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2013年05月25日(Sat)

ハッシュパピー バスタブ島の少女 強制起訴シリーズ

起訴者:元店主

強制起訴シリーズ29弾

大陸から離れ、海岸のすぐそばにポツンと存在するバスタブ島。ここは政府の目も届かない一種の自治区となっている。そこに住む6歳の少女、ハッシュパピー。彼女のお母さんは彼女が生まれてすぐに失踪、父親のウインクと二人暮らしだ。自然と共存・・・というか、かなりワイルドな生活を送るハッシュパピー。それでも島民たちの関係は親密で、しょっちゅうお祭りなんかがあるようで、それなりに楽しく暮らしている。
ところが、100年に一度の大嵐が島を襲い、なんと島は水没!しかも、ほぼ同時期に頼りにしている父のウインクが不治の病にかかっているらしい事が判明。どうするハッシュパピー?このままでは世界が破滅してしまう!
ここに少女の世界に対する闘争が幕を明けたのであった。キャー!

ヤマネ
うん、いいんじゃないですか。個人的にあんま好きな映画じゃないんですけど・・・でも、いい映画だと思います!
マツヤマ
オレも、映画観てる時は、あんま面白くないなぁ、と思ってたんだけど、見終わってしばらく経つと・・・まぁ、いい映画なんじゃない?って思う様になったよ
元店主
私も・・・まぁ、そこそこの良作なのではないだろうか、というのが感想です。って、みんなほぼ同じ感想ですね。なにか、『いい作品』と思わすものがあるんですかね?
マツヤマ
そうだなぁ、まず、監督が新人だし、出演者も素人。インディーで手作り感溢れる作風。で、主人公が小さな女の子だろ?しかも貧乏。その子が世界に立ち向かう映画だからな。そういった事が色々と重なって、かなりの底上げをしてるんじゃないか
元店主
なるほど。しかもファンタジー風味だし・・・って、実は私にとってこのファンタジー風味は減点ものなんですが・・・一般には受けがいいのかな?
マツヤマ
あ、オレもそれはダメ。なんか・・・ジブリっぽくなかった?
元店主
ええ、そういった意見はある様ですね。私はあんまりそんな風に思わなかったんですが・・・。ジブリファンのヤマネくんはどう?
ヤマネ
べつにジブリファンじゃないですよ、ボクは!お二人ほどジブリを毛嫌いしてないだけで。・・・そうですね。全くそんな風には感じなかったです!だいたい、父親の存在が前面に出てる段階で、あんまジブリっぽくないんじゃないかと。・・・うーん、でも言われてみれば、随所にジブリっぽい所はありますねー。主人公が女の子とか、自然と文明の対比とか、もののけ姫みたいな妖怪が出て来る所とか。あと、船で川をゆったり行くシーンなんかは「フィッツカラルド」みたいだったんで、「フィッツカラルド」は「未来少年コナン」の元ネタなんで、そこからもジブリには結びつくかな
元店主
どうもこのバスタブ島にはモデルがあるみたいなんです。それは南ルイジアナ州のメキシコ湾に面したあたり、そこはもの凄い勢いで地盤沈下が進んでいる所らしく、でもそこにしがみついて生きている人たちが居る。彼らをモデルにしたみたいです。で、私としては、それをリアルに扱った方が良かったんじゃないか、と
マツヤマ
それは同感だね。そもそもバスタブ島の全貌がよく分からないし、あそこでの生活もよく分からないんだよ。みんなどうやって暮らしてんの?とか。そういった事が気になる。だって、サバイバルがテーマの映画だろ。ファンタジーにする事で、生きるってことの真の厳しさから逃げてる様に感じたんだよな
元店主
ファンタジーには色々な側面があると思うんですが、肯定的な側面として、現実世界では覆い隠されているものを、幻想的な設定の中で露にすることがあると思うんです。でも、やり様によっては、逆にさらに隠してしまう事になる。もちろん、ファンタジーを作る人は前者を目指すでしょうが、結果として後者になってしまう場合も多い、と。私にとって、ジブリや村上春樹は後者なんですけどね。まぁ、村上春樹は微妙な所がありますが・・・
ヤマネ
ボクはあんまり逃げてる様には思えなかったですよ!少女の視点で、ですが、人生の厳しさも喜びもうまく表現できてたんじゃないでしょうかー。母親を探しに行くシーンとか大好きです。ラストもいいんじゃないですか
マツヤマ
ふうむ。あのラストなぁ・・・オレはちょっと・・・。オレはやっぱファンタジーは苦手だ。ヒューマンドラマの方がいいよ。だから例えば・・・嵐の後、みんな政府に捕まって病院に収容されるじゃない。政府の側からしたら、保護、なんだけど。でも、みんなでそこを脱走して、グチャグチャになったバスタブ島に帰るんだけど・・・あの直前に、ウインクは一瞬、ハッシュパピーを政府に預けようとするよね。オレにはもうお前の面倒はみられない!とか言って。あれ、その通りなんだよ。もうすぐ死ぬんだし、グチャグチャになったバスタブ島で孤児になったハッシュパピーが、生きてくのは過酷すぎると思うんだよな。でも、やっぱみんなで帰ってきちゃう。あそこが、ファンタジーとヒューマンドラマの境目だったと思うね
ヤマネ
ヒューマンドラマだったら、あの後どう展開するんですか?
マツヤマ
そうだな。やっぱハッシュパピーは政府の施設に預ける。それが現実的だから。で、ウインクはひとりで島に戻って寂しく死ぬの。うん、そんな終わり方の方が好きかな
元店主
私もあの病院でのシーンには思う所がありまして・・・。あそこで、ウインクは医者から“手術をしても助からない”と言われるじゃないですか。あれ、手術をしたら助かるかも、という設定なら良かったと思うんです。それでも、近代医療を拒否して島に帰れるか、という。そういった展開なら、厳しく生き方を問われた事になると思ったんですね。あそこで、ああ、ちょい逃げてるな、と。だってあれなら、もう島に帰るという展開がミエミエじゃないですか
ヤマネ
お二人とも厳しいのが好きですねー、マゾですか!・・・いや、登場人物に厳しさを求めるから、むしろサドか・・・。ボクはそこらはあんまり気にならなかったですよ。あくまで少女の視点からの映画だと思ってるんで。で、ハッシュパピーは基本、楽天的でポジティブなんです。表情はあんまないですけど。そこに救われた感じですけどね
元店主
なるほど。うん、まぁ、お話は置いておいて、他の部分で確かにいいと思う所はあったんだよ。例えば・・・ハッシュパピーの住んでる家とか良かったよね。クルマを改造?した船、とか。ああいったガラクタでなんか色々作ってるのが、DIYで楽しい。リバタリって感じだし。映像的にもカッコいいと思った
ヤマネ
やー、あの家、良かったですね!もう、バリバリ違法建築なんですけど、ああいう無法地帯では違法建築も無問題なんだなー、と、羨ましかったです!なんかあんな感じでも、機能性一辺倒ではなく、やっぱ“型”があるんですよ。それが興味深い。あと、音楽も勿論、音も良かったですね!ガラクタが風に揺れて立てる音とか、草木のさやぐ音とか、川のせせらぎとか。特別な録音方式を使ってるのかどうか分からないですけど、凄い奥行きを感じました。
マツヤマ
確かに、画と音は良かったよ。音楽も。で、あの音楽、監督は“マイケル・ナイマンに影響を受けた”とか言ってるんだけど、オレはむしろあれはヤン・ティルセンだと思うな。「アメリ」や「グッバイレーニン」の。だから・・・“ジブリ風の映像に、アメリ風の音楽!”という風に宣伝すればもっと流行ったんじゃないか、この映画。こういった、あまり面白くないけど良い映画だと感じる、作品って、大ヒットしたりするもんなんだよ、宣伝次第で
ヤマネ
女の子も可愛いですしね!
マツヤマ
いやー、オレはちょっと・・・、あの自分を奮い立たせるためにキャー!とか叫ぶとことか、やらされてる感が強くて、苦手だった。なんか後半、妙に逞しくなる所とか
ヤマネ
いや、女の子はあんなもんですよ。うちもあんな感じです
マツヤマ
そうかぁ?・・・それとか、蟹を喰うシーンとか。みんなで、むさぼれ!むさぼれ!とか叫んで、ハッシュパピーにかぶりつかせるだろ。あれ、秘密結社の儀式みたいで気持ち悪かったよ
元店主
ははは、確かに。あれは、ちょっとわざとらしかったですよね。なんか、ワイルドであること、だけを強調してて。ほんとは、あんな厳しい所で生き抜くには、ワイルドだけではダメなんですよね。繊細さと合理性が必要
マツヤマ
そうなんだよ。あんな喰い方では無駄が多いんだよ。オレは蟹の喰い方にはうるさいから。
ヤマネ
まぁ、あれがウインクの教育方針なんでしょ。他所ん家の教育には口を出せまへん。・・・で、マツヤマさん、来月の強制起訴映画は?
マツヤマ
おう、『ある会社員』だ。韓流だな
元店主
韓流、とうとうきましたか!韓流といえば、キム・ジウンといい、パク・チャヌクといい、韓国人監督のハリウッド進出が激しいですよね、今年。まぁ、ハリウッドは常に世界中の優秀な監督を採りいれてブラッシュアップを図ってきましたから、いつかはこうなるんじゃないかと思ってましたが
マツヤマ
うん。パク・チャヌクの『イノセントガーデン』も同時に公開なんだけど、みんな絶対に観に行くだろ?だから、こっちを選んだの。この監督、イム・サンユンって人、まだ観た事ないから未知数だし。ってこれが長編デビュー作らしいね
ヤマネ
はい!では次は『ある会社員』という事で、また来月!

Comments

投稿者 ハットリケンジ : 2013年05月29日 23:19

こんばんは。
今回からお世話になります。ハットリケンジと申します。
ハッシュ・パピー観てきました。

BGMやバスタブでのシーンなんか手作りっぽさなど世界観を表す雰囲気は好きでした。が、

一言で感想を申し上げますと、
「正直、主張がどこにあるのかよくわからない映画でした。」
バスタブでの人々の風習やハッシュパピーの生活の様子を観ながら、途中まで「人間はそれぞれにあった環境がある。所詮人間はその外では上手く生きられない。日本だと東京へのあこがれ、アメリカだとニューヨークへあこがれるみたいなことはあるけれども、それは誰にでも当てはまる価値観じゃないんだよ。」ということを言いたいのかなと思って観ていましたが、どうやらそうじゃないらしい。
「なるほどそうじゃなかった。孤立するのではなく、
価値観に縛られず、外にどんどん出てみるんだ」という主張かと思えば、お母さんを探しに行った先の世界に逃げて、そこからも帰ってきてしまって。
最後はせっかく施設から脱走したのに、結局、みんなで島を後にする。。。うーん。
彼らは災害と戦い、資本主義と戦い、
紆余曲折の中であらためて自分たちのコミュニティーや生き方の尊さを知り、自分たちの生活の場、ライフスタイルを守り続けました。おしまい。じゃダメだったのでしょうか。

映画は何回も観るもの。
何回も観るに値するものが映画だと僕は思っています。
ハッシュパピー。難しかったのでDVDでもう一回観ようかなとおもいます。

ハットリケンジでした。


投稿者 元店主 : 2013年05月30日 01:16

ハットリケンジくん いらっしゃい!

いやー、強制起訴の世界へようこそ。これで約束通り、きみは強制起訴セピアだ!!

で、ハットリケンジくんのセピアデビューなので、私も軽くご挨拶。

一言で申し上げますと・・・
「たぶんストーリーをけっこう取り違えてるから、もう一回観るのはいいかもね」
という事です!

他にも色々と言いたい事はあるけれど・・・、まぁ、ひとつだけ。
ハットリくんは
>彼らは災害と戦い、資本主義と戦い、紆余曲折の中であらためて自分たちのコミュニティーや生き方の尊さを知り、自分たちの生活の場、ライフスタイルを守り続けました。おしまい。じゃダメだったのでしょうか。

と書いているけど、私は「そりゃダメだ」と答えるね。
そもそも(大)災害や資本主義の恐ろしさとは、それまでの生活の場が回復不能になり、今までのライフスタイルが維持できなくなる事なんだから、ハットリくんのこの結論はナンセンス。それこそ、悪い意味でのファンタジーだ。
この映画がその事に対して、そこまで深く踏み込めたとは思えないけれど、少なくともそのことは分かっている。私としては、もう少しリアルに踏み込んで欲しかった、分かってるなら。といった所か。

とりあえず、セピアデビューおめでとー。

投稿者 uno : 2013年06月01日 16:15

こんにちは

私もジブリっぽいと思いました。
汚染された世界でコミュニティーを作り、自分達の生活を大切にして細々と生活する。
この映画の場合は汚染ではなく、海抜上昇と嵐のせいで沈みかけている島が設定となっていますが、なんだかナウシカみたいだなって。
アニメーションで巨大なバッファローみたいなのが島を走り回る場面。ハッシュパピーの空想なんでしょうが、ナウシカのオームを連想させますし。

映画を見ている途中はウインクに違和感を感じまくってました。
途中で行方不明になってたじゃないですか。病院に行ってたんですよね。病気が治らないってのは知っていた。
ハッシュパピーのことも考えて島の外に出ればいいのにって。
でも見終わった後に思ったのが、ウインクはハッシュパピーのことを一人の人間として見ている。信頼しているが故に、自分で考えて生きていけるよう、突き放して接していたのじゃないのかなって。
島の外の怖さを知ってるが故に、島で生きていける選択肢も与えようと、島での生き方も教えた。
そしてハッシュパピーは自分で島に残ることを選択した。
ウインクが死んだ後、遺体を乗せた舟に火を放つ。父親との決別であり、ハッシュパピーがバスタブ島に残るも去るも彼女次第。
そんな強い少女に育てたウインクって凄いなって。
なんだかグッときました。

投稿者 元店主 : 2013年06月05日 15:57

うのぴへ

なるほど、うのぴもジブリっぽく感じたのか。そう思う人、けっこう居るのかもね。

>ウインクはハッシュパピーのことを一人の人間として見ている。信頼しているが故に、自分で考えて生きていけるよう、突き放して接していたのじゃないのかなって。

うーん、そうなのかな。単にウインクはハッシュパピーとの接し方が超下手だった様にも思えるのだが・・・。でも、超下手+そういった考え(突き放した方がいい)も持っていた、という事はあり得るな。

で、これ(ウインクの教育方針)は強制起訴委員の間でも一寸議論になったんだけど、マツヤマさんもヤマネくんもお子さんが居るので、やはり結論は「他所の家の教育方針には口を出せません」という事になるんだよね。
私は子供が居ないから好き勝手な事をいうけど、やっぱこの突き放して育てた方が自立心がついて良い、というスポック博士流の育児法は違うんじゃないかと。子供は小さい時は、ちゃんとスキンシップをとった方がいいと思う。だから私もウインクに、お前、だっこぐらいしてやれ!とか思ってたけど・・・でも、やっぱこういうのは一般論なんだよね。
ラストのウインクとの別れのシーンは、やっぱこの親子にはこの在り方しかなかったんだ、これで良かったのかも、と思わせるものがあったよね。

その点に反応するなんて、うのぴも結構成長したんじゃない。というのは冗談だけど。

投稿者 マツヤマ : 2013年06月06日 12:04

ようこそハットリくん

オレはハットリくんが初めてオパールに来たとき、カウンターで横に座ったイケメンです!
って言えばすぐに分かるでしょ?

ウィンクたちがコミュニティやライフスタイルを尊いとか守りたい〜というより、たまたま残った人々、目の前にある環境というだけで、やはり行き当たりばったりという感じがしたね。ハリケーンとの戦い方や蟹の食い方も幼稚だと思ったんだけど、オレがそう思うことは、ウィンクのキャラクターの作り手の意図したことではないと思う。でも、こっちに伝わらないから、あまり深くは読めなかったということもあります。
>映画は何回も観るもの。
何回も観るに値するものが映画だと僕は思っています
分かるような気がするけど、ズッシリと心に残って、再び観るには相当気合いがいる“映画”もよくあります。

次回もよろしく。

ウノピへ

実はオレ、ジブリは「トトロ」くらいしかマトモに見てないんだよね。あと、断片的に「ポニョ」くらいかな。
とくにジブリっぽいと思ったのは、終盤にワンピースを着たハッシュパピーの後ろ姿の描写とか、巨大ブタに対峙するとことかかな。

>島の外の怖さ
っていったい何?って、ちょっとイジワルかもしれないけど、外の怖さというよりは思想的な問題だと思う。けどそれを受け手に語らせるほどの深さがこの映画にあるか、という疑問はある。

あと「ウィンクの教育方針」のことだけど、ウィンクに方針が無いと思ったので、だから子育て云々を語る映画ではないな、って思ったんだけど、そう思う以前に、じゃあオレには確固とした教育方針があるのか?と聞かれると難しいところです、ハイ・・・
ただ、どんな教育方にも様々な結果があるとは思う。いずれにしても欠かせないのは「愛」だと思う。ウィンクは不器用だけど娘に対する「愛」はあったし、ハッシュパピーにとっても、この映画にとっても、そこが救いだったんじゃないかな。

次回もよろしく。

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