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2012年11月02日(Fri)

アウトレイジ ビヨンド []

Text by 元店主

北野武ファンとしては、武の映画がヒットするというのはとても嬉しい。故に前作の「アウトレイジ」のヒットは嬉しかった。久々のヒットでしょう。もう、武の映画がシネコンで観られる事なんてないんじゃないか、と危惧してたもんで。
とはいえ、映画の出来に関していえば、個人的には「まーまー」。タイトにまとまって良い作品だと思うけれど、私が武の映画に求めてるサムシングは希薄だった。
それでもね、そろそろヒット作ださないとヤバいんじゃないの、という気持ちはあったから、基本は「アウトレイジ」は支持。ちゃんとヒットさせたんだから。これはこれで意味がある。椎名桔平、カッコ良かったし。・・・が、前作が売れたから、続編、というのはどうか。むろん、十分にあり得る選択肢なんだけど、安易過ぎないか。う〜ん、大丈夫なのかなぁ、というのが鑑賞前の正直な心情でした。
しかし、思ったより良い映画で、ホッとしたのでした。

なにより、今回は武がいい。今回の武のキャラは、“ヤクザに疲れたヤクザ”という、武が「ソナチネ」や「BROTHER」で磨き上げてきたもの。こういうのやらすと、武は絶品なんだよねー。それが表すものは、「戦場のメリークリスマス」のラストで、武が「メリークリスマス、ミスターローレンス」と言った時に開示してみせた世界の深淵、それに通じるもので、私が武の映画に求めるサムシングとは、正にこれです。まぁ、全盛期(?)の頃に較べると、確かに弱いけれど、一応よし!といった感じです。

残虐シーンのオンパレードだった前回に較べて、今回はあまり残虐シーンはありません。山王会というひとつの組織の崩壊を描くのだけれど、丹念に飽きさせる事なく描き、誰でもが(?)楽しめる作品に。
そして、武はこの映画に現代日本への批判を込めた・・・というのが私の感想なのですが、それはこういう事です。
山王会は、簡単にいえば、メッチャ新自由主義的、ネオリベ的なんですね。ヤクザにとって大事なはずの仁義や上下関係を蔑ろにして、カネを儲ける事ができる奴が偉い、という方針でデカくなった組織なのです。ヘッジファンドとかやってカネを儲ける事のできる若手が取り立てられ、古参の幹部は怒鳴られる毎日。そんな幹部たちには食事も出さない。合理的なんですね。
これは正に現代日本に吹き荒れるネオリベ的なるものの戯画みたいなもので、武がこういった風潮に批判的なのは周知な事です。今の人たちは10円でも安い所で買おうとするけど、昔は少々高くても近所の馴染みの店で買ったもんだ、自分たちはカネのために生きてるんじゃないという矜持があったからね・・・等の発言を、武はよくしています。評判のラーメン屋に並んだり、ケータイ買うのに徹夜したり、そういった現代日本人のみっともなさに対する武の苛立ちが、この映画にもよく出ていると思うのです。
この映画のキャッチコピーは「全員悪人」。この全員とは・・・日本人全員、という事なのかもしれません。

また、人々を互いに争わせ、漁夫の利を得ようとする者に対する嫌悪も顕著です・・・といえば、アメリカを思い出すのは私だけでしょうか。尖閣や竹島を利用して、日本と中国、韓国を争わせ様とするアメリカのやり口。分割して統治する、というローマ帝国譲りのやり方を続けるアメリカ帝国に対する怒り。そういったものを描こうと・・・・・・え?今なら尼崎連続変死事件が思い浮かぶって?・・・ウ〜ン、そうですか。まぁ、あれも人々を操って、互いに殺し合いさせてたみたいですが・・・。

とにかく、最後にスッキリするし、いい映画だと思いました。

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