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 Diary 2001・11月4日(SUN.)

「卑劣なテロ」って
言うな!

 ああ、気分が悪い。マジで胸がむかつく。「卑劣なテロ」ってこれ以上言わんといてくれ、頼むから。

 ところで日本人にとって、戦争とはどういう風にイメージされているのであろうか。それはやはり、悲惨で暗いものではないだろうか。具体的に言えば、広島・長崎への原爆投下、大都市圏への大空襲。火の海となった街を逃げまどい、死人と負傷者を踏み分けながら阿鼻叫喚の地獄をさまよう。溶けた体や、焼き付いた影、原爆の後遺症。こういった映像を何度も見せられ、話を聞かされて、我々戦後世代の人間は育ってきたのではないか。つまりこれは言い換えれば、戦争とは民間人が大量に死ぬことだ、とイメージしているのではないか。少なくとも、私のイメージはそうである。

 ところが一方で、日本は戦争犯罪国家だ、というイメージがある。日本軍は中国などで大量の民間人を殺した、と。罪もない多くの非戦闘員の命を残虐に奪った、と。なんかこれ、おかしくないか? 戦争とは民間人が大量に死ぬ事じゃないのか? 日本の民間人も、大量に・残虐に殺されているじゃないか。なぜ民間人殺しが罪になるのか? これはおかしいと思って、色々と調べ始めたのが私が大学生の時。調べると、さまざまな事が分かった。が、上記の疑問に関して分かった事だけ言うと、少なくとも今世紀の戦争に限っていえば、戦闘員同士だけの殺し合いなんていう綺麗事はなく、民間人が大量に、本当に大量に死んでいる、という事。そして、戦勝国の民間人虐殺は罪とならず、敗戦国の民間人虐殺は罪になる、という事だ。つまり戦勝国の手前勝手という事だ。なるほど! 分かった! あー、すっきりした。…って訳ないだろう!! 私は気分が悪い。

 で、今年の 9 月 11 日の米中枢同時多発テロ事件。あれは悲惨な事件だった。それは事実だ。が、あれを「卑劣なテロ」と呼ぶ輩がいる。「文明に対する挑戦だ!」「対岸の火事のような感覚でいるのは、平和ボケしている証拠だ!」と何の臆面もなく言う輩がいる。アメリカの話ではない。この日本でだ。日本人がだ。なんか、おかしくないか?

 いや、別に私は、アメリカの手先うんぬん、という話をしているのではない。確かに、アメリカ断固支持・自衛隊の海外派兵を唱えている連中は、本人も無自覚のうちにアメリカに洗脳された売国奴かもしれない。しかし、今は、そんな副島隆彦の受け売りのような事を言っているんじゃない。私は感覚的・生理的におかしいと感じるのだ。本来なら日本人は、あの事件の犯人と目される、イスラム過激派の連中にシンパシーを感じるはずじゃないのか? だって、あれ、カミカゼアタックでしょ。日本人なら、カミカゼアタックがどういうものか、分かっているんじゃないのか。

 ところが、今回の事件では、カミカゼ特攻に肯定的な右寄りの人達まで、「あれはカミカゼ特攻なんかじゃない! 卑劣なテロだ! テロとカミカゼ特攻を一緒にするな!」と言う。何を言っているのか。いったい自分は何様のつもりなのか。アメリカ人の、アングロサクソンの、文明人の、名誉白人のつもりか。

 私は、カミカゼアタックは、日本が世界に誇れる数少ない文化のひとつだと考えている。誇りに思っている。が、それでも、カミカゼアタックは、基本的に愚かで、悲しいものなのだ。強大な力に陵辱され、ねじ伏せられかけたものが、それでも最後まで自分の矜持を捨てないために、乾坤一擲で行う、愚かで悲しくも、崇高なものなのだ。

 だから、イスラム過激派の人達がカミカゼアタックを行った時、私は茫然としながら、「ああ、彼らはそこまで追いつめられていたのか!」と、深くショックを受けたのであった。私は、知識として、戦後中東で、いかに酷いアメリカの支配が続いていたかを、朧気ながら了解していたつもりだった。しかし、ちっとも分かっていなかったのではないか。私は、完全に「平和ボケ」していたのではないか。かくなるうえは、「平和ボケ」から脱し、アメリカの中東政策に対して、いくら属国の身分とはいえ、意を決して一言いうべきだ。…・と思ったのだが、なんと! 「平和ボケ」から脱し、アメリカに協力してアフガニスタンに参戦せよ! と唱える輩が大量に出現したのだ!! なんでだ!!

 はっきり言って、私はよく分からない。私の現状認識が正しいのかどうか。間違っている可能性だって、大いにあると思う。しかし、私はあのイスラム過激派によるカミカゼアタックを「卑劣なテロ」と呼ぶことに対しては、猛烈な嫌悪感を持つ。気分が悪い。むかつく。

 いくら立派な事を言ったって、アメリカからみれば、日本のカミカゼ特攻も、キチガイの所業なんじゃないのか。こちらにどんな言い分・事情があろうと、いくら立派な信条・心掛けを持っていようと、敵さんにとっては、こちらのやる事は「卑劣で」「キチガイ」の所業なんじゃないのか。そうやって、日本は大東亜戦争時の所業に関して、様々なあらぬ誹謗中傷を浴びてきた、今も浴び続けているじゃないか。その事が悔しくないのか。その事から、「卑劣なテロ」と呼ばれるカミカゼアタックを行ったイスラム過激派の人達の、事情・心情を推し量る事が出来ないのか。せめて、思いやる事が出来ないのか。私は「判官贔屓」の心情に溺れて思考停止した、単なるボケナスか。

 私は、猛烈に気分が悪い。

小川顕太郎 Original:2001-Nov-6;