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 Movie Review 2003・3月7日(FRI.)

ホワイト・
オランダー

 …とは、よくわからない題名ですが、“白いキョウチクトウ”のことです。つまり「そのキョウチクトウって誰のや?」と問われれば「オラんだー」と答えるべきなのである。と、愉快な駄洒落はおいといて、では“白いキョウチクトウ”とは何か? 「美しいけれど毒がある」ということみたいですけどそんなことはどうでもよく、ミッシェル・ファイファー待望の新作、『素晴らしき日』『ディープ・エンド・オブ・オーシャン』『ストーリー・オブ・ラブ』など、ミッシェル・ファイファー印の「家族再生もの」を年に一本見ないと気が済まない人向けに、こっそり美松映劇で公開です。

 今回、M・ファイファー演じるは、メチャ痛いお母さん。ロサンゼルス在住、映画雑誌の出版社勤務、しかも自称アーティスト! 母一人、娘一人の母子家庭ですが、小学生の娘が「お母さん、今日は父母懇談会よ…忘れてる?」と問えば、母「SHIT! あらあら、ごめんごめん。モニクの個展のオープニングに行かなきゃなんないの。…先生と話しても時間の無駄だしね!」…ガーン。おいおい、娘、グレるで。

 物語は、「あんなキッツイおかんと暮らしていたなんて…」と娘役の新人アリソン・ローマンの回想で進行。やがて母は第一級殺人を犯し終身刑で服役。娘アリソンは、里子に出されますが、すったもんだがあって、計三組の里親を転々とするのであった。ババーン!

 で、M・ファイファーに加え、最初の里親はロビン・ライト・ペン、次がレニ・ゼルウィガー、という豪華女優共演陣、最後の里親はスヴェトラーナ・エフレモーヴァ、というよく知らない人ですけど、『家族八景』ならぬ「家族三景」の様相を呈し、様々な階層の様々な家族の姿を描き出すのでした。アリソンは各家庭でそれなりに順応し、ファッションも里親ごとに激しく変化するですが、刑務所の M ・ファイファーに面会に行くたびに「誰にも心を許したらアカン!」と吹き込まれて揺れ動きます。信心深い里親ライト・ペンの影響で振興宗教の洗礼を受けたら、

M・ファイファー
「あんたー、その首に下げてる十字架何や?」
アリソン
「…えっ。ただの十字架やけど…」
M・ファイファー
「…あんたを宗教にはまるような人間に育てた憶えないで!」

 …なんたる言いぐさ! 勝手に人を殺し、勝手に刑務所に入っておきながらおそるべき独善ぶりです。ってか、かなりムカつくキャラクターなんですけど。さらに、刑務所にいながらにして人心を操作し、人を傷つける才能にあふれる…って、「お前はレクター博士か!?」と思わずツッコミを入れたくなる役柄です。というか、自称アーティストの痛さ、というか、「長い物には巻かれろ」という古来よりの知恵を嫌い、自分は「翔んでる女」だと思っているバカ親の、はた迷惑ぶりを見事に暴いた作品と言えましょう。って、そんなことより、M・ファイファー、ライト・ペン、ゼルウィガーの演技合戦が見ものでございます。アリソンの母親の座を狙って火花を散らす感じで結構恐い。

 で、アリソンが結局、ファイファーの影響を振り切って自立、母親を一ヶの淋しい人間として愛せるようになるまで、の母娘の愛憎、というか、「親がアーティストでも子は育つ」という真理をシミジミと描き、おいおい泣かせてくれはしませんが、というか、ファイファーの再審をめぐるアレコレがよくわからず腰砕け感が漂いますが、見ごたえあり。かも? ミッシェル・ファイファー好きの方は、必見のオススメ。

☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA

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