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2005年11月18日(Fri)

ティム・バートンのコープス・ブライド ☆☆☆☆

Text by BABA

 10月 あの世にハネムーン。ババーン! 『チャーリーとチョコレート工場』大ヒット中ティム・バートンの人形アニメでございます。して、これまた素晴らしいのでありました。

 唐突に余談ですが、『シン・シティ』のクレジットをめぐって、ロバート・ロドリゲス監督がアメリカ監督組合DGAを脱退した、という話が伝えられておりました。監督名を二人クレジットすることは、DGAの「監督名は一人だけ」規定に反するため、フランク・ミラーとのダブルクレジットにこだわったロバート・ロドリゲスは、かの会を脱退した…という男気あふれる話。

 DGAの言い分は「創造上の決定やヴィジョン、主導権、政策上の問題などで、共同監督というのは現実的に有り得ない」http://www.enpitu.ne.jp/usr4/bin/month?id=47635&pg=200404 2004年04月15日)だそうです。へー。

 この『コープス・ブライド』、ティム・バートンとマイク・ジョンソン監督名二人でクレジットされており、ということはティム・バートンもDGAを脱退したのでしょうか?(あるいは最初から入っていなかったとか?)

 と、DGAhttp://www.dga.org/のサイトの「MEMBERS DIRECTORY」でTim Burtonを検索するとちゃんと「Timothy W.BURTON」(本名)で出てくるじゃん! どないやねん! 一方Robert Rodriguezで検索すると、確かに出てきません。

 つまり、DGAはティム・バートンを依怙贔屓している。またはロドリゲスを迫害している、…と推測。世界はそれをダブルスタンダードと呼ぶんだぜ。果たしてことの真相はいかに! 気になって夜も眠れません。

 って、そんなことはまったくどうでもいいのですが、この『コープス・ブライド』人形アニメの技術が素晴らしく進歩、一見「CGか?」と思うくらいで「それなら最初からCGでやればいいのに…」というのは言わない約束、「人形」のアナログ・アナクロな肌触りは味がありますなぁ、とごちつつパンフレットを読むと、今回は顔の表情を自在に作れるアニマトロクス系新技術導入、またHDレコーディングで撮影、結果をすぐ確認できた、など色々進歩がありつつ、基本は昔ながらの人形アニメ、その名人芸・職人芸のすさまじさに開いた口がふさがらないことでした。

 ことに、コープス・ブライドがケープをたなびかせるシーン、とんでもなくもの凄いことになっている…と、その美しさに大いに胸をうたれました。

 ところで例によってティム・バートンの思想・人生観・哲学・作家性を存分に反映した作品になっております。

 映画の中の「リアルワールド」は、ほとんどモノクロームに近い陰鬱な色調、転じて「死者の国」は色鮮やかで、「お化けの学校は試験も何にもない! みんなで歌おう、げげげのげ」的幸福感があふれ、すなわちティム・バートンにとって現実は憂鬱なもの、一方「死者の国」、つまり彼が子供の頃より親しんだなゴス(goth)・ワールドは、実にいごこちの良い世界なのでありましょう。

 ところが! 映画の主人公ヴィクター、「現実の婚約者ヴィクトリアがなかなかイイ!!」「灰色の現実もなかなか捨てたものではない!」と、ヴィクトリアとの結婚を熱望します。ここが今回の面白いところで、親が決めた婚約者を本人も気に入ったなら万事オッケー、映画にするような葛藤は生まれようもないのですが、映画はティム・バートンの、ゴス世界への未練たらたらと、訣別の決意を描くのであった。

 ネタバレですが、ゴス世界の住人コープス・ブライドが、そんなヴィクターを「リアルワールドでお幸せに!」と見送る結末で、涙ながらにその決意を告げるコープス・ブライドの胸中は、いかばかりか? 私も茫然と涙しつつ、『ビッグ・フィッシュ』『チャーリーとチョコレート工場』よりズッと、物語の完成度が上がっているなぁ、映像の完成度もすさまじいことになっているし、音楽も素晴らしいし、ティム・バートン最高! と一人ごちたのでした。

 とはいえ、最近のそんなティム・バートンの現実路線に少々の幻滅を感じている私がいる。真相は謎なれど、ロバート・ロドリゲスはDGAを脱退したのに、ティム・バートンは脱退していない。そんなところが現在のティム・バートンのポジションなのでしょうね。って、よくわかりません。

 ともかく、間髪を入れずティム・バートン作品を堪能できる私は世界一の幸せ者です。眼福、眼福。バチグンのオススメ。

☆☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/corpsebride/

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