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2005年09月22日(Thu)

ファンタスティック・フォー [超能力ユニット] ☆☆☆☆

Text by BABA

 4人の愛 4つのパワー 1つの使命。ババーン! ってよくわからない宣伝文句ですが、1961年生まれ、『Mr.インクレディブル』にも影響を与えたマーベルコミックス映画化、これが意外や意外にグンバツに面白く、はて監督は…? と見れば傑作『TAXI NY』のティム・ストーリー! どおりで面白いはず! ティム・ストーリーは“なかなか、やるヤツ”として私の心に深く刻み込まれたのでした。

 お話はというと、宇宙線が引きおこす突然変異を研究中に、5人の男女が自ら宇宙線を浴びてしまい、それぞれ特殊能力をゲットしてアレコレというアホみたいなお話です。

 設定はともかく、何と申しましてもいちいち気が利いた、そういう設定のアホさ加減を自覚したセリフの数々、どのシーンにもトンチがあふれ、これこれ、これこそが映画である! と私は言いたい。

 一例をあげますと、冒頭、後に“ヒューマン・トーチ”となるジョナサン・ストーム(クリス・エヴァンス、『セルラー』でも好演)と、彼のNASAでの上司ベン・グリム(マイケル・チクリス)——後の“ザ・シング”——の再会シーン。ジョナサンは「デジカメ、××画素、メモリースティック、××ドル」とごちながらベンに向かってパシャッとシャッターを切ります。そして、「かつての部下が上司になった男の表情 プライスレス!」というセリフ、ご存知アメリカンエクスプレス・カードCMのパロディですけど、「ジョナサンとは、言いにくいことをギャグにまぶしてズバズバ言うヤツなんだなぁ」という具合に、笑わしながらキャラをガシッと立てる見事なセリフとなっておりまして、こういう感じのよいセリフ満載でございます。

 クリス・エヴァンスは身体から炎を発する能力を得ますが、体温を測りにきた美人看護婦「あなた! めちゃくちゃホットよ!」。クリス答えて「えへっ。ありがとー。君もホットだよ!」とか。あははは…って面白くないですか? すいません。

 特殊能力に対するそれぞれの反応が五者五様、一人は科学者として沈着冷静に研究の対象として受け止め、一人は「うっひょー、凄い能力もっちゃったよー!」とポジティヴに大喜び、一人は容姿が変わってしまって嘆き悲しみ、一人は悪に目ざめていく……、もう一人インビジブル・ウーマンは何を考えているのかよくわかりませんが、ともかくそれぞれ特殊能力とその反応を描くことが、キャラ立ちに直結、中盤じっくりキャラを立てていく脚本がお見事でございます。

 “ファンタスティック・フォー”が公衆の面前に初登場するシーンも素晴らしいです。容貌魁偉なベン(マイケル・チクリス)が橋の上で大事故に巻きこまれ、そこに他の三人が偶然かけつけるのはご都合主義の最たるものですが、4人の能力をうまく生かしつつ紹介する構成で、また、そこにご都合主義の上塗りでベンの奥さんが現れ、結婚指輪をはずして道に置く→ベンは指輪を拾おうとするが、指がゴツゴツで拾えない! →そこへ友人リード(ヨアン・グリフィス)現れ指輪を拾い、「僕は一生かけても君を絶対元に戻してやる!」と熱い友情の言葉を発する…巧い! と大いに感心しつつ茫然と感動したのでした。

 映画は、悪役ヴァン=ドゥームの鋼鉄の像から始まり、それはヴァン=ドゥームのキャラ立ちに役立っておりますが、結局ホントに鋼鉄の像になっちゃった! というところも大いに感心。

 脚本の一人はマーク・フロスト、かの『ツイン・ピークス』の脚本といくつかのエピソードの演出を担当した人、そういわれてみればギャグのテイストが『ツイン・ピークス』に似ている…ってものすごく適当ですが、中盤は微妙にソープ・オペラ(昼メロ)っぽくてこのへんがマーク・フロストの持ち味かも? 適当です。

 もう一人の脚本家マイケル・フランス、『クリフ・ハンガー』や、世界中で私だけが高く評価している『パニッシャー』の人、マーク・フロスト+マイケル・フランスの脚本をティム・ストーリーが映画化して面白くならないわけがない! で、実際、すこぶる面白く鑑賞したことでした。

 二つの大事件が起こりますが、そのどちらも原因の一端は“ファンタスティック・フォー”自身にあり。つまり、単純な善玉ヒーローが悪漢をこらしめる図式になっていないところも素晴らしいです。ヒーローとは結局マスコミと民衆がでっちあげる茶番に過ぎないのだなぁ…という真実があばかれているのもグーです。

 今回、黒人監督ティム・ストーリーにとって初の非ブラック・ムーヴィーですけど、容貌魁偉なベンに初めて敬意をもって接したのは、黒人の娘さんだった…というあたりに、「黒人は人を見かけで判断しないんだぜ、メーン!」みたいなプロパガンダをちゃっかりもぐり込ませているところは、さすがというか何というかってよくわかりません。

 主要5人のキャストもバッチリ適役、色々ツッコミどころ満載、バチグンのオススメです。

☆☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

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