京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

Home > Reviews > 02 > 0710
 Movie Review 2002・7月10日(WED.)

ワンス &
フォーエバー

公式サイト: http://www.once-jp.com/

 ベトナムでの戦争においては、密林での作戦行動が重要となる。よって最適な戦術はヘリコプターを中心とした「サーチ & デストロイ」だ! との分析のもと、歴戦の勇士ハル・ムーア(メル・ギブソン)にヘリコ部隊を創設せよ、との命令が下ります。ベトナム情勢は悪化、ついにハル・ムーア率いる第一騎兵師団第 7 航空騎兵連隊(長い)の戦闘が始まる! ババーン!

 これまでベトナム戦争ものと違い、「今回、初めてベトナム軍側も描かれた」と話題だそうで。『プラトーン』『地獄の黙示録』『ディア・ハンター』などは、いずれも個人の視点から描かれていました。一人称の映画。これまでのベトナム戦争が一人称だったのは、「ベトナム戦争」を描くにあたって作家が慎重にならざるを得なかったからだ、と思うのですね。「これは個人の見方なんで色々捏造しているところもあるのでそこんとこよろしく」というわけです。つまり「ベトナム軍側も描いた」ということは、作者の図々しさを示していると言える。実際、ちゃんと考証をしたとは思えないベトナム兵描写だったりします。監督のランダル・ウォレスは『パール・ハーバー』の脚本にも参加しており、ベトナム国民は、「ベトナム兵はこんなもんと違う!」とムカッ腹を立てているのではないでしょうか? 知らん。

 で、結局、この映画は一般的な「敵」としてのベトナム兵を描き、ベトナム戦争においては敵も味方も頑張ったのだ、敵も含めて勇敢なる戦士を称えよ、銃後の妻は毅然と耐えよ、という論調で、これって古き良き「第二次大戦映画」みたいですね。これまでの「ベトナム戦争もの」で描かれてきた、「戦争がいかに決定的に個人を損なうか?」という視点はない。

 さて、銃弾を怖れず最前線に取材に来た記者バリー・ペッパーにメル・ギブソンは尋ねます。

「キミ、ジャーナリストにしては、肝っ玉があるじゃないか。なんで銃を取って戦わないのだ?」

 記者バリー・ペッパー答えて、

「ウチは先祖代々、兵隊の家系で、お国のために手足を捧げてきた。オレもその覚悟は出来ている。だが、今度の戦争には違和感がある。だからまず記者としてホントのところを確かめに来たのさ。」

 で、結局記者バリー・ペッパーも、アメリカ兵が奮闘する姿に感動し、自ら銃を取って戦士の列に加わります。ここにこの映画の肝があります。「色々疑問はあるかも知れんが同胞が戦っているならともに戦うべきだ」というわけですね。

 ま、そんなことはどうでもよく、戦闘シーンは一本調子で退屈なんですけど、「オレはどの兵隊よりも最初に戦場に降り立ち、最後まで戦場にとどまる。誰一人として置き去りにしない!」と豪語するメル・ギブソンの圧倒的な父性の発揮は見ていて気持ちいい! メル・ギブソン最高。また、「M-16 みたいなプラスチックのライフルは使いたくない!」と吠える鬼副官サム・エリオットもいい感じで、ホントに第二次大戦映画みたいです。

 この映画の主人公ハル・ムーアは、なんでも『地獄の黙示録』のキルゴア大佐のモデルの一人だそうで。「現場主義の頼りになる指揮官」も、コッポラたち西海岸ヒッピー世代から見れば、「イカれたジイ様」としか映らないわけですね。いやはや。

 現在もっともホットなプロパガンダ映画と言えましょう。でも、泣いちゃった。オノ・ヨーコ氏も「重要な反戦映画だ」と感動されているみたいですので、戦争映画好き、政治映画好きの方にオススメです。

☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Jul-10;

レビュー目次