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Movie Review 2000・1月4日(TUE.)

ブレア・ウィッチ・
 プロジェクト

公式サイト: http://www.bwp-jp.com/

 この映画の惹句によると…

1994 年 10 月、メリーランド州バーキッツビルの森周辺でドキュメンタリーを撮影していた映画学科の 3 人が、行方を絶った。1 年後、彼らのフィルムだけが発見される。

 …ということで、この映画は、捜索隊が発見したという設定のフィルムを、編集して公開したという偽のドキュメンタリー形式を取っている。『ありふれた事件』、浅野忠信主演の『FOCUS』、古くは『食人族』などと同様の趣向であるが、本来映画の中に盛り込んで一本の映画として完成させるべきフィルム発見の過程やブレアの森にまつわる怪談話を映画以外のメディア――テレヴィの特番や WEB サイト、書籍などで公開し、映画はそれら虚構の世界を構築するひとつの要素にしかしていない、というのが『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の特異な点だ。

 よって一定の時間を費やしてメディアを追っていかないと、ちっとも面白くないということになっている。ぢゃあ、それなりに予備知識を詰め込んで映画を見たとしても、どれだけ面白いかはハナハダ疑問。ヒマつぶしにはなるだろうけど。例によって「はまる」方もたくさんおられましょうが、ご自由にどうぞ。貧乏ヒマなしのオレ様には無縁の世界だ。

 キネマ旬報によると、約 6 万ドルで制作、1 億 7 千万ドルの興行収入を上げたそうで、なんと 2840 倍の利益率だ。非常に効率の良い映画と言われた『フル・モンティ』ですら約 59 倍だから、いかに桁はずれのコスト・パフォーマンスの良さかがわかる。低予算で条件が厳しく、例えおもしろい映画を作ることができなくても、ひょっとしたら大儲けできるかもしれないという幻想を、世の映画製作を志す者に与えたことは想像に難くない。恐ろしいことです。並み居るメジャー大作をコケにした、という点では痛快であるが。

 一本の映画として見た場合どうかというと、頭の悪そうな映画学科の学生が、素人ばかりのメンバーでキャンプして遭難してしまい、夜中に幻聴に悩まされてぎゃあぎゃあ喚いて逃げ回るという映画。思わせぶりな演出が続くが、怪異がヘボくていけません。映画学科の学生ってボンクラばっかりなのかなあ? とにかく行動、言動ともにアホ過ぎ。アホが怖がっても、こちらは笑うしかない。

 ホラーとして見た場合はどうか? 恐怖を盛り上げるためには「今、この怪異を目撃しているのは誰か?」という視点をハッキリさせる必要がある。語り手をはっきりさせておくのは怪談に信憑性をもたらす上での必要条件だ。その点この映画は常に登場人物の手持ちカメラによって物語が進行するから、一般的なホラーがつまづきがちな点をクリアしている。とりあえず臨場感はあるから恐がり屋さんにはオススメだ。

 残念なのは、2 台のカメラで撮影、という設定にしてしまったので、妙な編集が入り込んだことだ。1 台のカメラで、あざとい編集をせずにフィルムをゴリッと提示していれば、もう少しマシになったはずだ。

 要は、見る側が一定気分を盛り上げなければてんでつまらない、お化け屋敷みたいな映画なのである。雰囲気に呑まれやすい人は楽しめるだろう。『グレート・ハンティング』などの、扇情的な宣伝で観客をだまくらかす映画の系譜にも含まれるが、ワンシーンたりともショッキングな映像がないのは、客をなめるにも程があると思うし、ショボい映像を延々見せられるのには参った。みなさんはいかがでした?

BABA Original: 2000-Jan-04;

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