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 Movie Review 2005年5月12日(Thu.)

ベルヴィル・ランデヴー

 ベルヴィルへようこそ! 最愛の孫・シャンピオンを救うため、おばあちゃんと愛犬・ブルーノの不思議な大冒険が始まる! ババーン!

 2003年度アカデミー賞2部門ノミネート…なんてことはどうでもよくて、これが、なんと申しましょうか、絵・動き・音のセンスがバチグン! 個人的には、レストラン支配人の上半身グネグネ、いばりくさるのとヘイコラするのをくり返す動きや、登場する自転車選手は人語を発せず、馬のいななきがかぶさるところに茫然と感動しました。デフォルメ、カリカチュア具合が絶品でございますね。とはいえ、絵のアクが強くグロいので、好き・嫌いは分かれるでしょう。

 そんな何も言ってないに等しい予測はどうでもよくて、シルヴァン・ショメ監督はどうやらジャック・タチがお好き、『ぼくの叔父さん』(だったかな?)のポスターがチラリと登場、『のんき大将』ワンシーンが挿入されるのみならず、セリフを少なくして、[音と動き]で面白いのか面白くないのかよくわからないギャグをえんえん繰り出し眠気を誘うあたりもジャック・タチ的センスを感じたのであった。

 そんなことより、おばあちゃんが孫シャンピオンのご機嫌取ろうと、ピアノを弾いてもダメ、犬を与えてもダメ、しかし! 自転車(三輪車)を買い与えるとシャンピオン大喜び! …時がうつろいシャンピオン成長すれば、なんと! ツール・ド・フランス出場をめざす自転車選手になっている! …と、いうあたりでギンギンにアドレナリンが吹き出る感覚を味わいました。

 自転車、しかも一昔前ツール・ド・フランス風景を描くとは! 世界最高のセンスがここにある! と一人ごちました。

 成長したシャンピオンは上半身ガリガリ、足だけむやみに太いキャラデザイン、そうそう、ロードレーサーの選手ってこんな感じですよね、そのデフォルメ具合が気色悪く且つ気色よく、さらに! 過酷な練習を終え、おばあちゃんはあれこれ器具をつかってシャンピオンをマッサージ、そののちシャンピオンは[ローラー台]でクールダウン、ダイエット食を食し、おばあちゃんは音叉をつかって、ホイールの[フレ取り]をする…かつてここまで自転車好きの心をわしづかみにする映像があったでしょうか?

 また、老犬ブルーノは、二階の隣の高架を電車が通るたび、階段を上がってわんわんわんわん吠えかかり、今日も電車に吠えかかるブルーノなのでした〜、と「今日のワンコ」で紹介されてもおかしくないくらい、かつてここまで犬のアホさと可愛さを執拗に描いた映像があったでしょうか?

 そして全国のサイクルスポーツファンのみなさんこんばんは、ツール・ド・フランス第17ステージ、数々の死闘がくり広げられた伝説のモン・バントゥー! おばあちゃんとブルーノは、救護車の屋根からシャンピオンを見守ります。この救護車が、ちゃんと[ほうき]付きなのを、全国のサイクルスポーツファンは見逃さないことでありましょう。

 と盛り上がったのも束の間、ツール・ド・フランスシーンはほんの少しでガックシなんですけど、この後、おばあちゃんのハードボイルドな活躍がくり広げられ、セリフはほとんどなく、ひたすら[絵、音、動き]に酔ったものでした。

 少々(だいぶん?)グロい、悪意すら感じるキャラデザインがアメリカ・日本のアニメとは違うところ、CGが多用されるのは同じ、気色のよい映像多数にて、自転車好きはもちろん、ジャック・タチ的フレンチ・ギャグ映画好き、アート系(?)映画好きの方にもオススメです。

☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2005-May-11;