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 Movie Review 2004・1月10日(SAT.)

ミシェル・
ヴァイヨン

公式サイト: http://www.mv-hero.jp/

 男前の大金持ちでお祖父さんがチームのオーナー、ドライヴァーとしても超一流ミシェル・ヴァイヨンの大活躍を描きます。ババーン! フランスで 1957 年から出版され人気を博したコミックが原作とのこと。

 監督のルイ=パスカル・クヴレアは、クルマの CM を 450 本以上多数手がけてこられたそうで、原色のレーシングカーが曇天のサーキットを疾走する映像は超スタイリッシュで超かっこよく、CG も使われてますがクラッシュシーンも迫力満点、ゴワッとクルマが燃え上がるシーンは息をのむ美しさ…という具合に、断片的な映像はクルマの魅力を存分に伝えている、のですけれども無闇に眠くなるのはどうしたことでしょうか。

 やはり映画は「一スジ、二ヌケ、三ドウサ」、画面がいかに美しくとも話がタコでは如何ともしがたく、コミックが原作、しかも脚色にリュック・ベッソンが加わっているためか、『マッハ GO! GO! GO!』の映画化か? それとも『チキチキマシン猛レース』か? と思っちゃうくらい無茶な脚本、“ヴァイヨン”チームと宿敵“リーダー”チームがル・マンで争うのですけどね、オーナーを誘拐したり、タイヤがバーストするよう細工をしたり、はたまた替え玉ドライヴァーが運転したり、旦那が死んだばかりの未亡人とM・ヴァイヨンがチューしたり、の何でもありの世界、話がとことん漫画ならば映像・演出もそれ風にすればいいのに(たとえば『少林サッカー』)、クルマ CM 調の超カッコいい映像でつづられ、そういうミスマッチを楽しむ余裕があるなら止めはしません。

 って、いうか、モータースポーツ、レースはそれ自体がそもそも面白いもの、レースを徹底的にリアルに、舞台裏を含めつつドキュメンタリータッチで描けば映画もまた面白くなるはずで、その路線でスティーブ・マックィーン主演『栄光のル・マン』(1971 年)あるいは『グランプリ』(1967 年、ジョン・フランケンハイマー監督)は大いなる成功を収めたのですが、『ミシェル・ヴァイヨン』あるいはスタローン主演『ドリブン』、話を作りすぎて肝心かなめレースの面白さを削いでしまって見事大クラッーーシュ! おおおーっとホセバ・ベロキ落車!! みたいな。

 って、いうか、ネタバレですけど、ヴァイヨン・チームは見事ル・マンに優勝、わーいわーいと大喜びの大団円、しかし、お前らこっそり登録外ドライヴァーを走らせるという明確なルール違反で優勝して嬉しいのか? 色々事情はありますけど、ちゃんとルールを守って参戦した他のチームに申し訳ないと思わないのか? というか、実際のル・マンに参加して撮影されたらしいですが、『ミシェル・ヴァイヨン』はル・マンの栄光を汚している! と私は憤懣やるかたないのです。

 って、そもそもモータースポーツに興味がない私がいう筋合いではないですね。モータースポーツ好きしか面白く見られない題材なのに、心底モータースポーツ好きがご覧になったら怒り出しやしないかと冷や冷やです、ってそういう方は「ふふん、どうせ映画でしょ?」と大人な態度を取られるわけで、しかし大人は話の幼稚さに憤慨されるはず、ああ、一体誰にオススメすればいいのか? って CM 監督ならもっとターゲットを絞るべき、しかし大作なので絞れなかったのかも? と愚考をめぐらせつつ筆を置きます。

★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-Jan-8;

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