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2005年08月04日(Thu)

フライ,ダディ,フライ ☆☆★★

Text by BABA
公式サイト: http://www.f-d-f.jp/

 大切なものをとりもどす、最高の夏休み! ババーン! 原作・脚本は『GO』の金城一紀、ということでかどうなのか、微妙にゆるゆる、サラリーマン堤真一、大切な一人娘をコテンパンにボコられたにもかかわらず、ボコったのが有力政治家の息子・ボクシング高校インターハイ優勝の強面なもんで、見舞金をいただいて泣き寝入り状態、いや! これではアカン! 復讐するは我にあり! 決闘するぞ! と出世を棒にふって長期休暇、高校生パク・スンシン(岡田准一)の猛特訓をうける…という題材は素晴らしく面白い映画になってしかるべきところ、いや、堤真一が徐々にきたえられ、健全な身体を取り戻していく過程がていねいに描かれ、やっぱり人間、フィットネスですな! 筋肉きたえねば! そうそう、余談ですがサラリーマンが運動するなら自転車通勤が最高ですよー! ていうか、堤真一も自転車通勤しておれば、不甲斐ないことにはならなかったろうに…ってそれはどうでもいいのですが、パク・スンシンを演じる岡田准一君も、なんかムカつく『東京タワー』とはうってかわった貧乏人を演じて好感持てる演技、堤真一との心の交流もグッときますし、「てへっ」と笑う堤真一いいじゃん! と、よいところは数々あれど、色々ひっかかるところ多数。

 まず、高校生諸君が色々策謀めぐらせて中年サラリーマン改造計画を実行しますが、彼らのモチベーションがよくわかりません。堤真一を生まれ変わらせ、復讐を成就させて恩を売って、宗教に勧誘する、とかならわかるのですけど、どうにもリアリティに乏しい。賭博行為をして、何ら罪の意識を持たないのもいかがなものか?

 さらに、いかに夏休みまるごと特訓つんだとしても相手は高校インターハイ優勝のボクサーですからそう簡単に勝てるわけがない。しかし! 勝たねばならぬなら必要なのはトンチなのです。カラダをきたえることも大事ですが、ボクシングはアートですから、アーティスティックな戦略、トンチがなければ絶対勝てないのでは?

 一応、パク・スンシンは「ボクサーは、ふところに飛び込んですっころばせて押さえつけ、パンチを封じればよい」みたいな戦略を立て、ふところに飛び込む瞬発力をつける特訓をほどこしますが、そう簡単にふところに飛び込ませてくれる高校チャンピオンは、おらんやろ? もしもしー? ボクシングをなめてませんか? って私もよく知りませんが、たとえば『ホーリー・ランド』というマンガでは、空手やら柔道などにストリートファイトで勝つにはどうすればよいか? が納得のいく形で描かれており、そういうのに比べれば随分と嘘くさい映画でありました。

 で、私思うに、岡田准一と、高校ボクシングチャンプ=須藤元気の配役を入れ換えればよいのではないか? そうすれば、イケメン金持ちスポーツマンお坊ちゃんに対する復讐という、一般大衆の無意識の怨念、言い換えるなら私の私怨をはらす、見事な映画になったのではなかろうか…? メラメラメラ、コノウラミ、ハラサデオクベキカ!…あ、いや、別に恨みはないですが。

 また、節度を失わない復讐を完全に、快活に肯定しているのも気にかかるところです。ダークサイドをともなわない復讐なんて、クリープを入れたコーヒーみたいなもんじゃないでしょうか? また、喧嘩の手をゆるめるのもダメじゃないか? 喧嘩では、相手に復讐しようという気持ちをおこさせないように、完膚無きまでに、自尊心を根こそぎ奪うほどに痛めつけなければならない……って、それは主にマンガから得た知識ですので適当です。

 監督は『シャブ極道』『笑う蛙』の脚本でいい仕事をした後、『油断大敵』(未見)で監督デビューの成島出、今回は脚本がトンチ不足、しかし手堅い演出でよろしいんじゃないかと。オススメ。

☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

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