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2006年10月06日(Fri)

レディ・イン・ザ・ウォーター ☆☆

Text by BABA

 急いで。ハッピーエンドまで、もう時間がないわ。ババーン! 『シックス・センス』『アンブレイカブル』『サイン』『ヴィレッジ』と、奇妙な味わいの作風M・ナイト・シャマラン監督、今回は? というと、茫然と途方に暮れる作品。

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 孤独なアパート管理人ポール・ジアマッティ、ある夜、夜中にプールで泳いではなりません! と口をすっぱくして言っているのにだ、真っ裸で泳いでいた白人美女と遭遇。その白人美女、「ストーリー」と名乗り、少し頭が不自由なのか、「私はミズノ製、もとい、水の精(ナーフ)なんです、あなたは器(うつわ)?」とワケのわからないこと言う始末。

 ナーフとは何者か? というと、なぜかアパート住人の韓国人おばあちゃんが全部知っているのであった。映画の冒頭ナレーションの説明を、おばあちゃんは聞いていたのか? ってそれはどうでもいいのですが、何やら人間界の秩序を回復するためには、ナーフを大鷲に連れ去ってもらわないといけないらしい…。と、アパート住人が右往左往するお話。

 とにかく、器、シンボルを解釈する者、守護者、職人、治癒者、証人を見つけ出さなければならない…と、いかにも「深読みしてくださいね!」と言わんがばかりのお話でございます。

 ところが生来、深読み・邪推好きな私なのに、どうも邪推する気にならないのはどうしたことでしょう?

 邪推とは、作者の意図を悪意をもってねじまげ、まったく別の結論を牽強付会するのが楽しいわけで、この作品のように、「ほれほれ、深読みしなさいよ! でも変な解釈するヤツは、“映画評論家”のように無惨に死ねばよいのだ」と言われると(言ってませんか?)、死んでも深読みするもんか! と一人ごちたのでした。

 ネタバレですが(どうでもいいネタですが)毎回、ヒッチコックよろしくこっそり自作に出演するのをお楽しみにしているシャマラン監督、今回はかつてなく重要な役で出演しております。それは、「ストーリー」を受け止める「器」の役。

 ところで多民族が住むこのアパートは、アメリカ帝国の縮図に他なりません。この映画は、アメリカが秩序を取り戻すには何が必要か? を問いかける物語なのであった。

 アメリカは、物語(ストーリー)を大空に解き放たねばならない、そんな物語を語れる器は、オレ、シャマラン様の他におるまい? と、シャマラン監督はアピールしているのであろう。おっと、うっかり邪推。

 そんなことはどうでもよくて、というか、本来映画にとって、そんなことはどうでもよい。例えば『グエムル』。『グエムル』では「韓国の縮図」が描かれていた、と思うのですが、何をおいてもドラマとしての魅力が炸裂してますし、思考停止して映像だけ眺めても愉快をもよおす作品でした。

 対して『レディー・イン・ザ・ウォーター』はどうか? ドラマは中途半端、茫然とスクリーンを眺めて面白いか? というと、はなはだ心もとないわけです。アパート住人の会話はもっと愉快でなければならない。パーティシーンはもっとサスペンスフルでなければならない。と、思うのです。

 また映画の冒頭、ナーフのお話をナレーションで長々と語ってしまうのはいかがなものか? 途中で飽きるし。白人美女が現れた瞬間、「あ、これが水の精ですな」とわかっちゃっていいのか? 主人公がいちいち韓国人おばあちゃんに話を聞きにいくのがまどろっこしいし、おまけに韓国人おばあちゃんが何かと勿体つけて、すんなり話してくれないので、イライラしっぱなしである。

 後半は、シンボリストが象徴を読み取るシーンなど、ちょい面白いシーンもありますけれど、もうちょっとなんとかならんもんか? と腹の中で私語しました。

 とはいえこれが、無名の監督の作品でしたらそこそこオモロかったはず。ここにシャマランの不幸があります。シャマラン監督作品は、何をおいても「シャマラン監督最新作」として宣伝されてしまうわけで、余計な先入観がはたらいて映画の楽しみがそこなわれてしまったのだなぁ、と一人ごちるのです。どうしても、『シックス・センス』や『ヴィレッジ』のような、ツイスト(ひねり)を期待する私がいる。

 今作はあまりヒットしないでしょう、むしろアウトだと予想しますが、シャマラン監督、次回くらいには『シックス・センス』を越える特大ホームランをかっとばしていただきたい。と、プレッシャーを与えておく。

 なんだかんだ言いましても、アメリカン・メジャー作品でありながら、作家性を炸裂させるシャマラン監督は貴重な存在。ワーナー・ブラザーズもワナワナと怒りに身を震わせたのでは? ともかくシャマラン好きにはタマランはず、オススメです。

Comments

投稿者 n : 2006年10月07日 22:51

『レディーインザウォーター』見てきました。
私はシャマランの作品は『サイン』が一番面白いと思っています。宇宙人が誕生日会のビデオに出てきたり、バットでボコボコにされたり、いつも爆笑してます。でも、だいたい傷ついた主人公に奇跡とかが舞い降りて、美しい話でもあるので、最後には号泣してしまいます。『ヴィレッジ』はそんなに笑えなかったのですが、今回の『レディー~』は笑いました。肉弾戦(?)もあったし、映画の中で、己を揶揄するかのような表現とかもあってずっとおもしろかったんですけど、最期ではまた泣いてしまいました。テレビCMでは、「ファンタジー」とか「新しいシャマラン」とか言ってましたが、いつものシャマランで個人的には嬉しかったです。(でもメジャー映画なら、大ドンデン返しとかあったほうが、ウケますよねっ。)

投稿者 baba : 2006年10月08日 04:23

nさん、コメントありがとうございます!

ふむふむ。やはりシャマラン好きの方にはたまらん作品なのですね。いつものシャマランなのですが、どんでん返しはともかく、私は、「アホな話を、A級の演出で描く」シャマランが好きなのです。今回は演出が少々タルいかな? と思ったのであります。

ピンポイントで、凄く面白がる人がいる映画なのだと思います。そして、私の場合はそうではなかった、ということで。

投稿者 n : 2006年10月08日 10:46

確かに、ピンポイントで面白かったです。全体的な物語の流れは、不自然なところ、独自のルールが多すぎて、変だなぁと思いました(笑)。

投稿者 baba : 2006年10月09日 23:47

>独自のルールが多すぎて

そこらへんが、ちょっとしんどいところでした!

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