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2006年04月10日(Mon)

ドラえもん のび太の恐竜 2006

Text by BABA
公式サイト
http://www.dora-movie.com/

 日本中を感動させた名作が生まれかわって大スクリーンに復活!! ババーン! 実のところ私、名作とウワサ高きオリジナル版見ておりません。さらに藤子不二雄さんといえば、断然! 『魔太郎がくる』『プロゴルファー猿』の藤子・F藤子不二雄A派、『ドラえもん』も面白く読んだことがない、というへそ曲がり的・特殊的な人物、と、いうこともあってか、このたびのリメイク版にもたいへんな違和感をもよおしたものです。

 そりゃ、私も劇場で入場者全員にプレゼント! 「トコトコ★おさんぽドラ」をいただいて上機嫌、手ごころを加えたいところですが、世の中に偽善がはびこる風潮あり、偽善を助長する映画には、激烈な口調でもの申したい。

 前口上はそれくらいにしてさっそく本題に入ります。

 今回の作品、偽善的な話に身が打ち震えるほどの怒りをおぼえました。どこが偽善的か? それを明らかにするため、ストーリーをかいつまんでお話しします。

 ひょんなことから恐竜の卵を掘り出したのび太少年、ドラえもんマジックの力も借りて、孵化に成功します。生まれたのは首長竜、その鳴き声から「ピー助」と名づけられた。のび太少年、すっかり母親気取りで育てるも、ピー助はアホほど巨大化してしまってこりゃ辛抱たまらん、と、のび太はタイムマシンにお願い、恐竜時代にピー助を放ちに向かうのでした。ところが、「恐竜ハンター」が現れ、「こんなに人になついている恐竜は見たことがない、高値で売れるぜ」とピー助を奪おうとします。果たして、のび太一行は無事ピー助を故郷に帰すことができるのであろうか? ババーン! …というお話。

 まずもってよくわからないのは、「時間警察」の存在であろう。彼ら「時間警察」は、「恐竜ハンター」を「歴史を歪める」者として取り締まろうとします。

 確かに、黒装束に黒マスクの悪人面した「恐竜ハンター」を取り締まろうとするのは、「人は見た目が9割」と申しますので合点がいく話、しかし警察を標榜するからには、取り締まりは「法」に基づくものでなければならないはずです。

「恐竜ハンター」が、恐竜を乱獲し、廃棄物を捨てまくって歴史を改変することが、「法」に触れているということなのでしょうか。

 ちょっと待った! それなら、のび太が、ピー助を1億年前に放つのも、歴史を大きく歪めることでしょう? 同時期に公開中の『サウンド・オブ・サンダー』において時間旅行者は、「過去の何ごとも変えてはならない」との厳しい倫理規定があり、うっかり○○を踏みつぶしたため、現代にドえらい災厄をもたらしたものです。

 過去のほんの少しの変化が巨大に増幅される、とのアイデアで、『バタフライ・エフェクト』という映画も作られたりしました。北京での蝶のはばたきがニューヨークで大嵐になるくらいですから、1億年前にピー助を放ったならば、現代にどんな巨大な変化が現れるのであろうか? 想像するだに恐ろしい。のび太少年の軽率な行動が原因で、現代のドラえもんは「スッポン型」ロボットになってるかも知れんゾ。…面白そうです。しかしそういう映画ではないのであった。

 話を本題に戻します。「時間警察」がのび太一行を逮捕・投獄しないのはおかしいのだ。のび太たちは、使い古しタケコプターを捨てもします。タケコプターがいかなる動力で駆動しているか、寡聞にして知りませんが、フロン、あるいは原子力やダイオキシン、プリオンなどは使われておらぬのか? 土に還る地球環境にやさしい素材で作られているなら、「のび太くん、こんなところに捨てちゃぁダメだよ」みたいな? そういうセリフが欲しいところです。

「時間警察」が「恐竜ハンター」を追いかけ回しても、のび太一行にはお咎めなし、あまつさえ「恐竜ハンター」退治に貢献したためか、敬礼までする始末。未来の法体系は一体どうなっているのか! 

 …ここまで論を進めてきて、我が「時間警察」批判に大きな穴があることに気づきました。ひょっとしたら、未来においては「人は見た目が9割」が法の大原則になっているのであろうか。

 つまり、『のび太の恐竜 2006』が公開されたことで、「人は見た目が9割」概念がはるか未来の、法の大原則になってしまったのである。少年・少女、愛くるしいロボットは見かけが良いので決して罪に問われないようになるのである。まったく恐ろしいことです。偽善はこのようにして世界を覆っていくのですね。

 そんなことより今回のリメイクであります。オリジナル版から、そのSF的アイデアは変わっていないと見受けられます。

 この25年間に、「カオス理論」の流行があり、その「カオス理論」を応用した『ジュラシック・パーク』がつくられ、また映画における「恐竜」表現においては『キング・コング』という傑作が作られたりしました。

 しかるに、今回のリメイク版は、そういう25年の恐竜なりタイムマシンに関する色んな発展を考慮せず、オリジナルをちょこちょこブラッシュアップしてなぞっただけに見えます。もったいないことです。

 オリジナルも見てみたい、と思ったことでした。

(☆= 20 点・★= 5 点)

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Comments

投稿者 Ryo : 2006年04月11日 12:49

こんにちは。
6歳のときにオリジナルを観ました。
生まれてはじめて大きなスクリーンで観た映画だったので、今でも覚えています。当時は入れ替え制などというものは無く、親父と一緒に2回観ました。
そんなこんなでこの作品、観ることを躊躇していますが、当時の私は、短編ギャグアニメだった、テレビ版の延長線上のアニメだろうと思っていたので、とにかくびっくりした記憶があります。
今の子供はどうなんですかね?

投稿者 baba : 2006年04月11日 17:03

>Ryoさん お久しぶりです。

…今の子どもはどうなんでしょうか?
結構、大人向きな作りになっていたと思います。シズカちゃんの入浴シーンもあるし。


それと、藤子FさんとAさん、おもいっきり間違ってました。ときどき勘違いしがちな私です。ずーっと、FさんとAさんの違いを知らずに読んでいたので、F派、A派といいつのるのに違和感があります。…って、よくわかりません。誰にも気づかれないように修正しておきましたー

投稿者 キキリン : 2006年04月15日 11:08

 私は、藤子・F・不二雄派です。短編集などは、楽しく読めると思いますよ。私の知人にもドラえもんにはまった人いますが、私も色んなこと教えてもらえると思って読みましたよ。映画の原作本も持ってます。でも、そこまで細かく感じませんでした。

投稿者 BABA : 2006年04月15日 13:29

>キキリンさん

かきこみありがとうございます!
細かくてすいません…。
私は、大きな齟齬だと思うのですが、『ウルトラマン』を見て、「ピアノ線まるみえ!」と指摘する夢も希望もロマンもない小学生みたいなものなのでしょう。

私が『ドラえもん』を読んだのは、小学生くらいでした。
一度、マンガの『ドラえもん』も読んでみます!

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