2009年 映画鼎談 その2 [ベストテン]
「ウォッチメン」
- オガケン
- “結構良かったアメリカ映画”という話の続きをしましょう。まず、「ウォッチメン」。これはマンガで初めてヒューゴ賞を穫り、SF界のみならず文学界をも騒然とさせたアラン・ムーア原作の傑作アメコミの映画化・・・なんだけど、残念ながら私は見逃してしまった。ヤマネくん、どうだった?
- ヤマネ
- ボクは観てない映画の話をしたいのに、残念ながらこれも観たやつじゃないですかー! 観てないけどちっとも面白くなかった映画といえば・・・「ターミネーター4」や「バラッド 名もなき歌」なんかがあるんだけどなー。その話は聞きたくないですか?
- オガケン
- すごく聞きたいけど、今は体調悪いから、また回復した時に頼みます。
- ヤマネ
- ・・・。ウォッチメンって原作読んでないんですけど、発表当時、政治的にも話題になったんですよね。1985年にニクソンが三度目の再選を果たして、ベトナム戦争にも勝利して、ソ連と核戦争を起こそうとしている、という架空のストーリーに基づいたものです。スーパーマンとか、スパイダーマン、バットマンといった既存のアメコミヒーローを「脱構築」してみせてるんですよね。早い話、現実の世界にそういうヒーローがいたら、迷惑だろう、冷戦中にそんな奴らが存在することが市民にとっては大きな不安。って内容なんです。主人公の名前が「ロールシャッハ」ていうんですが、名前からして意味深でしょ。ロールシャッハテストを連想させて。
- オガケン
- アメリカ的正義が全世界的に疑義にさらされている時に、なんともタイムリーな。・・・アラン・ムーアは「Vフォー・ヴェンデッタ」の映画化も面白かったし、「フロム・ヘル」も映画化されてるよね。こちらは映画は観てないけど、コミックの方はかなり面白かった。う〜む、やはり、観たかった、「ウォッチメン」。
- ヤマネ
- いやいや、観ないでいいですよ。面白かったから。
- マツヤマ
- ヤマネくん、もういいから今度ゆっくり「観てないレビュー」書いてよ。しかし「ダークナイト」や「ウォッチメン」など、アメコミ映画は根強い人気だな。「アイアンマン」なんかもそうだったけど、現代の世相を具体的に織交ぜていて、すごく楽しめるんだけどネタはつきないのかなぁ。
- ヤマネ
- いや、ネタ切れしてますよ。その証拠に「ドラゴンボール」とか、やっちゃいけないことやってしまったし。日本のアニメに手を出してきて失敗してるんですよね。もちろん観ていませんけどね…
- オガケン
- そーいえばあったね、「ドラゴンボール」。確か、チョウ・ユンファが出てるんだったかな。
- ヤマネ
- そうです!レッドクリフの出演をドタキャンしてまで亀仙人になってしまった。チョウ・ユンファには長らく男泣きをさせてもらってきましたが、泣いてたボクがバカだったー! ジョン・ウーを悲しませるなよー。
- オガケン
- 日本のアニメ・・・は、私は観ないんだけど、まだいいの?ヤマネくん?
- ヤマネ
- もちです!・・・・・・つーか、いまや邦画はアニメ以外、酷いことになってますよね!
- マツヤマ
- あっ、でも「ポチの告白」は良かったよ。ちょっとVシネ的ではあるけど、良い意味での問題作、重〜い作品だった。観終わった後、座席に背中が貼り付いて立てなかった・・・。
- ヤマネ
- そんなのやってたなんて知りませんでしたヨー。
- マツヤマ
- そりゃそうだよ。単館でちょっとずつしかやってなかったからね。こういうのをやる映画観こそ志が高いと思ったね。オレは十三の「第七芸術劇場」で観たけど、京都では「みなみ会館」でやってた。
- オガケン
- さすが!サトウさん偉い!!・・・って、私もこの映画、観てないんですけど。
- マツヤマ
- でも実際はヨーロッパもハリウッドも全体的に見ると今ひとつじゃない? 中東、中国、韓国とか、アジア勢はすごく強いのに。アジアで日本映画だけがハリウッドに引きずられるように駄目になっちゃった。スポンサーが口を出すのか、制作側が一方的にスポンサーのゴキゲンをとっているのかわかんないけど、実にテレビ的だと思うよ、今の邦画。
- ヤマネ
- そうですね、まったくひどいもんですよね!!益々テレビ局がドラマと連動させたりして、“続きは映画で”、とかあり得ないでしょ。さらに“続きはテレビで”、とか。「のだめ」「ルーキーズ」「余命一年の花嫁」「アマルフィ」とかもう携帯で配信とかでええやん。とても映画と呼べる代物じゃないんだし。ボクは「映画館を盗むな」キャンペーンをしたいです!
- オガケン
- ノーモア・映画館ドロボー!・・・まー、テレビを見る人が日に日に減ってる、という期待を持てる様な噂もきくんだけど・・・どうだろ。2010年もあんまり変わらないかな。
- ヤマネ
- 変わらないんじゃないでしょうか。そんな映画もどきをかけるぐらいなら、ずっと「THIS IS IT」を流しておけばいいのに、と。
- オガケン
- きたきた(笑)
「THIS IS IT」
- オガケン
- ヤマネ君はマイケルの大ファンだったけど、私はそこまで大ファンというわけでもなかったし、軽い気持ちで観に行ったんだよね。ところがこれが素晴らしかった!
- ヤマネ
- フーズバーっ!
- オガケン
- なぜここまで感動しなければならないのか、と、狼狽えてしまったもの。マジで。
- ヤマネ
- そうっすよねー。一人だけダンスのレベルが違いますもんねっダッ!
- オガケン
- 周囲のスタッフも一流揃いなんだろうけど、マイケルの発しているオーラだけ異常でクラクラくるよね。マイケルが全てを仕切っている。真の意味で。ダンスに関して言うと、上手いだけでなく、何より手足が長くてスタイルが凄くいい。手もビックリするくらい大きいし。シルエットがひとつひとつ決まり過ぎ。そこらあたりが、今のマイケルフォロワーたちと、大きく違うところかな。
- ヤマネ
- ダンスシーンでは、他のメンバーが一生懸命全力で踊っているから筋肉質なのに対して、マイケル一人だけ力抜いて舞っている感じですもんね。太極拳の老師みたいな。良く知らんけど。チャンモー!
- マツヤマ
- オレは観てないけど、よく阪急梅田のムービングウォークでムーンウォークはやったな。
- ヤマネ
- 出た、オヤジギャグ!
- マツヤマ
- 今年もスベるゼ!フー!
- ヤマネ
- でもねぇ50にしてあの身のこなし。「えええいっ!連邦のマイケルは化け物か!」とシャアなら言うのです。あーおぅ!
- オガケン
- 私はマイケルの作品の中では、多分一番「BAD」を聴いてなかったんだ。まぁ、時期の問題もあってね。私が一番マイケルを軽くみてた時期で。だけどこの映画を観て、無性に「BAD」が聴きたくなってねぇ。もう、毎日聴きまくってたよ。
- ヤマネ
- 聴きます聴きます! ・・・っっだまん!
- オガケン
- マン・イン・ザ・ミラー!あの曲は最高だ!!
- ヤマネ
- ok! ・・・しかし残念ですねえ、まだまだ活躍して欲しかったのに。中学の英語の教科書の最初の例文で、「これはペンです」をやめて「THIS IS IT.」にしたほうが日本の印象よくないですか。Michel is not taller than Ken. とか。
- マツヤマ
- 今までマイケルに興味のなかった人とか、そもそもよくマイケルの事を知らない若者とかが、この映画に熱狂してるだろ。実は、サコさん(オレの嫁さん)もそうなんだよ。知らない間に、家にマイケルのCDが着実に増えていってる。 一体なにがそんな現象を呼び起こしてるのかな?
- オガケン
- うーん、私が思うにですねぇ、90年代頃から、マイケル的なものが否定される様になってきたんですよ。つまり、完璧に練り上げられ、作り込まれたエンタテインメント、という様なものが、ね。何といっても時代のキーワードは「リアル」ですから。マイケル的なものは「リアルじゃない」という事になって、どちらかというと、馬鹿にされる様になったのです。
- ヤマネ
- ええー!でも、そんな「リアル」なんて、幻想じゃないですか!
- オガケン
- うん、それはその通り。なんだけど、時代の感性(?)は、“そこらに居る感じがするスーパースター”を“リアル”としてオッケー、“いかにもな、みんなと隔絶したスーパースター”を“リアルじゃない”としてバツ、と判断する様になったんだよ。そしてその傾向は、今に至るまで続いてると思うんだ。で、この映画だけど、全編ステージの舞台裏でしょう。そこには、普段のマイケルが、無精髭を生やしたマイケルが!映ってる。つまり、今の観客には強烈に“リアル”と受け取られたんじゃないかなぁ。マイケルのもの凄さを、“ショー”ではなく、“リアル”として受け取った。すると、その凄さに圧倒された、と。それが、この映画の大ブームを巻き起こしているのでは、ないかしら。
- ヤマネ
- ふーん。そんなもんですかねー?ボクはむしろ、マイケルのメッセージがみんなの心に訴えたんだと思いますよ。あと4年以内に地球を救わなければ!という。
- オガケン
- それ「2012」やろ! 観てへんわ!!
- ヤマネ
- てへ。ボクは観ましたー。マイケル死んだから地球が滅ぶ、という映画でしたよー。なんてねー。フー!
「グラン・トリノ」
- マツヤマ
- やっぱり話はココに戻る?
- ヤマネ
- 当然です! …にしてもイーストウッドは傑作連発ですね。チャンモー!モン族。
- オガケン
- マイケルはもうおいといて。・・・で、これが私のベスト1。まー、当たり前すぎて面白くないんだけど、でも、これを1位にしなければ、私ではないでせう?
- マツヤマ
- まったくその通り。これをベストに入れないのはオレの性格の問題。オレがいれても、なんか変だろ?
- ヤマネ
- ボクはー、「チェンジリング」もかなり好きですよ。子供を持つ身としては怖すぎる話だし胸につきささった。ひえー。
- オガケン
- アンジェリーナ・ジョリーが良かったね。彼女は実生活では養子をとりまくってるんだから、最後にあの子も養子にとればいいのに、と思ったけど。・・・けど、あの子じゃ可愛くないからダメかな。
- ヤマネ
- 雰囲気出てましたねー。「ウォンテッド」みたいなのもいいけど、こういうのもやれるんですよね。一方で「グラントリノ」はイーストウッド以外は殆ど知らん人ばかりでしたが、だからといってイーストウッドだけ際立って目立っている印象がない。むしろ街の人々の一部としてごく自然に溶け込んでいるのがそのまま感じられるでしょう。多分もう一人でも著名な顔が出ていたら随分印象が崩れていたんじゃないかな。そのあたりの計算を含め、凄く緻密な映画な気がする。本人は適当にやってるかもしれないけど。
- マツヤマ
- そうだね。ロケーションも殺風景だったし、なんだか“スゴいもの”を期待して観に行った人たちから「手抜き?」「低予算?」「何コレ?」って声が聞こえて来そうだったけど、少なくともオレはそういう声を一切聞かなかったよ。観た人はみんな7回くらい雷に打たれたような顔をしてたよ。
- オガケン
- ちなみに7回も雷に打たれたロイ・サリバンという実在の人物がいるそうです。最後は失恋で自殺したそうですが・・・。いや、しかし、イーストウッドは今や蓮見一派から秘宝党、キネ旬に至るまで、右からも左からも上からも下からも、硬派・軟派・犬儒派・政治派・マニア・トーシロ・頓珍漢にアンポンタン、様々な所から絶賛されていて、なーんか、ちょっと不気味なんだよね。なんでこんな事になったのか。ここでオパールまでイーストウッドを1位にすると、なにかよくない事が起こる様な気がして・・・。
- ヤマネ
- いいじゃないですか。どーせ、2012年には世界は滅ぶんだし。1位は「グラン・トリノ」で、決定?
- オガケン
- いやー、やっぱり、それはやめておこう。私の個人的な1位という事で。・・・では、マツヤマさんの個人的な1位の映画に話をうつしましょうか。
「グッド・バッド・ウィアード」
- マツヤマ
- もう、最高だったよ! 「甘い人生」に続く「キム・ジウン+イ・ビョンホン」コンビはもう最高タッグだね。
- ヤマネ
- マツヤマさんは単にイ・ビョンホンが好きなだけでしょ?
- マツヤマ
- 「それもある!」とあえて言い切ろうじゃないか。
- オガケン
- 私はイ・ビョンホンってあんまり興味なかったけど、これ観てすごくカッコいいと思いました。むしろ、かっこ良過ぎる!・・・でも、やっぱソン・ガンホがいつ観ても素晴しいですね!彼は間違いない。 グッド役のチョン・ウソンも若手の二枚目として控えめなのが好印象でした。
- マツヤマ
- そう、これはビョンホンとガンホの映画なのね。ラストでわかるのは朝鮮時代の2人の過去の因縁だ。その過去とは何か?それはこの2人の主演作「JSA」にさかのぼる。
- ヤマネ
- 2000年ですね。このあたりから韓国の国家保安法の厳しい制限がなくなって、映画でも表現が自由になったんですよね。面白い韓国映画が続々出て来ましたね。
- マツヤマ
- そうだね。だから「JSA」はメタ同性愛映画だったのさ。
- オガケン
- 表現の自由ってそっちですか?
- ヤマネ
- 出ました。妄想作家!
- マツヤマ
- イヤイヤほんとにそうなんだって。「JSA」でビョンホンとガンホの出会いは、南側のビョンホンが地雷を踏んでしまって動けなくなったのをたまたま通りかかった北のガンホが信管を抜いてくれてポンと渡すでしょ。あの信管は男性自身そのものなんだよ。そしてビョンホンはガンホにゾッコン!
- ヤマネ
- ZOKKON命!シブガキ隊。ちなみに命と書いてLOVEと読みま〜す。
- オガケン&マツヤマ
- 無視!
- オガケン
- 確か、そこからビョンホンは「アニキと呼んでもいいですか?」って手紙を書くんですよね。
- マツヤマ
- そうそう。で、グループ交際にまで発展して。光り物のプレゼントまでするんだよ。そして、いろいろあって「グッド・バッド・ウィアード」のラストだ。
- オガケン
- あのとき俺から奪った左手の薬指はまだ持ってるか、って?
- マツヤマ
- そうそう。「アタシから盗んだ心を」ってね。
- ヤマネ
- 盗んだこ〜ころ返せ〜、う〜っウォンテッド!
- オガケン&マツヤマ
- 無視!
- オガケン
- ということは映画の世界では2人の愛は続いていたと?
- マツヤマ
- そうです!
- ヤマネ
- ボクは「グッドバッド〜」は観てないけど、なんかヘンな先入観を持たされてしまったみたい・・・・・・チャンモー!フー!
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