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2016年11月01日(Tue)

少女 強制起訴シリーズ

起訴者: 元店主

強制起訴シリーズ71弾

アツコ(山本美月)は剣道日本一の腕前を持つが故に、推薦で名門女子高校に入った女の子。しかし、大事な試合で怪我をして負けたため、「推薦で入ったくせに信じらんなーい」とクラスメイトから執拗なイジメを受け、心を閉ざしてしまっている。そのアツコの親友のユキ(本田翼)は、授業中も授業無視して原稿用紙に小説を書き続ける世を拗ねた感のある少女。が、ある時、その彼女の渾身の出来の原稿が盗まれてしまった。一体誰が?そこに、シオリという少女が転校してきて、アツコとユキの仲間になろうとする。彼女は語る。「わたし、見ちゃったんだ、親友の死体・・・」
原作はイヤミスの女王と呼ばれる人気作家・湊かなえ。監督は『しあわせのパン』『繕い断つ人』の三島有紀子。果たして少女映画の系譜に新たな一章を加えることができるか?

ヤマネ
ええっと、みなさん、これどうでした?ボクはちょっとのれなかったんですけど・・・
マツヤマ
まぁ、良い所もあったけど、全体で言えばイマイチだったな。
元店主
私は・・・ダメでした。なんか、素人の撮った作品か?と、戸惑いを覚えたほどで・・・。
ヤマネ
原作の問題なのかどうかは読んでないから分からないですけど・・・とにかく脚本がダメでしたね。なんでもかんでも伏線を張って、それを全て活かそうとする、というゲーム的脚本。
マツヤマ
正にな。オレはそれを“パズル的脚本”と呼んでるんだが、最初に一枚の絵の様な分かりやすい図式を作って、それを解体して話を作り、それがまたぴちっと嵌る様に戻していくだけ・・・というパズルの様な脚本。そんなの見ても、意外でもなんでもないし、面白くもない。実は最近の白石一文の小説もそんなパズル的なものが多くて、辟易していた所なんだよな。それがまたこんな・・・流行ってるのか?こんなの。
元店主
私もうんざりです。実はこことここは繋がっていた、とか、この人とこの人は親子だった、とか、この人の被害者はこの人だったとか・・、そんなの一つや二つならいいですけど、こんだけ連発するとですね・・・きみらの世界、どんだけ狭いねん!と。スモールワールドどころの話じゃない!
マツヤマ
それなのに、「世界は広い~!」って叫ぶからな。ちっとも広くないじゃないか!
元店主
私は、こういった図式的で閉じた世界を描くなら、アニメや演劇だと割と上手くいくと思うんですね。アニメや演劇は、図式化・象徴化が本質ですから。でも実写でやるとなると・・・やはり一工夫いる。実はこの監督もそこらは分かっているのか、冒頭と最後に演劇風のシークエンスをいれたり、要所要所で水に沈む・・・とか象徴的なシーンを入れたりしてはいるんです。でも・・・それがちっとも上手く機能してない。
ヤマネ
中途半端なんですね、きっと。いっそラースフォントリアの『ドッグヴィル』みたいにすれば良かったかも・・・。でもこの監督、きっと耽美的な実写映像も撮りたかったんですよ。ところどころに、いかにも耽美な映像があったじゃないですか。本田翼が小説を書き上げて、満足げに微笑むシーンとか。そのどっちつかず感が、全体の焦点をぼやけさせてますよね。
マツヤマ
ユキが子供の頃にお婆さんに折檻されるシーンとか、昔のATGみたいでオレは好きだったけど、でもあそこも全体から浮いてるよな。
ヤマネ
結局、創作において一番難しいのは引き算の部分なんですよね。あれもやりたい、これもやりたい・・・と想いは溢れるんですが、そこからどんだけ引き算できるか。この作品はそれができてなくて、過剰で残念な感じが溢れています。そういえば、イーストウッドの『ハドソン川の奇跡』は凄かったですね!あの大胆な引き算ぶり。
元店主
イーストウッドは凄いよ。『キネ旬』で小林信彦と芝山幹郎も言ってたけど、パニック映画的な事を一切やってないのが気持ちいい、と。飛行機が不時着する映画だと、ついパニック映画的な要素をいれたくなっちゃうよね。それを一切いれないって、簡単なことみたいだけど、なかなか難しいんだよねぇ。
マツヤマ
そもそもさ、アツコが酷いイジメにあってひとりで闇の中でもがいている、という設定みたいだけど、全然そんな風にみえないのも問題だと思ったぞ。イジメのシーンは確かにあったけど、本人は普段はケロッとしてるし、むしろ世渡り上手的な感じさえする。だからなのか、クライマックスの二人で「世界は広い~!」と叫びながら海岸線を走るシーンとか、全く開放感がないんだよ。世界の広さもちっとも感じられない。
元店主
あそこは酷かったですねぇ・・・。そもそもスローモーションってのがダサいし。ってか、二人とも走る姿が美しくない!それをスローで見せられるこっちの身にもなってほしい。走るシーンって、映画では重要なシーンなんだから、もっと頑張らないと。つーか、二人ともあまりに演技が下手じゃなかったですか?私はちょっと辛かったんですけど。
マツヤマ
そうか?オレはそれほど気にならなかったが。むろん、上手いとはお世辞にも言えないけど、気になるほど下手ではなかったと思うが。今はみんなあの程度じゃないの。むしろ、本田翼は良かったよ。あの若さが全く感じられない所とか、いいと思ったよ。
ヤマネ
あ、ボクも本田翼は良かったです!いい感じですよねー。
元店主
むむむ、そうですか・・・。私もキャラ的にはユキは好きなタイプなんですが、それを本田翼がうまくやれてるとは思えなくて。なんか大袈裟すぎる様な・・・。でも、まぁ、いいです。女の子の趣味を云々するとややこしいですから。・・・じゃ、気分を変えて、良かった部分とかありますか?
マツヤマ
オレ的にはセリフがタイトなのが良かったかな。高校生にとっての両親の存在が限りなく小さいのも、なかなか。あとは白川和子のボケっぷりのシャープさも楽しめた。それと・・・やっぱ本田翼かな。
ヤマネ
ボクはですねー、ユキの書いた小説があるじゃないですか。あれって本当はアツコのために書いたんだけど、それが廻り回って、全然関係ない人を救ってる。稲垣吾郎ですけど。そういうのって、好きなんで、あのくだりは良かったです。あとは・・・やっぱ本田翼ですかね!
元店主
二人とも、本田翼を推しますね・・・。私は、ユキが原稿用紙を鉛筆で埋めていくシーンが良かったですね。原稿用紙の升目の中に、凄い勢いで字が書かれていく・・・って、最近ではなかなか見る事のできないシーンなんで、あれは良かったです。あれはどこかの新人賞に出すためではなく、アツコへの一種のラブレターとして書かれた訳で、紙に自筆で書かれる必然性もある訳ですし。あとは・・・エンディングの歌ですかね。
マツヤマ
おお!あれ、カッコ良かったよな。昭和のエレキ歌謡みたいでさ。
ヤマネ
では、エンディングの歌の話まで来たことですし、今回はこんなもんで・・・で、次回の課題映画は何ですか、マツヤマさん?
マツヤマ
おう、オレか。次回はだなぁ・・・『溺れるナイフ』にするよ。
ヤマネ
げげ!またしても邦画。しかも、少女マンガ原作ものですかー・・・うーん、『ジェイソン・ボーン』もまだ観てないのに・・・頑張るぞー!では、またー。

Comments

投稿者 オーソン : 2016年11月04日 12:10

最初の方は、Vシネっぽく、この安っぽさを楽しめるかなと思ってましたが。おばあちゃんの折檻シーン、文化祭(?)の変な踊り、とか。
でも、いじめシーンの加害者が写真をとりながら嘲るシーンや足は実はちゃんと治ってるよシーン(『ユージュアルサスペクツ』?)からはいくらなんでも微妙なのではという印象を。
そして、後半の人間関係つながりましたーみたいなのには辟易しました。必然性を全く感じられなかった。
ラストの2人が叫んでるシーンはこちらが恥ずかしくなる程に駄目駄目なシーンじゃないかと。

ただ、掃除機でもちを取るシーンは、、まるでクライマックスのような演出で思わず笑ってしまいました。

あと、本田翼の過剰に演劇的な喋り方はこれでいいのかとずっと気になりながら観てました。

投稿者 uno : 2016年11月06日 22:43

正直、かなりきつかったです。
本田翼の声を張った演技が浮きまくってて、受け入れられない。。。
そこがユキの個性なんでしょうが、私はダメでした。
あの演技を活かすのならユキの実家、特に祖母の気持ち悪さや、食事の時の異様な雰囲気を突き通して欲しかったなあ。ユキが煮魚の目に箸を突き刺す場面とか結構好きだし。
あとユキとアツコの関係もなあ。親友なのは分かるけど、なんかぼんやりとしてて伝わって来なかった。
この作品が表現したかったのは何なのか掴めない。
良かった点は、うーん。。。
転校生のシオリは良かった。出てきた瞬間に、あーこいつ嫌な奴なんだろうなあって。不気味な雰囲気を持ってて。ただ、スモールワールドの繋ぎ役みたいな使われ方をしていて勿体無い。あの気持ち悪さがもうちょっと活かされてれば。。。残念。

投稿者 元店主 : 2016年11月06日 23:47

お、二人とも本田翼にうんざりしてる。マツヤマさんとヤマネくんの本田翼推しに対して、これで一気に逆転だ!・・・と言いたい所だけど、確かに私も本田翼がそこまでいいとは思わなかったものの、この映画の中で誰かひとり、と言われたら、本田翼を推すよ。いや、最も印象深かったでしょう。特に前半。あの変人ぶりで最後まで行けば、もうちょっと面白いものになったかも。なんか、子供たちと仲良くなってから、普通になっちゃったからなぁ・・・。
私がこの映画の嫌なところは、使われてるイメージが凡庸で俗悪で紋切り型な所。女子高生のイジメにしても、変態のおじさんにしても、偽善的な人々にしても、コンプレックスの塊の教師にしても・・・あまりに陳腐に紋切り型で全くリアリティがない。なんか、テレビのワイドショーみたい。わたし、そういったテレビ的なもの、嫌いなんだよね。

それにしても、うのぴがシオリ推しだったとは・・・。

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