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 Movie Review 2005年6月20日(Mon.)

戦国自衛隊1549

 消滅するのは、歴史か? 俺たちか――? ババーン! 少々ネタバレですがネタを紹介しますと、名作『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ! 戦国大合戦』の安直とも思えるパクリで、しんちゃん一家だけであれだけ面白いなら、自衛隊一ヶ中隊をタイムスリップさせれば、めちゃくちゃ面白いはず! との目論見でしょうけど、考え足らずと申さざるをえません。

 自衛隊一ヶ中隊(指揮官=鹿賀丈史)が消滅、どうやら戦国時代にタイムスリップし、歴史を改変しているらしい。日本各地に謎の「ホール」が出現、このままでは[現在]の日本は消滅してしまう! すわ一大事、居酒屋店長(江口洋介)もかり出されて、中隊救出へと向かうのであった。ババーン!

 タイムスリップして過去を変えたため、現在に大きな変化が起こる、というのは最近でも秀作『バタフライ・エフェクト』がありましたが、この『戦国自衛隊1549』の場合、基本設定に無理がありすぎるのでは…。

 よくあるタイム・パラドックスで、歴史への介入をやめさせなければ、[現在]が消滅してしまう! とおっしゃいますが、[現在]が消滅してしまえば、タイムスリップも起こらず[現在]は消滅しない。[現在]が消滅しないなら、自衛隊はタイムスリップして歴史を改変する。自衛隊が過去を改変して[現在]が消滅すれば…と堂々巡り、考え出すと眠れなくなっちゃう、と三球照代も申しておりますね。って知らん。

 そもそも、歴史が改変されるなら、人間の記憶も変わっているはず、改変後の歴史においてホールは、大昔からそこにあったものとして歴史に記されているはずでは? 人間が「謎のホール出現」を目撃・認識するのは不可能、物語に大穴があいております。

 たとえ物語が穴だらけでもアクションが面白ければなんでもいい、というか、穴が美質に転化しますが、登場人物たちがわけのわからない議論し過ぎ! 兵隊さんは議論好き? もっと単純明快・痛快アクションを見せてくれ! と、私は言いたい。

 監督は『ゴジラ×メカゴジラ』『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』の手塚昌明、特撮シーンはなかなかがんばっておりますが、ディテイルが雑で、たとえば主人公・江口洋介と北村一輝の対決シーンは、もっと盛り上がらんとアカン、と思うのですよ。江口洋介が軽々と“片手”で刀を振り回すを見るに、「真剣は もっと重いよ 知らんけど」との一句が口をついてしまいます。

 また、せっかくの無理な設定が話に生かされていないんじゃないか、というか、タイムスリップは鹿賀丈史一人だけでいいんじゃないか? 『アッパレ! 戦国鹿賀丈史』がお似合いですね。

 エンタテインメントとしてイマイチでも、ゴリゴリの政治映画になっておればよいですけど、「一ヶ中隊がタイムスリップ→歴史を改変」とは人類始まって以来の大事件・大発明なのに、すべてがアメリカ軍の管理下に置かれないのは、ファンタジーにもほどがある…。

 とはいえ、『ゴジラ ファイナルウォーズ』でも孤軍奮闘で活躍した北村一輝がここでも好演、江口洋介の前に唐突に登場するシーン、「おぬし、ただものではない!」と感じさせるのがさすがです。画面に登場した瞬間にガーン! とキャラが立つ希有な男優さんですね。

『ローレライ』のような、燃える特撮シーンがないし、役所広司も出ていないし、それでもよければどうぞ。

★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2005-Jun-20;