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Movie Review 2000・1月7日(FRI.)

こちら葛飾区亀有公園前派出所
 THE MOVIE

 原作は少年ジャンプの、1100 回を越える連載回数、コミックスも 117 巻を数える超長寿マンガ。人間でいえば 1000 歳を越えている(ってよくわかりませんが)。人気がなければ物語の途中でも容赦なく「第一部 完」とかでブチ切られる(決して第二部が始まることはない)少年ジャンプにあって、この長期連載は驚異的であろう。

 少年ジャンプの元編集長のインタビュー記事などを読むと、ジャンプでは『こち亀』がひとつの基準となっていて、ある連載が『こち亀』よりページが後ろにくるとそろそろ打ち切りの危険あり、ジャンプの中で『こち亀』がページの前の方にあるときは、全体のクオリティが下がっていると判断できる、などというようなことが語られていた。なるほど。

 それはさておき、この『こち亀』がテレヴィアニメ化され人気を博し、劇場用としてグレードアップして登場だ。ボクは、テレヴィは見たことないが、マンガの方はとりあえず読んでいるのでボルボ 13 、バイクから降りると性格が豹変する本田巡査などのキャラクターが唐突に登場してもオッケーだ。

 特定企業だけ狙う爆弾魔と、それを追う女性 FBI 捜査官と両津勘吉、という『ダイ・ハード』風の物語が展開。デンスケ人形、勝鬨橋などの『こち亀』的ディテイルが散見できる。

 しかし、いくつになってもジャンプなんか読んでるボンクラ(筆者のことです)としては、もっともっとディテイルを作りこんでマニアックに突っ走ってほしいところである。主たるターゲットはお子様ということでマニア度を弛めているように見受けられる。いつの時代も、子どもの方がよーっぽどマニアックなのでこんなヌルい描写では誰も喜ばないと思うのだが、映画の製作者たちはその辺わかっているのだろうか? 両津勘吉のマニアぶりには常に子どもが賛嘆の声をあげ、大人どもはチンプンカンプンというのが原作コミックによくあるパターンだ。この映画程度の描き込みで融通のきかない子どもを納得させるのは無理というものだろう。

 葛飾周辺、銀座などよくロケハンされており、日常風景にハリアーなどの近代兵器やフェラーリが現れる『こち亀』的おもしろさもないこともないが、やはりヌルい。

 さらに許しがたいのは両津勘吉のヌルいキャラクター造形だ。原作においても年をおう毎にヌルさを増しているが、映画の場合更に悪逆非道さが薄められている。車寅次郎も『男はつらいよ』第一作においてはただのキチガイだったのが、いつの間にか下町の人情に取り込まれ「いい人」になり果ててしまった。葛飾柴又には人間の毒気を抜く力でも備わっているのか?

 滑り出しの銀行の防犯訓練は快調だったが、続かず。残念。徹底的にマニアックに走った『こち亀』をボクは見たい。とはいえ、ラサール石井、小松正夫、伊藤四郎、ともさかりえなどの声優陳は良いです。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』よりは家族でそろって楽しめるのでオススメ。

BABA Original: 2000-Jan-07;

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