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Movie Review 2000・4月30日(SUN.)

アメリカン・ヒストリーX

公式サイト: http://www.historyx.com/

 結構話題になっているのかと思いきや、意外にお客さんは少なかったこの映画。かなり期待大! で見に行ったのですけれど。

 映画のテーマは、アメリカにおける人種間の憎悪です。父親を黒人に殺された若者が、それを契機に白人至上主義のグループに傾倒し、それに加えて彼を尊敬する弟がまた同じ道を辿っていこうとします。兄を演じるのは、『ファイトクラブ』が記憶に新しいエドワード・ノートン。弟を演じるのはミスター・アンハッピーボーイ、エデワード・ファーロング。

 エドワード・ファーロングのでている映画というのは、僕が過去に見た作品に限って言えば、ひとつもはずれがなかった。『アメリカン・ハート』『リトル・オデッサ』『判決前夜』などなど。すっかり不幸な少年がはまってしまっている感じですが、『I LOVE ペッカー』では久しぶりに爽やかな笑顔を見せてくれたましたね。僕は見逃しましたが。ですから、余計に期待も高まるというものです。いや、ホント、ファーロングはいい役者だと思いますよ。兄は、自宅に侵入して来た黒人をぶっ殺し、(まさに『ぶっ殺す』という言い方がぴったり)刑務所行き。3 年間の服役を終え、帰ってくるとまさに弟が同じ道を歩もうとしていた。しかし兄は服役中に何かあったようで、すっかり改心し、弟や、グループの仲間を戸惑わせる。

 テーマは明確だし、役者も素晴らしく、なんか文句のつけようがないようにも思えるんですけども、何か今ひとつ合点がいかないのはなぜだろう。ラストシーンはやや、読めてしまう嫌いはあるけれども、十分衝撃的だし、話の運びとしては最良の方法だろうとも思える。では何がひっかかるのか。我々日本人が見るには、少々演出過多で、ムードに流されてしまう嫌いがあるように思えるのだ。

 それはエドワード・ノートンの熱演が幾分か裏目に出てるような気もする。ファーロングの演技が非常にクールで抑えた感じが良かっただけにちょっと惜しい気がします。また、服役中の心の変化の描き方もちょっと説明不足と言うか説得力に欠けるというか納得できるほどのものではなかったように思います。ピストル連写して、首の骨をへし折って黒人をぶっ殺したやつの心がこんなにもあっけなく変わってしまうものなのかと。むしろ日本人に対しては、もっと生々しくドキュメンタリーのようなある種のドライさがあった方が直接効いてくるような気がするんですがね。所詮は遠い国の出来事だろうし、なんせ朝鮮人や、中国人の虐殺に至ってもぼやけた記憶の残像だったりするじゃないですか。ともあれ、アメリカ映画としてみれば、なかなかの出来だったりします。ドラマを求める人にはぴったりはまるでしょうね。一見の価値あり、損はないと思いますよ。怒りの無益なエネルギーは何も育まない、と言うメッセージは確かに伝わってきます。

kawakita Original: 2000-Apr-30;

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