京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

Home > 元店主の日記 >

サブメニュー

検索


月別の過去記事


2013年02月04日(Mon)

オイシンの結婚式 オイシン

先日、オイシンの結婚式に行ってきました。

オイシンはかつてのオパールのヴォランティアード・スレイブリー・スタッフであり、オパール道場門下生であり、オパール3バカトリオのメンバーでした。
オパールに来た当初のオイシンは、自称WEBデザイナーであり、その無知・無教養・無邪気において他を圧倒してゐて、といふか完全に別世界の人間で、その言動の異様さはオパール周りの人々の間に激しい動揺を引き起こし、最初は敬遠されたり嘲笑されたりしてゐました。が、人柄が良かったせゐか、そのうちに段々と人気が出て来て、遂にはオパールのネットアイドルオイシン!として京都の一部にその名を轟かせる様になったのです。

そんなオイシンでしたが、ある夏の夜、みんなでバーベキューをし、川辺で花火でもしようとなった時に、誰やらの先導で(あ、私だったかな?)、ロケット花火でオイシンを撃つ!といふ仕儀になったのです。「やめてくださーい!」と叫びながら逃げ惑ふオイシンを、ロケット花火を連射しながら追ひつめる。真夏の夜のオイシン狩り。我々の猛攻に耐へかねて、たうたう、オイシンは川の中にザブーン!と落っこちてしまひました。
そんな次第を、我々は腹を抱へて大笑ひ!・・・が、いつまで経ってもオイシンが川から出て来ないので、些か心配になってきました。溺れる様な深さのある川ではないはずだけど・・・。私は川の真ん中あたりに向かって「オイシーン、大丈夫かー」と呼びかけてみました。すると・・・・・・「ユリーカ!」と絶叫しながら、オイシンが川の中から飛び出してきたのです!!
「トポロジー!シュルレアリスム!シニフィアン!エピステーメ!モナド!エロス!・・・・・」と、脈絡もなく横文字言葉を呟きながら、目をギラギラさせてそこらをウロウロするオイシン。我々は「狂ったか・・・」と思ったのですが、実はさうではなかったのです。オイシンはここで、オパールのチャーリーとなったのです。

それまでのオイシンは、いくら人気者とはいへ、それは結局そのあまりの無知ぶり、阿呆ぶりをみんなで楽しむ、といふものでした。それが、それ以降は、その道化ぶりをもってむしろ我々の傲慢、不遜、無知を撃つ!といふ風になったのです。
オイシンの一見ただの阿呆にしかみえない言動に、我々は笑はされながらも、最後にはやりこめられ、考へ込まされる事が増えてきました。またオイシンは古代バビロニア語やシュメール語、トンパ文字や神代文字などを次々と習得して自由に読み書きできる様になり、80桁の四則演算を暗算で行ひ、素数を何百個も数えることができ、フェルマーの最終定理を証明してしまったりしました。
そして遂に、「ボクはデザイナーには向かないんだー。だから実家に帰って家業を継ぐ」と宣言して、故郷に帰っていったのです。

それから何年か経ちました。最初の頃は京都に来るたびにちょくちょくオパールに顔をみせてゐたオイシンですが、そのうち疎遠になり、ここ数年はほとんど顔をみる事もなくなってゐました。それが、半年ほど前からまた頻繁にオパールに来る様になったのです。
そこでオイシンと喋る機会も増えたのですが・・・あ、あれ?オイシンどうしたの?もしかして・・・元に戻った?
私は試しにトンパ文字を使って禅問答を仕掛けてみました。が、「は?なんですかこれ?絵文字?」とか言ふ始末。う〜む。

そんなこんなでオイシンの結婚式です。私とトモコとマツヤマさんは、全くの異世界としかいひ様がないその場所で、茫然としながら確認しあったのです。やはりオイシンはチャーリーだった。完全に元に戻ったな、と。

「アルジャーノンに花束を」でのチャーリーは、知性が卓越していくにつれ、周りの人たちと距離ができ、壮絶な孤独感に苦しめられる事になります。もしかしてオイシンも、オパールでその様な孤独感に苦しめられてゐたのかもしれません。その頃のオイシンから見たらただのバカにしか見えなかったであらう我々には想像もつきませんでしたが。

いま現在のオイシンは、周りの人々の“絆”に支へられ、幸せさうでした(多少、顔は引き攣ってゐましたが・・・ま、緊張のせゐでせう)。
それならそれでいいぢゃないか、と、我々は結婚式会場を後にしました。
オイシン、いつまでも幸せでな。
我々は名古屋駅上のマリオットのラウンジでウイスキーを飲みながら、心の中でオイシンに花束を捧げたのでした。

Comments

コメントしてください





※迷惑コメント防止のため、日本語全角の句読点(、。)、ひらがなを加えてください。お手数をおかけします。


※投稿ボタンの二度押しにご注意ください(少し、時間がかかります)。



ページトップ