きているって事が正しいと分かった時に、安田が言う「ごめんなさい」。熱いわー。科学者はこうでないと!

最後に、石原さとみの演技は良いと思いました。将来の大統領候補でバイリンガル、しかも美女ときてるんだから、これくらいアクが強くないとな、とは思っていたのですが、漠然とした感想しか持っていなかったんですよね。そこで、鼎談で話されていた異物としての記号化という考えを読み、ポンと膝を叩きました。なるほど。見てるうちにクセになるのも不思議なんですよねえ(笑)

投稿者 マツヤマ : 2016年08月30日 11:46

オーソンはとにかく怪獣映画としてのゴジラ、またはゴジラと人間の闘いを期待していたわけだね。オレはゴジラにはあまり興味がなかったから、後半も存分に楽しめた。後半ではゴジラだけではなく米国の核も脅威になる。日頃は北の核が脅威だとか言ってても、結局のところ同盟国の核がいちばんの脅威になっているというところが現実的で面白く、米国を怒らせずに如何に核攻撃を避けることが出来るか、迫り来る期限に向けて政府は他国への根回しと、大中小企業の協力で冷却剤の間に合わせに四苦八苦するところが面白かったなぁ。確かに後半で冗長と思えるところはあったが、ヤシオリを盛り上げる助走になってるんじゃないかな。
ご都合主義的にちょうどのところにポンプ車があったということだけど、まぁあのシーンはいわゆるマンガのような感じだったんで気にならなかったな、それを言うなら、ちょうどのところに線路があったりとか、石原さとみの祖母が広島の被曝者だったとか、ちょっとは「ん?」と思ったけど、後々気になるほどではなかった。
ここからウノピのコメントにも被ってくるが、ヤシオリのシーンは「マンガのような〜」とは言ったけど、テンポが良くてホント最高に痛快だったね。あれは子供がプラレールとかでマネしそうだな。
ゴジラは原発の比喩になってると思うけど、米国の存在とも入れ子になってると思うね。どんなに脅威でも地球上にある限り共存していくしかないと。
カヨコ・アン・パタースン(石原さとみ)に関しては、国民性の違いが分かりやすいという点でよかったのと、こう言うと語弊があると思うけど、女性でアジア系米国人という設定にすることによって、矢口(長谷川)と対等のバランスがとれている。現実的には国内女優のヒロインが必要だったんだろうけどね。

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