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2005年09月10日(Sat)

活性酸素 フィットネス

 活性酸素が身体に悪い、老化の原因だ、と、世の中に喧伝されてから久しい。今では、活性酸素を抑へる! と銘打つた様々な健康・アンチエイジング食品が売り出されてゐるし、アンチエイジングレストランなるものまで出来てゐる。私が10年以上前に「スポーツは身体に悪いんだぜ(スポーツは活性酸素を大量発生させるから)」と言つて、みなに変人扱ひされてゐた事を思ふと、隔世の感がある。が、最近、なんと“活性酸素は老化と関係ない? ”といふ研究結果が発表されたのだ。東京大学とウィスコンシン大学の研究チームが「science」誌2005年7月15日号に発表したのがそれだ。多分この発表によつてだらうけど、各所で密かに“活性酸素は老化と関係ないらしいよ! ”といふ動揺と騒ぎが拡がつてゐるやうに思へる。アンチエイジングをうたへなくなるからだ。ま、まだこの発表が受け入れられるかどうかは分からないけれどねー。

 私の感想を言ふと、「やはり、とうとうきたか」といふもの。大体、世間であまりに騒ぎすぎたからねェ、そろそろそんな研究が出てくるんぢやないかと思つてはゐたんですよ。さういふものだもの。…ただし、この研究では“活性酸素は老化と関係がない”とは言つてゐるが、“活性酸素は身体に悪くない”とは言つてゐない。活性酸素は、やはり身体には悪いのだ。だからやつぱり活性酸素撲滅! スポーツは身体に悪い! ……と、いふほど単純な話にはなつてゐないのだ昨今はー! 

 私が読んだ筋肉本によると(『使える筋肉・使えない筋肉』谷本道哉〈山海堂〉)、筋肉を鍛へる方法のひとつに“加圧トレーニング”といふものがあり、それは筋肉内に活性酸素を発生させる、といふものなのである! そもそも筋肉を鍛へる、といふ事は、筋肉にストレスを与へる、といふ事。それによつて、筋肉は「もつと強くならな!」と太くなるのである。だから“身体に悪い”活性酸素を発生させ、ストレスを与へ、筋肉を太くする、といふ訳だ。…しかし、そんな事して身体は大丈夫なんかいな? 筋トレは身体に悪い、なんて事はないのかな? といふ疑問が当然わく訳だが、この本の著者はかういふ。もし、筋肉に全くストレスを与へないと、その筋肉は衰弱して死んでしまふ。適度のストレスは生命・身体を維持する上で絶対に必要なもの、適度な活性酸素は身体機能の維持・増加に役立つてゐる、と。

「さうなんですよ!」とババさんが突然言つた。

「食べ物でもなんでも、適度に悪いものを摂らなければ、ダメなんです!」と力強く続け、ブハーッと煙草の煙を吐いた。「煙草もお酒もね」

 確かにさうですね。身体のみでなく、精神でも同じ事が言へるでせう。適度に“悪”に触れなければ。生温い映画や音楽や小説や書画ばかりでは、精神が死んでしまひます。精神の筋トレが必要なんです。

「…さういへば、明日は選挙ですね」

 ははは、日本の筋肉はどれほどのストレスを必要とするんでせうか。もう、壊死寸前ですが。

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