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Text by 小川顕太郎
2005年08月08日(Mon)

やる事がある
etc

 ヤマネくん来店。実家に帰るため、しばしの暇乞ひにやつて来たテラリーと遭遇する。

「へー、実家に帰るんや。どれぐらゐ帰るの?」

「一週間と少し、です」

「そんなに帰んの! なんで? それ、楽しい?」

「いや、ボクには(実家で)やる事がありますから」

「! ……、格好いいやんテラリー。今時の若者とは思へないよ。普通は、あー暇! なんもやる事ない! 、て言ふのが学生の定番やけど。かういふ人間が、10年後20年後に同世代から抜け出してくるんだよなー」

「はい」

「はい、ッて……。でも、テラリー、もう就職活動なんとちやうん」

「いえ、ボクは院に進みますから」

「出た! とりあへず進路保留組!」

「いいえ、違ひます。ボクは大学に入る前から院志望でした。研究者を目指してゐるんです」

「へ? さうなの? なんで?」

「それは…ボクにはやりたい事があるからです」

「凄い! そんなに若いうちからやりたい事がハッキリしてゐるなんて! テラリーは幸せ者だねー」

「はい。自分のやりたい事をやれる道に進めるのは幸せです」

「うーん、バンザーイ! …ケンタロウさんはどうなんですか?」

 私は未だに自分のやりたい事もやるべき事もわかんないよ。むむむー、将来どうしやうかなー?

「ははは、まだ悩んでゐるんですか。哲学者にでもなつたらどうです?」

 んー、哲学者と詩人は食へないからなァ。とりあへず稼がんと。

「ははは、テラリーに還元して貰つたらどうです?」

 うん、ま、それは当然そのつもりだけど。

「ええ!? さうなんですか!」

 当たり前ぢやないか、テラリー。世話になつた人に恩を返せるのは幸せだぞ。マーヴィン・ゲイも教へてやつたぢやないか。

「そ、それは…」

「ははは、ボクの事も忘れないでね! いやー、テラリーの世話をしておいて良かつた。」

「ワ、ワッツゴーイノー!」

 うーむ、果たしてテラリーは実家から帰つてくるだらうか。

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