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 Movie Review 2002・7月11日(THU.)

バーバー

 前作『オー! ブラザー』でも圧倒的な完成度を見せたジョエル & イーサン・コーエン兄弟の新作。『ババ』じゃないです『バーバー』です。そんなことはどうでもよく、今回は、ビリー・ボブ・ソーントンを主演に、ハードボイルドかつ、主人公がのっぴきならないところにはまり込んでいくのはフィルム・ノワール的であり、コーエン兄弟の映画的教養があふれかえって、丹念に丁寧に作り込まれた傑作に仕上がっております。

 名手ロジャー・ディーキンスによる、微妙に色彩が感じられるモノクローム撮影がとらえるビリー・ボブ――「髪の毛はどうして生えて来るのだろう?」と深刻に悩みつつ、まるで全米が滅んでしまったかの如き仏頂面で髪の毛を切り続ける床屋の親父(つねにタバコをくわえたまま)――の表情が圧倒的に素晴らしい! なんでも奥さんのアンジェリーナ・ジョリーも「今までで最高のビリー・ボブ!」と絶賛したとか。

 ビリー・ボブは圧倒的に無口な男で、たまに口を開くのは真実を述べるときのみです。対して周囲のセールスマン、デパート支配人、弁護士らのベラベラしゃべってナンボのキャラは、ウソしか言わない。コーエン兄弟の、言葉に対する圧倒的なる不信がにじみ出ます。無口なままで押し通せばビリー・ボブも床屋人生をまっとうできたはずが、要らぬことをしゃべったがために破滅へと突き進んでいく、と。語り得ぬものについては、沈黙せねばならないのですね。…ってよくわかりませんが。

 ともかく映像が素晴らしい、と。こう、ビリー・ボブが、女房の不倫相手にググッとガラス窓に首を絞められつつ頭を押さえつけられ、ピシピシッとガラスに亀裂が入るシーンなど、ディテイルの美しさは見事。

 この映画のビリー・ボブのハードボイルドぶりはただごとではなく、ハンフリー・ボガードもビックリ。『ゴーストワールド』のレベッカことスカーレット・ヨハンスンも出ておりますのでバチグンのオススメ。コーエン兄弟の新作がほぼ毎年見られる幸せをかみしめつつ。京都朝日シネマで上映中。

☆☆☆★★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Jul-11;

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