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 Movie Review 2002・10月23日(WED.)

xXx トリプル X

 ウェルカム・トゥ・ザンダー・ゾーン!! 現代の先鋭化するテロ組織には、普通のスパイでは歯が立ちませぬ。そこで国家安全保障局(NSA)のサミュエル・L ・ジャクソンは一計を案じ、「毒蛇の巣には、毒蛇だ!」と目をつけたのが「トリプル X」ことザンダー・ケイジこと、ヴィン・ディーゼルである! ババーン!

 …って、ただのアホアホ・アクション物と思ってはいけませんよ。筋肉バカに見えるが実はお利口なヴィン・ディーゼルが製作総指揮も担当し、久々の「それなりによくできたアクション映画」なのである! ババーン! 主人公ザンダーは、スノーボード、スカイ・ダイヴィング、モトクロスなど、超危険なスタントをサイトで公開するアンダーグラウンドのネットアイドルです。スタローンやシュワルツネガーのように、「アメリカン・ウェイ」「正義」「家族」のために戦うのではない。ただ「生きていることの実感」を得んがために自らを危険にさらすのである! ババーン! …って、やっぱりアホですね。

 いや、この映画にはトンチがある。近頃トンチ・パワーが衰えがちな『007』に対する批判でもある。初期ショーン・コネリーのように、トンチを効かせまくるのが素晴らしいです。『スパイ・キッズ 2』で「スパイはガジェット(小道具)が命よ!」とのセリフがありましたが、この『トリプル X』もまたガジェット満載、かつトンチも満載。トンチ+ガジェット=これ最強。「スパイはトンチこそが命!」と私は言いたい。

 さらにショーン・コネリーあるいはダーティ・ハリーのように「誰も聞いていないはずなのに、ついついコメントしてしまう癖」があるのもいいですね。バギューンと人を殺した後に、死人に向かってポロッと警句を発する。誰も聞いてへんっちゅうねん。つまり、「オレってキマってる?」とつい気取ってしまう変な人=性格異常者/性格破綻者なんですね。ところどころ、不条理感漂うシーンもあって、私好み。

 また、ザンダーを手なづけるのがサミュエル・L ・ジャクソンというのもグーです。黒人サミュエルにとっては、好きこのんで危険を求めるヤツは、ただの「甘ちゃん」でしかない。黒人は、道を歩いているだけで白人警官に殴り殺される危険があるんだぜメーン。スリルに満ちた日常。しかもサミュエルは、顔に大きな傷があるスカーフェイス。こういう黒人には、ザンダーですら勝てないのである。ザンダーの、「反体制」でありながら「体制」に協力するという矛盾が、黒人サミュエルを配置することによって見事に解決されているのである。

 パンク野郎も 3 文字政府機関(FBI 、CIA 、NSA)に反発している場合ではない。いかに挙国一致体制を築くかという、9 ・11 同時多発テロ後のアメリカの課題に対する試論なのである。

 そんなことはどうでもよくて、監督は『ワイルド・スピード』でもヴィン・ディーゼルと組んだロブ・コーエン。まさか、こんなオモロい映画を作るとは。CG もガンガン使われますが、基本は命がけスタント。やはりアクションはこうでなくては。

『ピッチ・ブラック』から注目してきたヴィン・ディーゼル、ついにブレイク、さぞお母さんもお喜びでしょう。続編の製作も 2004 年公開で決定しているゾ。とにかくウェルカム・トゥ・ザンダー・ゾーン!! バチグンのオススメ。

☆☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Jan-23;

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