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 Diary 2004・6月24日(THU.)

東への道

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 先日日記で、グリフィスの『東への道』が観たい、と書いたら、早速ベッチが「持つてゐたから」と言つて、『東への道』のビデオを貸してくれた。嬉しい。本日それを鑑賞する。

 この作品は、名作『散り行く花』の翌年、1920 年に作られたもので、主演は『散り行く花』と同じくリリアン・ギッシュ、助演はこれまた『散り行く花』と同じくリチャード・バーセルメス。ストーリーは、最後にはハッピーエンドとなるものの、それまでひたすらリリアン・ギッシュが可哀想な目に会ひ続ける、といふもので、グリフィスのリリアン・ギッシュに対する「愛」をヒシヒシと感じる事ができる。特にあの有名なラストシーン、リリアン・ギッシュが流氷に乗つて流されてゆくシーンはやはり圧巻で、私は伊藤晴雨を思ひ起こしてしまつた。伊藤晴雨は、有名な縛り絵師だが、彼も愛する妻を半裸で縛り上げ、雪の中に転がすこと半日、ひたすらその姿を描いたといふエピソードがあるからで、グリフィスもリリアン・ギッシュを流氷の上に転がして撮影すること 3 回に及び、あと何回か撮り直してゐたら「私は死んでゐたでせう」とリリアン・ギッシュも自伝に書いてゐる。実際、リリアン・ギッシュは凍傷になつて手を悪くしたらしいのだが、伊藤晴雨の奥さんは後に発狂したので、それに較べればマシか。なんにせよ、芸術家の愛とは恐ろしいものだ。正に「狂気の愛」。そのおかげで、我々は伊藤晴雨の妖艶・壮絶な縛り絵を堪能することができるし、フィルムに定着されたヴァージンのイデアを賛嘆することが出来るわけだが。

 映画を見終わつた後、『東への道』について書かれた文章を色んな本から拾い読みをしてゐると、またしても淀長が「間違つた」ストーリー説明をしてゐた。『散り行く花』の時もさうだつたが、どうも淀長は、頭の中に独自の映画館を持つてしまつてゐるらしい。とはいへ、それが許されるのも、また淀長なのですが。ストーリーなんて、映画にとつてそこまで重要ぢやないですからね。

 うーん、次は誰か『ローラ殺人事件』持つてゐませんか?

小川顕太郎 Original: 2004-Jun-26;
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