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 Movie Review 2005年5月13日(Fri.)

シャル・ウィ・ダンス?

 幸せに飽きたら、ダンスを習おう。ババーン! 周防正行監督・役所広司主演大ヒット作を、アメリカのミラマックス社がリメイク。

 このリメイク版、筋立て・ディテイルのギャグまでオリジナルを踏襲、そのまんま感があります。それは、リメイク版作者の怠慢というより、舞台をアメリカに移し換えるにアレコレ呻吟した結果、「答えはオリジナルにあり!」と、オリジナルに立ち返ったからではなかろうか? と思いました。

 つまり『七人の侍』とそのリメイク『荒野の七人』の関係にも似て、同じ話なのに異なる輝きを放っている、みたいな?

 筋立ては同じなのに、浮かび上がってくるテーマが異なっていて、「日米の文化の違い」を色々考えさせられるのも面白ございました。

 リメイク版では、「ダンスが人生を輝かせるのだ」という一ヶの真実が見事に描き出されており、これは(私の場合は)オリジナルではあまり感じられなかったことでした。

「ダンスをするのはプロム(ハイスクールの卒業パーティ)以来」というリチャード・ギア、ダンスを学んで分相応の人生――「自分が唯一自慢できるのは、妻と家族を愛していることだけだ!」と、卒然と気づきます。サブキャラもダンスで人生を確実に輝かせ、いやー、ダンスってほんとうに素晴らしいものですね、と私は茫然と感動したのですけど、この感動、日本版からはあまり感じられなかったのはなぜか? この辺に日米文化の違いがある、と思います。

 どうやらアメリカ白人の人たちは大人になると、ダンスに興じることが少なくなるらしい。一方、日本人は古来“盆踊り”で年に一夜は必ずダンス、歳をとっても、歳をとるほど踊り狂って死ぬまでダンス、そういうダンスに対する親しみ方に大きな違いがあります。

 普段ダンスをしない中年男が「ダンスのある人生」に卒然と目ざめる、そこにリメイク版の最大の面白さ・感動があるのですなぁ、“盆踊り”をもっと大切にしたいものである。と一人ごちました。

 そんなことはどうでもいいのですが、忠実にリメイクして見事に面白い作品になるのは、周防正行の脚本に「面白さのエッセンス」がつまっているからであります。思い起こせばオリジナルはシェークスピアの「物語せんけむ」みたいな巻頭言がかかげられておりました(ちゃんと憶えてない)。『Shall we ダンス?』という物語は、様々な国、様々な時代に、様々な役者で再演され続けるシェークスピア戯曲のようなものなのかもしれませんね。適当です。

 それはともかく役所広司役はなかなかはまり役リチャード・ギア。リチャード・ギアの演技に感心したのは『八月の狂詩曲』以来です。草刈民代役のジェニファー・ロペスは、だいぶん印象は違うもののダンスシーンはさすがカッコよく、さらに! 竹中直人役に『ターミナル』の空港管理人役も記憶に新しいスタンリー・トゥッチ! 見事に難役・竹中直人を演じきり、いちばんの儲け役かと存じます。

 監督は、アイルランド物の傑作『ヒア・マイ・ソング』で長編デビュー、『マイ・フレンド・メモリー』も面白かったピーター・チェルソム。近作『セレンディピティ』はガックリでしたが、今回はだいぶん持ち直しております。

 また、脚本はダイアン・レーン主演の掘り出し物『トスカーナの休日』を監督したオードリー・ウェルズ、オリジナルとの最大の違いは、主人公の奥さんにスーザン・皿うどん、もとい、スーザン・サランドンというビッグネームを配し、奥さんがだいぶんクロースアップされたことだと思うのですけど、中年女性の感情描写の巧さは、この脚本家に負うところが大きいのかもしれません。どうでもいいですね。

 ダンス大会以降の、後半の展開はリメイク版の方がよくできている印象です。やはり、奥さんスーザン・サランドンがオリジナルよりずいぶん魅力的に描かれたので、主人公の行動がすんなり納得できるからでは? なーんてことも考えました。

 愚直なまでにオリジナルを踏襲しつつ、ダンスを通じてアングロサクソン、ラテン、黒人など異民族が友情を結ぶところはアメリカならでは。意外にもなかなかのオススメでございます。

☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2005-May-15;