京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

HOME > diary > 01 > 0221
 Diary 2001・2月21日(WED.)

社会主義リアリズム

 いつもより 30 分ほど早く店に着いたので、ヴァージンメガストアに走って行って、K-Ci & JoJo の新作を買う。それを大音量でかけながら、店の開店準備をする。なんだか一聴しただけではピンとこない作品だった。

「トモコさん、いますかー?」と言って、やってきた女性がいる。この顔には見覚えがあるぞ、と思っていると、「覚えてます? わたしイソベです」と言われ、思い出した。かんじが変わったなあ、と彼女をしげしげと見ていると、「随分髪の毛伸びましたねえ」と言われた。かんじが変わったのはお互いさまだったか。彼女と一緒にいた男性が、クラブキングの人で、「ディクショナリイ」のサンプルを少々置かせてもらいたい、というので、承諾する。「できれば定期購読もしてね」というイソベさんに、「ははは」と笑って答える。ちなみにオイシンに「ディクショナリイ」を見せると、知らない見た事もない、と言う。まあ、オイシンは知らんわな。

 ババさんが「もう『リトルダンサー』最高ですよ! 絶対に観るべし!!」と語る。ちょっとポスターからは想像がつかない、炭坑の町を舞台にした、ケン・ローチばりの映画らしい。それは面白そうだ。イギリス映画には、こういった(って私は観ていないんですが)社会主義リアリズムの伝統があるようで、さすがは労働運動発祥の地、とか言いながら、ババさんと、トニー・リチャードソンやマイケル・ウインターボトム、ジョージ・オーウェル、パンク、マルクス、サッカー、階級闘争などについて喋っていると、何故だか話は「父性の復権」のことになり、けじめをつける事が大切だ! ユビツメ・ハラキリは素晴らしい! 君臣の義を重んじ、国学の復権を! などと訳が分からなくなる。

 家に帰って、永遠に終わりそうもない部屋の片付けをしていると、松下竜一著「豆腐屋の四季」が出てくる。これも読まずに死蔵されている本だなあ、と、パラパラとページをめくっていると、思わず引き込まれてしまった。これはまだ松下竜一が作家として名を成す前に、貧乏暮らしに喘ぎながら、日々の鬱積・湧き出る思いを短歌に叩きつけていた頃の記録だ。60 年代にはまだ分かりやすい形で日本にもあった「貧窮」というものが、熱い形でそこにはある。むうう、社会主義リアリズム。ですか。

小川顕太郎 Original:2001-Feb-23;