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 Movie Review 2003・3月10日(MON.)

ロード・
オブ・ザ・リング
二つの塔

 各 3 時間の 3 部作を同時に撮影し、順次完成させて公開、という荒技、待望第 2 部『二つの塔』がいよいよ公開! ババーン! …ですが、好評を持って迎えられた前作にノリ切れなかった私ですので、「まあ、これ見ておかないと次が見れないしなー、一応、ピーター・ジャクソンだしなー」みたいなー、消極的気分で鑑賞に臨んだところ、前作で物足りなく感じていた部分が補われており面白かった。

 前作での不満は、まずキャラ立ちが弱いと感じられた点で、原作のファンであればキャラ立ちなくとも即座にキャラを把握できるのでしょうが、原作未読の私はそれもかなわず、いまいち区別が判然とせぬ旅の仲間ご一行が連れ立ってロールプレイングゲームよろしくぞろぞろぞろぞろ行進する光景に興を削がれることはなはだしく、やはり『七人の侍』『荒野の七人』が示すように、主人公集団は 7 人が限度なんでしょうかねー? と適当な考えに囚われたのですが、今回、旅の仲間は 3 組に分断されそれぞれの物語がつむがれ、キャラそれぞれにキッチリと焦点が絞られ見せ場もあって、モアベターなのであった。

 次に前作での不満といえば、コンピュータグラフィックスが多用されていることで、ニュージーランドの雄大な大自然に比べ、CG がショボくて、シオシオと興奮萎んでヤレヤレだったのですが、今回、CG のクオリティが格段に上がっていて、アンチ CG な私も大丈夫でした。というか、数少ない「正しく CG が使われている」映画なのであった。CG も多用されていますが、ミニチュアもふんだんに使われていて、CG に頼り切っていない点を評価したい。というか、やっぱりミニチュアはええなあ、と、ごちた。

 そういう CG、ミニチュアがふんだんに使われた映像が素晴らしく、クライマックスの籠城戦は『クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶアッパレ! 戦国大合戦』を凌駕するか? と思わせるほど迫力満点、久方ぶりに“映画のスペクタクル”を堪能したのでした。いやほんと、もんの凄い映像です。『隠し砦の三悪人』の冒頭を彷彿とさせるくらい、と申しましょうか。

 そうそう CG といえば、CG キャラ、スミアゴルの分裂症気味、多重人格的、というか、一人ボケツッコミ演技がこれまた素晴らしく、というか、かなり気色悪くて可愛くて、ピーター・ジャクソンの悪趣味が炸裂したかのようです。ともかく、ガーデニング好きのホビット族はイギリス人、旅の仲間はすなわちヨーロッパ共同体、悪の軍団はといえば、イスラム+黒人なのですが(適当)、では我々アジア人は? そう、善と悪の間で揺れ動く貧相・狡猾なスミアゴルこそ、日本人が素直に感情移入できるキャラではないでしょうか。立場は弱いですが、日本人も旅の仲間にやっと加えてもらえたことを素直に喜びたい。このスミアゴルの他、生きた樹=エント族や、黒い騎手が乗るドラゴンなどクリーチャーのデザインが秀逸でございます。

 しかし不満がないではなく、やはり物語を語るのに精一杯の駆け足な印象があり、籠城戦に至る過程も何がどうなっているのかよくわからなかったりして、そういうのは前作の記憶が鮮明ならば大丈夫なのでしょうかね? 前作のあらすじに一切触れないのはいさぎがよいのですけれど、昨日見た映画の話も思い出せない老人には不親切です。が、前作を忘れていても、映像・特撮が凄いので退屈しないかもしれない、かもしれません。知らん。オススメ。

☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA

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