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2011年11月23日(Wed)

ミッション:8ミニッツ 映画

MOVIXにて「ミッション:8ミニッツ」を観てきましたー。
監督は、あのダンカン・ジョーンズ。つまり、デビット・ボウイの息子だー!おお、最初の妻アンジーとの子供、映画「ハンナ」でも使はれたボウイの名曲「クックス」で歌はれた子供、そしてボウイを「うちの息子はフロック・オブ・シーガルズなんか聴いてるんだぁ!」と嘆かせた、あのボウイの息子です。
ボウイの息子のくせに音楽の趣味の悪い奴、といふのが私の昔からの認識でしたが、ミュージシャンにならずに映画監督になったんですね。いや、賢い選択です。で、前作にあたるデビュー作「月に囚はれた男」は見逃した訳ですが、結構評判は良かった様子。ホントか?親の七光り、入ってない?
・・・と、多少疑ひつつの今回のこれの鑑賞となった訳ですが・・・、いや、これは凄い。メッチャ面白い。ビックリした。ダンカン・ジョーンズ、決して親の七光りではありません!

まづ、映画冒頭。様々な場所を列車が駆け抜けるシーンからしてカッコ良い。列車とはつくづくフォトジェニックなものよのー、と再認識させてくれます。
で、主人公がハッと列車の座席で目覚める。と、あれ?ここどこ?なんで自分はこんな所に居るの?とキョロキョロしてたら、目の前に座った綺麗な女の人が「あなたのアドバイス、良かったわー」とか話しかけてきて、自分の事を「ショーン」とか呼ぶ。何言ってるねん!オレはコルター・スティーブン大尉だ!とか言っても、「は?何言ってるの、ショーン」と、全く相手にしてくれない。一体何がどうなってゐるのか・・・・・と、ヒッチコック調の始まり方も魅力的です。
まぁ、この謎はすぐに解ける訳ですが、だからと言って、真の意味で何が起こってゐるのか、といふのは分かりません。少々ネタばれになりますが、要するにスティーブン大尉は、テロリストによる連続爆破事件を未然に防ぐために、最初の列車爆破事件の起こる8分前のパラレルワールドに送り込まれ、その8分の間にテロリストを見つけ出すミッションを遂行させられてゐるのであった。8分以内に見つけられなければ、列車は爆発。で、今度は他のパラレルワールドに送り込まれてもう一度最初からやり直し。何度も何度も、テロリストを見つけるまで緊迫感に満ちた8分を繰り返す・・・。なるほど。でも、やっぱり分からない事がある。自分はそもそもなんでこんな事をしてゐるのか。確か自分は戦場で闘ってゐたはずだ。だいたい、自分に命令を下すこの偉さうなヲッサンは誰だ?なぜ、自分の質問に答へてくれない?明らかに、彼らは何かを隠してゐる・・・。

ここには大きなテーマがあります。多くの人の命を救ふ、といふ誰にも反対できない様な大義名分の前では、個人は犠牲になっても構はないのか?といふテーマです。スティーブン大尉は軍人です。だから、基本、多くの人の命を救ふためなら、自分の命を投げ出す覚悟はできてゐます。が、だからと言って、その事が自動的に、無条件に、肯定されてよいものか、といふのは微妙な問題です。分かりやすく圧倒的な美談の影には、その美談に押しつぶされてしまった多くの繊細で美しいものや、押し隠された醜い事柄が存在します。その事を、この映画は絶妙に描き出してゐます。それが、素晴らしい。
スティーブン大尉は、むろんテロリストを見つけ出し、多くの人の命を救ふために奮闘します。が、さうしながらも、自分に関はる謎の解明にも努め、それを解き明かし、そしてとりあへずのミッションが終はった後に、自分のためのミッションを遂行しようとするのです。
この最後の8分間は素晴らしいです。もし人間の人生が80年とかでなく、8分間であれば、かく生きるべし、とでもいふものです。むろん、80年でもこの様に生きるのが理想なのですが。

故に、この最後の8分間の後に続く部分は蛇足かな?ともちょっと思ったのですが、“論理的”に考へれば(?)、この様に続くのは正しいとも思へますので、これはこれでいい様に思へます。この終はり方も、これはこれで幸福感に満ちてゐる、ともいへるでせう。

ダンカン・ジョーンズ、次の作品が果てしなく楽しみです。

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