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 Diary 2003・8月17日(SUN.)

関西人の正体

関西人の正体』井上章一著(小学館文庫)を読む。この本は、世間一般に流布してゐる(と思はれる)関西人像を、ひっくり返したりずらしたりする、といつたものだが、まあ、かなりユルい。著者の井上章一は「邪推」の人で、この本でも邪推しまくつて関西人に対する紋切り型を揺り動かさうとしてゐるのだが、邪推であるが故に、論理性が著しく低い。かと言つて、邪推ゆゑの面白さはそれほどない。といふ訳で、本論部分はそれほど面白くないのだけれど、「あとがき」部分に、なかなか興味深い話が書いてあつた。

 井上章一がその昔、京都の某職業訓練学校で講師のアルバイトをしてゐた時のこと、そこに集まつた中卒のやんちゃな生徒たちとの圧倒的な知的レベルの差に、愕然としたといふのだ。なんと言つても、ひらがなも満足に書けない生徒が何人かゐたのだ! ……と、「!」マークを思はずつけてしまつたが、私はこの話にそれほどビックリした訳ではない。さもありなん、と興味深く頷いたのみである。それもこれも最近はタカハシくんたちに鍛へられてゐるおかげだ。あ、もちろん、タカハシくんが「ひらがなも満足に書けない」と言つてゐる訳ではない。タカハシくんは、(漢字は相当怪しいものの)ちやんと「ひらがな」を書く。が、それでも、タカハシくんの知的水準を鑑みて、その後ろに拡がる広大な(?)世界を類推することはできる。そこには、当然ひらがなも満足に書けない人たちがゐるだらう。我々が常識と信じて疑はないことを全く知らない人たちもゐるだらう。彼らの世界と我々の世界は、普通に生活してゐたらなかなか交はることがない。一生、お互ひ知らずに終はることの方が多いだらう。それでも全く構はない訳だが、私は、彼らの世界を知ることが出来て良かつたと思つてゐる。皮肉でも冗談でもなく、学ぶことが多い。色々と考へさせられる。感謝。

 映画『HERO』を観に行つたら、満席で入れず。あらら、凄い人気なんですね。雨も降つたり止んだりで、少々蒸し暑い盆の暮れでした。

小川顕太郎 Original:2003-Aug-19;