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Movie Review 2000・1月6日(THU.)

ゴージャス

 最高の映画を作り続けるジャッキー・チェンがラブコメに挑戦だ。香港、台湾映画には、『君さえいれば 金枝玉葉』などスクリューボール・コメディ風ラブコメの潮流があり、そういう流れとジャッキー映画の幸福な融合というべき映画であろう。

 スクリューボール・コメディというものは、ゲイセクシャルや婚前交渉、不倫など、ムキムキに描くことがタブーとされている物事を、常軌を逸したキャラクター達に語らせることによって検閲をかいくぐる戦略のひとつである。よって性描写に関する規制が強い、倫理に縛られる国・時代においてのみ成立する。今日のアメリカや日本ではなかなか成立しえないジャンルなのであるが、香港・台湾ではこれからしばらくは良質のラブコメが作られ続けるはず。

 筋立てはというと…。目が離れすぎの山口百恵といった風情のスー・チーはイルカとしゃべったりする台湾の夢見る少女。流れ着いたメッセージ・イン・ア・ボトルを拾って香港へ渡る。『ブエノスアイレス』などのトニー・レオンと知り合って、どうこうしているうちにジャッキーとも知り合って…と悪人が一人も登場しない偽善的な物語が展開。

 今回ジャッキーは大金持ちの実業家。「似合わねー!」とツッコミを入れたくなるところで、実際妙チクリンな日本語は『ライジング・サン』のショーン・コネリー並に頭の痛いものだ。アクションには期待できなさそうであるが、格闘技が趣味という「そんなヤツぁおらんやろ」な設定だ。ライヴァルの実業家が、ジャッキーをギャフンと言わせるためだけに格闘家と闘わせるという無理矢理な展開であるが、全体のトーンがスクリューボールだから違和感は余りない。っていうか、ジャッキーのアクションが見たいから細かいところには目をつぶってしまうんだけどね。

 人体が生み出すアクションを映画に定着させるには、ミュージカルの手法が最適だ。カメラは据えっぱなし、なるだけ全身をとらえ、編集でごまかすようなコトはしない方が良い。ヴィンセント・コク監督はよくわかっているようで、ヴァン・ダム似の格闘家とジャッキーとの二度にわたるバトルが素晴らしい。勝負を決する要因も心あたたまるもので、ジャッキーならでは、という感じ。

 とにかく、ジャッキー最高! ラブコメも悪くないぜ! って言うか、ジャッキーも 45 歳だからいつまでも飛んだり跳ねたりしてられんワケで、そういうジャッキーが非アクション映画への端緒を開いた作品として映画史が記憶すべき作品であろう。ジジイになっても飛んだり跳ねたりしてて欲しいんだけどね。トニー・レオンも良いぞ!

BABA Original: 2000-Jan-06;

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