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 Diary 1999・12月22日(WED.)

アンチェイン・マイ・ハート

 徹夜のまま新幹線に乗り、東京に向かう。宿泊場所は「ホテルサンルート渋谷」818 号室。渋谷駅から 5 分程歩いた所にあり便利だが、年末料金なのか雑誌に載っていたより料金が高い。税別で 7700 円、風呂は共同。こんなものか?

 手早くチェックインを済ませ、代官山方面へ向けて歩く。「MASSE MENSCH」に行くためだ。ここの服は関西では大阪の「LUX」が扱っているが、他では扱っていないんじゃないかな? 60 年代スタイルを忠実に再現したりと、なかなかにイイ服屋さんで、最近の私とトモコのお気に入り。だから東京に行ったおりには必ず寄るように、というトモコからのお達しがあったのだ。

 ブラブラ歩きながら行くと、途中で「突撃洋服店」の東京店を発見。のぞく。小さな古着のセレクトショップ、といったかんじで、神戸の「突撃洋服店」とはかなり雰囲気が違う。値段もちょっぴり高めか。店長のウチズミさんと挨拶を交わす。ウチズミさんは昔、神戸の「突撃洋服店」で働いていたそうで、キタアキくんとかも知っているそうだ。しばらく話に花が咲く。ウチズミさんは実家が京都らしいので、里帰りした際には是非オパールに寄ってくれるように宣伝する。ちゃんと働いているでしょ。

「MASSE MENSCH」発見。古いビルの 2 階にあり、意外と広い。メンズの品揃えは「LUX」とあまり変わらないが、レディースが充実している。トモコが見たら狂喜乱舞して大変なことになるな、とひとりごちる。とりあえずトモコが「LUX」で買い逃したコート、映画「昼顔」でドヌーブが着ていたやつのレプリカ、を買う。これでなんとかトモコを納得させられるだろうと、ホッとする。もちろん店員のタグチさんにもしっかりオパールを宣伝しました。

 いったん荷物を置きにホテルに帰り、休みもせずに三軒茶屋のシアタートラムへ。並んで券を買っていると中からカノウが出てくる。一緒に茶店に行って、開演までの時間を潰す。「もっと宣伝すりゃ良かったかな」としきりに後悔するカノウ。やたらといろんな所に電話をして落ち着かない。芝居初日ともなれば、落ち着かないのも仕方ないか。開演。カノウの心配は杞憂に終わり、満席。第 1 部が「地平線の音階」、休憩を 10 分挟んで第 2 部が「黒い虹/白い紙」、全部合わせて 3 時間に及ぶ糸あやつり人形芝居「アンチェイン・マイ・ハート」、なのだけれども、な、な、なんじゃこりゃあ!!!

 のっけから 2 個の世界が同時に舞台上で展開され、それぞれの登場人物たちが同時に喋るので、何を言っているのかさっぱり分からないし、どこを見たらいいかも分からない。舞台脇には灰野敬二が陣取っていて、私はこの真ん前で見ていたのだけれども、ギターで爆音ノイズを出したりハープを奏でたり奇声を発したり太鼓を叩いたりしている。むうう、これは人形による前衛劇? やりましたね芥正彦さん。というのはこの芝居、カノウの戯曲を元に演出家の芥正彦が大幅に手を加えたものなのだ。カノウも初めてみるらしく、少しばかりあっけにとられている。休憩時間には芥正彦が寄ってきて、「どうだ!」といった笑みを浮かべてカノウの腹にブロウを入れる。むうう。

 第 2 部に入れば芥色はますます濃くなり、ほとんど反天皇劇。その昔、作・演出が芥正彦、音楽が灰野敬二と阿部薫、という面子で反天皇劇をやったことがあるのだが、右翼に襲撃され中止に追い込まれたことがあるそうで、もしかしてその時のリベンジなのか? 三島が切腹まえにやった演説のテープが流され、原爆のビデオが写り、ヘリコプターが飛ぶ。地面は開き、役者は空中から吊されて人形を操り、巨大扇風機は観客の髪の毛を乱れさす。高さ 3 メートルはあろうかというどでかい顔に武士が弓矢を 3 本打ち込むと、灰野敬二の爆音ノイズとともに顔がバラバラに砕け散る……。とにかく訳は分からないが、強烈なものを見せられたという印象。それにしても舞台装置が大がかりなのには驚かされた。こんなことしてペイできるのか? と問えば、連日満員でも 700 万円の赤字らしい。な、なんでや? 芥正彦というのはそういう人らしく、昔から彼の劇はめちゃお金がかかっていて、どうみても赤字。いったいどこから奴は金を調達してるんや、もしかして 3 億円事件の犯人ちゃうか、という噂も流れたらしい。60 年代アングラ文化の天才児にふさわしい噂ですな。

佐川さん、可能くん、根本さんと私 終演後、同じく観劇に来ていた根本敬、佐川一政と、可能涼介、私、の 4 人で飯を食いにいく。ネモトさんに連れられて「鷹尾」という飯屋にいったのだが、いかにもネモトさん好みのイイ顔のおやじが二人でやっている。「カウンターのおやじがネコで、中にいるのがタチだよ」とネモトさん。なるほど。


佐川さん、可能くん、根本さんと私 劇中に出てきたカニバリズムについてサガワさんに話を伺ったり、ネモトさんとラリーズの話をしたりする。ネモトさんに新著をいただく。「時代の体温」という題名で、根本敬・作画、湯浅学・作音、の CD ブックだ。表紙の裏にサインと絵を書いて貰う。「三軒茶屋 アンチェイン・マイ・ハート 初演の日に 99 12/22 根本敬」。

 くたくたになってホテルに帰り着く。泥のような眠りに引きずり込まれ、落ちていく。

小川顕太郎 Original:2000-Dec-24;