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 Movie Review 2002・11月18日(MON.)

至福のとき

『活きる』『あの子を探して』『初恋のきた道』と、バチグン作連発のチャン・イーモウ(張藝謀)監督の新作。いち早く、「アジア映画祭 2002」でのプレミア上映を見たのですが、今回もバチグンでした。

 継母に疎まれている、目の見えない薄幸の少女と、失業者中年オヤジの交流を描きます。ストーリーはシンプルで、ほのぼのとした笑いのうちに進行し、やがて圧倒的な感動を迎える。むむむ。また泣かされてしまいましたー。

 失業中・中年オヤジ/チャオは、見合い相手に見栄をはって「自分は旅館の社長である」と嘘を言ったがために、盲目少女ウー・インを雇わざるをえないハメに陥る。チャオは失業者仲間と一計を案じ、閉鎖工場に「マッサージ室」を設置、ウー・インをマッサージ師として雇い、失業者仲間を客として送り入れる。ウー・インは、「働いて報酬を得る」喜びに、初めての笑顔を見せる。この笑顔がこれまた、なんというか、バチグン。

 ほのぼのとした話の裏に中国の現実が見て取れます。廃工場での「マッサージ屋ごっこ」は、資本主義に包囲された中国経済であり、「マッサージ屋ごっこ」同様、閉じられた経済は破綻せざるを得ない。中国は「市場経済を導入し、他国の資本を受け入れての社会主義建設」に乗り出しますが、それは前人未踏の領域であり、そのまま父親探しの旅に出る盲目の少女に他ならないのであった。チャン・イーモウは、社会主義には無縁のはずの「失業者」の悲哀を描き、中国の現体制を巧みに批判します。この映画が中国で公開されている、しかし米国資本を取り入れて製作されたものである、という地点から中国の現在を読み解くことが可能なのである。適当。

 そんなことはどうでもよくて、ウー・インを演じたドン・ジエ(董潔)は、『初恋のきた道』のチャン・ツィーイー(章子怡)や昔の奥さんコン・リー(鞏俐)とよく似た顔立ちで、チャン・イーモウの趣味炸裂ですね。…って、そんなことはどうでもいい。「中華迷/中国語圏映画事情」によると、チャン・イーモウは次回作に、『グリーン・ディステニー』とはちょっと違ったタイプの、『グラディエイター』みたいな武侠映画を撮る予定とか。乞うご期待であります。

 ともかく、『あの子を探して』『初恋のきた道』に続く「しあわせ三部作 完結編」…とはちゃんちゃらおかしいですが、バチグンのオススメ。

☆☆☆★★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Nov-18;

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