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 Movie Review 2005年5月16日(Mon.)

レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語

公式サイト: http://fushiawase.jp/

 幸せだった三姉弟妹を次々と襲う、最悪の不幸がはじまる。ババーン!

「子供が不幸な目にあう映画(物語)」には人を惹きつけてやまない何かがあり、『忘れられた人々』(ルイス・ブニュエル監督)、『シティ・オブ・ゴッド』(フェルナンド・メイレレス監督)、『愛を乞う人』(平山秀幸監督)など独特の魅力で私をひきつけてやみません。さてこの『レモニー・スニケット』、年端もいかぬ三人きょうだいを不幸がつぎつぎ見舞うそうで、まさしく、私のために作られた映画ではないでしょうか?

 また三人きょうだい、トンチで苦難を乗りこえると言いますから、[トンチ大好き]私のために作られた映画ではないでしょうか?

 ジム・キャリーが怪人二十面相よろしく謎の変装で登場するのは『ロリータ』ピーター・セラーズ怪演を彷彿とさせノリノリの好演、ジム・キャリー好きの私のために作られた映画ではないでしょうか?

 美術のリック・ハインリクスはティム・バートン諸作を担当、不気味かわいい風景・建物・小道具が素晴らしく、ティム・バートン好き(『ビッグ・フィッシュ』除く)私のために作られた映画ではないでしょうか?

 製作総指揮にバリー・ゾネンフェルド(『ゲット・ショーティ』『MIB』の監督)、音楽は『エリン・ブロコビッチ』『アメリカン・ビューティ』のトーマス・ニューマン、これぞ夢の布陣、まさに私のために作られた映画ではないでしょうか?

 って誰に尋ねているのかよくわかりませんが、しかるに三人きょうだいは、少々ネタバレですが莫大な遺産があると申しますから、いや、幼くして両親を亡くするのはたいへんな不幸とは存じますけど、資本主義社会における[幸福]は金銭で計量できるわけで、莫大な遺産=たいへんな幸せ、遺産が奪い取られてしまったときこそリアル[不幸のどん底]、この映三人きょうだい、これでは[不幸]とは言えず、私のために作られた映画とは言えませんなぁ。とごちました。

 そんな私的・特殊的な感想はどうでもよく、美術・特撮のクオリティはバチグン、ジュード・ロウのナレーションなど、語り口の奇妙さがなかなか素晴らしく、オープニング、ちゃらちゃらした人形アニメが始まったかと思ったら、「ストップ、ストップ! 諸君が明るく楽しい映画を見たいのなら、すぐに出て行かれることをオススメする」…とか、末妹が話す幼児語に付く字幕など人を食っており、というか、人を小馬鹿にしている感じで小気味よろしいです。

 私事でございますが私、「凝ったオープニングタイトル」が大の苦手、えんえんアニメーションが続いたり文字がひょこひょこ動き回るオープニングタイトル、例えば『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』など、いっぺんキャンといわせたろか? と思うのですが、エンディング・タイトルに凝った作品は割と好き、この『レモニー・スニケット』エンディング、ダークなテイストのアニメーションが気色よくて見応えあり、このエンディングだけでも見る価値あり、です。

 監督はブラッド・シルバーリング、『キャスパー』『シティ・オブ・エンジェル』よりずいぶんマシですけど、まあ、そんな感じです。続編ができそうな雰囲気ですが、続編ではもっとすさまじい不幸が訪れることを期待してオススメです。

☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2005-May-15;