京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

Home > Reviews > 00 > 0323
Movie Review 2000・3月23日(THU.)

マグノリア

『ブギーナイツ』でイイトコ突いたポール・トーマス・アンダースン監督の新作。29 歳にして…、ということで「天才」呼ばわりされているが「天才」のレッテルを貼って何かがおもしろくなるわけでもなかろうに、と思う。むしろ、若造に撮らせることができるアメリカ映画の底力をこそ論じるべきである。たいしたヤツとは思うけど。

 映画の構造としては、監督もパンフ掲載のインタビューで触れているようにロバート・アルトマンの『ショートカッツ』に酷似。複数の男女が少しずつ関わりをもちながらおのおのの物語を語り、どうやって結論づけるかハラハラさせといて…、というものだ。レイモンド・カーヴァーの練り上げられた短編を原作とする『ショートカッツ』はそれぞれの絶望的なエピソードに引きつけられたが、『マグノリア』は監督のオリジナル脚本で、エピソードごとにアンバランスが出ている、と思う。トム・クルーズのナンパ講座やジョン・C ・ライリーの小市民警官の話、天才少年の悲劇二題は強烈におもしろいが、他はどうでもいい感じ。

 特に冒頭は、これが『ショートカッツ』様のスタイルであることを知らなかったので、無関係な事象がサッサカ提示され、何が起こっているかさっぱりわからず、展開は早いのに「いつになったら本論に入るのか?」と退屈。また、『ショートカッツ』は並列して語ることにより、ドライさを際立てていたが、『マグノリア』の場合はヌルさを増していると思う。

 冒頭、「偶然」に関する魅力的な 3 つの話が紹介される。「おお、これは『偶然』に関する映画か!」と色めき立ったが、以降、提示される「偶然」は、小さな村社会――例えば京都――では、さして珍しいことでなく、「必然」の枠内に収まるものだろう。誰それが誰かれと知り合いで、実はどうこう、道ですれちがったり、なんてナンボでもあるだろう。この辺は監督の若さが裏目に出たか。若いウチはなんでも驚くだろうが、ジジイになれば何が起こっても不思議でもなんでもないのである。驚きを忘れたらジジイ、という説もあるけど。すいません。

 若くして思うままに映画を作る立場に立った監督が、過剰に描きたいモノを詰め込んだ、という印象で、ちょっとジョン・アーヴィング、スティーヴン・キングらの長編小説の味わいがあり、喜ぶ方もおられると思うが、用件は手短に、と言いたい。細かくカットを割ったり、グイグイカメラを動かしたり、という演出は 80 分くらいの上映時間向きでは? と思う。疲れるし。

 とはいえ、個々の場面はカッコいいので、オススメ。

BABA Original: 2000-Mar-23;

レビュー目次

Amazon.co.jp アソシエイト