京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

Home > レビュー >

サブメニュー

検索


月別の過去記事


2005年10月25日(Tue)

PTU ☆☆☆★★★

Text by BABA

 真夜中に起こった事件を追う3組の警察 解決までのタイムリミットは午前4時。ババーン! 

 “PTU”とは、Police Tactical Unit=「香港警察特殊機動部隊」の略、日本の機動隊みたいなもののようですが、事件のないときも夜の街をパトロールする任務みたい。

 組織犯罪課(マル暴?)の強面刑事サァ(ラム・シュー)、威張りちらしていたところ拳銃を紛失するという不祥事を起こしてしまいます。拳銃をうばったとおぼしき愚連隊を探して茫然と徘徊中、パトロール中PTUと遭遇、隊長のホー(サイモン・ヤム)とは旧知の間柄、ホー隊長「よし! 報告は朝まで待ってやる。俺たちも一緒に探してやる」と夜の香港を茫然とうろつきまわる、一夜の物語。

 監督はジョニー・トー、怪作にして傑作『マッスルモンク』、妙な雰囲気の香港ノワール『ミッション/非常の掟』を私は見ており、何と申しましょうか、映像スタイルが独特、内容もちょっと不条理なところがあって面白い作風、他にも作品多数、ずいぶん見逃しておりますが注目したい感じ、そんなおり新作『ブレーキング・ニュース(大事件)』が京極弥生座で年末上映予定の模様、実になかなか楽しみでございます。

 ジョニー・トーのフィルモグラフィ見るに、コメディやら武侠片やら多岐なジャンルを撮られてまして、『PTU』は『ミッション』と似た雰囲気の犯罪もの、空間に妙な具合に人物を配置してカメラがゆっくり移動・ズームするのはテオ・アンゲロプロス的、無声映画のごとくセリフ少なめ、人物の動作で何事かが語られていくのはブレッソンみたい、無表情の人物を正面から撮るカット、あるいは拷問の証拠を残さないため、ブーツをぬいで蹴りまくるなど暴力シーンの比類なきリアリティは北野武のようでもあり、次々と路上駐車のクルマのウィンドウが割れていく、真夜中になぜか子供が自転車でうろついている画面にみなぎる不条理感や、妙に不安感をあおる背景音はデビッド・リンチなんかを彷彿とさせ、なんと申しますか、たいへんに気色のよい映画でございます。

 お話も奇天烈で、強面刑事サァがバナナの皮を踏んですってんころりん転んで物語が始動し、再びすってんころりん転んで終結、それまでのすったもんだは何やったんや!? と途方に暮れるに十分な結末。警察とは犯罪を取り締まるのではない。犯罪を創りあげるのだ…みたいな、『マッスルモンク』にも通じる、禅的というか東洋思想の雰囲気があって面白いのでした。よくわかりません。

 上映時間はたったの88分! それでいて短さ・物足りなさをまったく感じさせず、一本の映画を存分に堪能した感を抱かせてくれるのであった。

 ほとんど香港の街をウロウロうろつく映像で、内容が地味過ぎて製作資金がなかなか集まらずクランクインから完成まで2年を要したとか。そのためもあってかすべてのシーン、すべてのカットにジョニー・トーの美意識がつらぬかれて、メチャクチャカッコいい! といいたいところ、エレキギターによる音楽が素晴らしくもっさくて、猛烈に脱力させられるのがやっぱりカッコいいのでした。

 映像スタイルが独特ですし、お話はほんとにアホみたいですのでダメな人はダメでしょうが、亡くし物を一生懸命探して探してついに見つけたときの、アドレナリンかドーパミンかエンドルフィンか何かが、ブワッと分泌される気色よさは味わえるのではないかと存じます。バチグンのオススメ。

☆☆☆★★★(☆= 20 点・★= 5 点)

Comments

コメントしてください





※迷惑コメント防止のため、日本語全角の句読点(、。)、ひらがなを加えてください。お手数をおかけします。


※投稿ボタンの二度押しにご注意ください(少し、時間がかかります)。



ページトップ