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Movie Review 2000・5月1日(MON.)

マーシャル・ロー

 イスラム原理主義者のテロにたち向かう FBI 特別捜査官デンゼル・ワシントンの活躍を描く、と言ってもド派手な『ダイ・ハード』風ポリティカル・アクション、ではなく、もし、ニューヨークに「マーシャル・ロー」=「戒厳令」がしかれたら、という不条理 SF スリラーといったおもむきである。ブルックリン橋を戦車部隊がズゴズゴ走るシーンなど、戒厳令下のニューヨークの光景が、見どころ。ニューヨーク市、アメリカ軍の全面協力があってこそ実現できる「悪い冗談」。

 テロの原因は、CIA の暗躍、政府内部の権力争いであるという視点であり、アホな政治アクションとは一線を画している。イスラム原理主義者とアメリカの確執をムキムキに語っているので、怖れをなした配給会社が公開を延び延びにしたらしい、というくらいの生々しさは確かにある。

 もちろんテロリズムには断固たる対処をせねばならないのであるが、そこで踏み越えてはならない一線がある、軍を出動させて一気にテロ組織を根絶するのは短期的には効果が上がるが、それは対処療法であり、必ずテロは再発する。また CIA などの謀略機関にどうこうさせるのも、結局逆効果になる。良きアメリカニズム=多民族の協調、権力の暴走をチェックできる民主主義をつらぬいてこそ、「正しく」テロに対処できる、と、テロ政策に対する主張が行われており、少々ロマンチックとは思うがアメリカ保守層の「健全さ」を示している。

 監督は『戦火の勇気』のエドワード・ズウィック。一貫してアメリカ保守主義の立場からの政府、軍隊批判を続ける骨太い視座を持つ監督である。

 デンゼル・ワシントンは、一応演技派らしいが、『遠い夜明け』『マルコム X 』など、常に「どこか人を小馬鹿にした頭のいいヤツ」を演じ続けている。今回は FBI の偉いさんなんだが、映画の上映時間がまだ 1 時間残っているのに「テロの危険は去った!」と安全宣言を出すなど、マヌケ感漂い、芸域を少し広げたようなのでオススメだ。

BABA Original: 2000-May-01;

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