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2015年11月10日(Tue)

才能/Free!/手 etc

10月27日〜11月3日

才能

先日ひょんな事からDVDで「桐島、部活やめるってよ」を観ました。これは数年前に評判になってゐた邦画です。いはゆる学園モノなのですが、映画研究部が出て来て、宇宙人のゾンビが学園を襲ふ!といった内容の映画を撮ってゐたりして、それを観ながらババさん映画の事を思ひ出したり、私が学生時代に学祭で観た映研の作品(エイリアン侵略もの)を思ひ出したり、ハルヒの撮った映画を思ひ出したりして、高校生といふものは宇宙人やゾンビの映画を撮りたがるものなんだなぁ、などと感慨に耽ったりして、なかなかに面白かったのですが、そんな事とは関係なく、ちょっと思った事があったので書いてみます。

この題名に出て来る桐島といふのは、容姿端麗・成績優秀・スポーツ万能で学校のバレー部を全国大会にまで導いたキャプテン、といった学校一のスーパースターといふ人物、らしい。「らしい」といふのは、この桐島は(ちゃんとした形では)映画に出て来ないからで、彼は周りの人々の話題として扱はれるだけだからです。その桐島が、全国大会の直前にバレー部を突然辞め、しかも以後は学校にも来ず、周りの友人たちとの連絡も絶つ、といった行動をとった事によって、周りの人々の間に激震が走る・・・といふのが映画の概要。
さて、この映画は様々な人物の視点で物語がすすむ様になってゐるのですが、その中でも中心となってゐる人物が二人居ると思はれます。それは桐島の親友であるヒロキと、映研の部長であるマエダの二人です。
ヒロキは、映画には直接出て来ない桐島の分身の様な存在で、容姿端麗・スポーツ万能のモテ男子。ただ、桐島と違ってクラブ活動はしてゐません。どうやら野球部に属してゐたらしいのですが、今は行ってをらず、野球部の部長から「お前が居ないと勝てないから、試合だけでも出てくれないか」と懇願されてゐる存在です。彼は、容姿にも恵まれ、何でもできちゃうもんだから、「できる奴はできる、できない奴はできない。それだけの事だろ(つまり、できない奴はいくら努力したって無駄だろ)」と、クールな態度を維持してゐます。そんな彼が、桐島の退部に揺すぶられた末、映画のラストで映研のマエダと以下の様な会話を交はします。「将来は映画監督?」「いや、それはない。映画監督になるのは多分ムリ」「え?ならなんでこんなこと(自主映画を撮ること)やってんの?」「それは・・・自分の好きな映画と一体になれる感じがするから」「!」・・・そこで絶句してしまったヒロキの目から涙が零れるのであった。
なぜヒロキはそこで泣いたのでせうか。普通に考へれば、力はあるのに好きなものや、やりたいものがなく、漫然と日々を過ごしてゐる自分の空虚さに気がついたから・・・となるでせう。確かに、それは間違ひではないかもしれない。でも、もうちょっと事情は複雑だと思はれます。なぜなら、普段のヒロキであれば、やっても無駄なのに好きだからといふ理由でやり続けるなんてバカぢゃないの?と、マエダの答へに思ったはずだからです。
ここには桐島の退部の影響があります。ヒロキには、人は努力したらそれに値する報酬がなければ損だ・故に人は自分の得意なこと、才能に恵まれてゐる事をやるべきだ、といふ考へがあると思はれます。だから、マエダの様に周りから評価されてゐる訳でもなく、自ら(監督になる)才能はないと自覚しながらも、映画を撮らうとするのは愚かな行為にしか思へないはずなのです。が、その考へが、桐島の退部によって揺すぶられた。
桐島は、バレーの才能があり、その事によって皆の尊敬も受けてゐた。それなのに、退部した。この事実が、ヒロキの考へ・価値観をひっくり返してしまったのです。
このヒロキの考へ・価値観は、実は結構みんな共有してゐるものだと思はれます。例へば、適材適所、といふ考へ方。人はみな自分の能力が最大限に活かせる場所で働いた方がいい、さうした方が本人のためにもみんなのためにもいい、といふ考へ方。しかし、私は昔から、この手の考へ方に違和感を感じ続けてきたんですよねー。
そんな、料理の才能がない奴が料理人やったり、医者の才能がない奴が医者やったりする社会より、料理の才能がある奴が料理を作り、医者の才能がある奴が患者を診る社会の方がいいんぢゃないの?といふ反論はあるでせう。まぁ、分かります。でも、私としては、みんながみんな自分の得意な事をやってる社会って、なーんか気持ち悪いんですよ。人間が実用品になってしまってゐる様な気がする。そんなに効率が大切か?とか思ってしまふ。才能はないけれど、それが好き!といった人間が、なんか変なものを産み出してしまってゐる社会の方が面白いと思ふんですね。
むろん、好きである、といふのは大前提です。好きでもないのに、向いてない事をやらされるのは地獄ですから。それでも・・・たとへ好きな事でも、向いてない事をやり続けるのも辛いよ、といふ反論もあると思ひます。まぁ、現実はその通りな事も多いでせう。でも、それはまた別の問題といふか、自分や周りが“勝ち負け”や“効率”といふ事に囚はれてしまってゐるからぢゃないかなぁ、と思ふのです。さういった事から自由になるのは難しいとは思ひますが・・・。
そこで、アニメ「けいおん!」です。なぜ私があんなにもあのアニメを「いい!」と思ったのかといふと、それはHTTのメンバー(けいおん部の女の子たち)が、上記の囚はれから自由だからだと思ふのです。彼女たちは音楽の才能があるでせうか。否。演奏も下手だし、友人のバンドの様にライブハウスに出て上を目指す、なんて事もない。あずにゃん(梓)あたりになると、多少は囚はれてゐるのですが、基本、彼女らは「他のバンドより上を!」とか思はないし、自分たちに音楽の才能があるかないかなんて考へない。ただそれが好きだからやる、といふ態度です。彼女たちは凄く自由で純粋です。音楽の神様に選ばれなかったかもしれないけれど、自分たちが音楽を選んだ、といふこと。この主体性!
これに対して、桐島は、もしかしたらちっともバレーなんか好きでなかったかもしれない。ただ自分にはバレーの才能があって、やったら強くてみんなに尊敬されたから、なんとなく続けてゐただけ、といふ可能性があります。そこには主体性がない。彼はバレーの神様の道具に過ぎなかった。その事に気がついたから、彼は部活をやめたのではないでせうか。
同じ“部活”でも、「けいおん!」と「桐島」ではまるで正反対。むろん、「けいおん!」の在り方の方がずっと正しい、と私は強く信じてゐますよ。

Free!

アニメ「Free!」全12話を観了しました。実は12月5日から「ハイ★スピード!」といふ劇場アニメがやる予定でして・・・京アニの作品だし、是非観たいと思ひ、それでその元であるテレビアニメの「Free!」を観たといふ次第です。完全新作とはいへ、キャラとかに馴染みがあった方が楽しめるだらうからねぇ。
でも、これ高校男子水泳部の話なのです。えっと、腐女子向け?なんか美青年系の顔が、やたら筋肉のついた身体に乗ってるんだけど・・・楽しめるかなぁ・・・と、かなり不安な気持ちで鑑賞に臨んだのですが、なんと!これが傑作でした。メッチャおもろいやん!!

まづ、今まで私が観て来た美少女アニメをそのまま青年に移し替へただけ、てな表現方法が面白い。登場人物のひとりが、小首を傾げて「フフ」と笑ふシーンとか、なにかあると「はっ」として瞳孔が開いて頬が赤くなるところとか、それ女の子の表現だろ!とか思って、かなり可笑しい。
テーマも「勝敗より大事なことがある」って感じのものなんだけど、一応競泳ものなので、どうするのかなぁと思ってゐたら、見事な着地。ストーリーテリングも、軽快なギャグを交へつつタイトにまとまってゐて、一気に見せます。
そして、なにより、なんと最終回にて魔法が発動!いや、魔法て・・・と思はれるかもしれませんが、わかる人にはわかる魔法サインが現れ、その後、次々と登場人物たちがヴィジョン(見たことのない風景)を幻視!といふ神秘体験をする・・・といった展開は圧巻。私は、さういふ作品だったのか・・・と茫然として感動しました。

「ハイ★スピード」の公開が猛烈に楽しみです!

ウメドン来店。実はウメドンは手が小さいのです。この間もカウンターの隣に座った女性から「手、小さいですねー、私より小さい」と言はれ、本人も満更でもなささうでした。
しかし!私はその時、ある事が頭に浮かんでゐたのです。それはアニメ「Free!」の公式ガイドブックにあった監督の内海紘子さんの「男性の大きくて骨張ってる手はカッコいい!」といふセリフで、アニメでは男性の手の大きさを強調する様にしてゐた、といった内容の話。どーも、大きな手は男性的魅力に資するものらしいんですね。うーん、と、いふ事は、小さな手のウメドンって・・・

「別にいいのよ。ウメドンは手が小さくても」と、トモコ。

さうなの?

「だって代はりに顔が大きいし」

いや、それ、あんまりフォローになってない様な・・・

「そんなことないわよ。たとへ男性的魅力には欠けても、キャラクター的な魅力を訴へればいいと言ってるわけ。」

なーるほど。アリア社長的な?

「さうさう。アリア社長とか凄く可愛いぢゃない。ウメドン、ちょっとアリア社長の物真似してみて」

「え?・・・プ、プイニャ〜ン」

・・・・・・。

「・・・・・・やっぱ却下。ウメドン、喋らなくていいから。そのままで居て」

その日以来、ウメドンはオパールカウンター上の置物となり、人々に愛でられる様になったとさ。

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