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2009年02月22日(Sun)

「フェイクシティ ある男のルール」

Text by Matsuyama

最近のハリウッドもなかなか巧妙な手を使うようになった。「イーグル・アイ」でもそう思ったのですが、その映画が暴き系なのか、火消しなのか、どちらかわからないモノが増えてきたように思います。それを私はフェイク(偽暴き)系と呼びます。ついでに最初からネタ暴きます。

父さん、やっぱりこの映画はいちばんおカネを持った人が権力を手にできるってことを言っているの?
マサユキ、そう結論を急ぐな。
そんなふうに分かり易い映画ほど疑わしいんだよ。
じっくりと検証すべきだ。
じゃぁこれが父さんの言うフェイク系?
うん、そう考えてる。
じゃぁ悪徳な警察本部長のワンダー(鶴瓶似のフォレスト・ウィッテカー)をFRB(連邦準備銀行)やIMF(国際通貨基金)の支配者に当てて見るのは間違いなの?
ハッキリとそう見えるから間違いではないが、そう見せて満足させるようにこの映画が作られているような気がするんだ。
そんな分かりやすい作品をハリウッド上層部が許すはずがないから、ロックフェラー系のメディア企業“ニューズ・コーポレーション”の傘下である“20世紀フォックス”の狙いは別にあるということなのサ。
アメリカが経済危機に陥ってハリウッドが本性を現してきたんだ。
本当の狙いって何なの?
お前もせっかちだなぁ。
まぁいいか、ハッキリ言おう、“PNAC(アメリカ新世紀プロジェクト)”かつ“ネオコン”たちは今本気で大規模な戦争をしたがっているということだ。
これは若者を戦争に駆り立てるためのプロパガンダなのサ。
でもそんなことをストレートに描いたら批判をあびるから、観客が正義の所在に頭を悩ますような不条理ドラマにしてみたり、陰謀論者の心をくすぐるワナを仕込んだりしているんだよ。
陰謀論者の心をくすぐるワナってナニ?
それじゃぁそこから片付けるとするか。
まずはラストに本部長ワンダーが自分の悪事を暴露するところだ。
やっていることはどう見たってデビッド・ロックフェラーみたいだし、壁に隠されたカネはドル紙幣だけではなく、外貨や金・銀もあったみたいだから実質アメリカが牛耳っていて途上国を食い物にするためのIMFの存在をも連想させる。
さらに滑稽だったのが、ラドロー刑事(キアヌ)と若手の刑事ディスカント(クリス・エバンス)が、謎の殺し屋で実は悪徳刑事だったというコーツとフリーモントのアジトに潜入するときだ。
入り口に一瞬映ったピラミッドと目の落書きは、陰謀論者の定番であるイルミナティ(またはフリーメイソン)の関わりをもっともらしく匂わせていたんだと思う。
でも問題はそこじゃないんだね?
そうなんだ。
例えば、冒頭でラドローがオトリ捜査のために、コリアン・ギャングにわざと日本語で「コンニチハ」って近づいて怒らせるシーンは、良くなりつつある日韓関係に水を差すだけで、映画の本筋にはまったく関係ないと思うんだ。
だいいちアメリカ人のほとんどは戦後の日本と韓国の関係は知らないし興味もないと思う。
ただアメリカのネオコンたちは日韓、日中関係が良くなることを恐れているんだよ。
戦争の火種がなくなるし、アメリカが完全に孤立するからね。
それから、ラドローの妻が過去に不倫相手の男に見殺しにされた(と語る)エピソードもまったく必要ない。
ラドローに芽生えた復讐心を利用するためにワンダーが仕組んだのならわかるが、そういう伏線でもない。
無駄なエピソードでドラマが破綻しているじゃないか。
さらに言えばラドローの彼女の存在も不要。
せめてもっと美人にしろ!
それで、どうして父さんはこれが戦争プロパンガスだと思うのサ?
プロパンガスじゃなくてプロパガンダだ。
そんなことはどうでもいいけど、ここで重要な役は若いディスカントだ。
この作品の公式HPを見ると、人物相関図のディスカントの紹介文は「行動こそ全て。
自分の目で見て体験したものこそ真のリアル。
それがこの男のルール」と書いてある。
結婚を控えていているから危険を冒したくないと言っていた彼が何故か正義に燃えて武器を持ち、ラドローと共に先述のコーツとフリーモントのアジトに乗込むが、ものすごくマヌケなミスで撃たれてしまう。
観客は「自分だったらあんなミスはしない」って誰もが思うようなミスだ。
アジトに乗込むときにラドローが「オマエもガンファイターになりたいのか」みたいなセリフを言うんだが、このフレーズこそ徴兵キャンペーンだ。
ディスカントは見た目ひ弱な白人だけど、これを有色人種の若者が見て「俺はあんなマヌケなミスはしねェ。
俺こそが真のガンファイターだ!
」って思うということだ。
でも志願兵になるような有色人種は貧しいだろうし、映画なんか観ないんじゃないの?
そこも重要だ。
ラドローの元相棒で、署内の悪事を告発しようとして殺された黒人刑事ワシントン、ワンダー本部長、コーツとフリーモント、麻薬売人のスクリブルなど善人と悪人のほとんどが黒人で完結していることだ。
ヒップホップアーティストのコモン、ザ・ゲームも出演しているというしな。
でも父さんはヒップホップ知らないから誰が誰だか分かんなかったけどね。
そこでラドローが「俺は差別主義者だ」って言って、有色人種の闘争心を煽るわけだ。
そういえば黒人ばっかりだったね。
でもボクが分からなかったのは、ワシントンの奥さんが夫の仇を討とうとするラドローに「血は流さないで」って言ったのに、その後で相棒のディスカントも敵も、自分以外はみんな死んじゃって、血を流すどころの騒ぎじゃなくなったことに何の説明もなかったことだよ。
そこに説明なんていらないのサ。
けっきょくあそこで言いたいのは正義を行使するためには必ず血が流れるっていうことだ。
できれば無駄な血を流したくないと思いながらも、それは避けられないということなのサ。
それじゃぁ、大規模な戦争があるとしたら、また日本は戦争をするっていうこと?
それはない、と思う…

1929年、世界恐慌時の日本に発足した浜口雄幸内閣。浜口が大蔵大臣に任命したのが井上準之助。この二人は周囲の反対を押し切った経済政策(金輸出解禁)で国内をさらなる不況に陥れ、アメリカに大量の金(きん)を保有させ、その国力を強大なものとする結果を作った売国政治家だったということが発覚した。浜口はその風貌から“ライオン宰相”と親しまれ「国民諸君とともにこの一時の苦痛をしのんで」というフレーズを口にしたという。浜口は1930年11月暗殺未遂、井上は1932年2月暗殺される。そしてこの二人による売国政策が、後の戦争へ引きずり込まれる道筋となったのは言うまでもない。そして、少なくともこの二人とは2009年2月現在の麻生太郎、中川昭一には当たらない。ライオンを疑え!全テレビ・新聞を疑え!

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