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 Diary 2005年3月6日(Sun.)

環境リスク学

 私が「中西準子」の名前を知つたのは、日垣隆がやつてゐるラジオ番組「サイエンストーク」を纏めた本『いのちを守る安全学』を読んだ時だつた。その時に、お! この人は凄いかも、チェック、チェック、と、名前を記憶しておいたのだけれど、いつかこの人の著作を読まう、読まねば、と考へてゐるうちに月日はドンドンと流れ、こんな事ではいかんと昨年、やつと『環境リスク学』を購入したのだが、例によつて例のごとく、購入しただけで積ん読状態にあつた。が、本日、読了した。そして、非常な衝撃を受け、今までこの本を放置してきた事を激しく後悔するはめとなつた。そこには、BSE(狂牛病)はそれほどリスクは高くない、といつた内容の事が書いてあつたのである!

 これはショックだ。私は狂牛病はやはり危険で(危険度が高く)、それの流入を日本の高い検査基準(全頭検査+危険部位除去)が防いでゐる、故に日本では比較的安心して牛肉が食べられる、と考へてきた。だからこそ、日本がアメリカに合はせて全頭検査を止め、アメリカ牛の輸入を再開する事を、アメリカの圧力によるものと解釈し、怒つてゐたのだ。それが、全頭検査はあまり意味がないので即刻やめよ、といつた内容の事がこの本には書いてあるのである。さらに狂牛病に罹患する確率が出してあるのだけれど、恐ろしく低い。実は私、表や数字に弱いのでこれらの事が正しいのか、あるひはそもそも自分の読み方が正しいのかどうかも自信がないのだが、中西準子と彼女を支持してゐる日垣隆に対する信頼度から言つて、いちおうこの数字は信じざるを得ない。といふ事は、狂牛病はダイオキシンや環境ホルモンと同じく、単なる空騒ぎだつた事になる。マジ?

 で、ここで、私も依拠してきた(全頭検査廃止)反対派の人々の意見を読み直してみる。日記にもとりあげたので、雑誌『わしズム』平成16年9月25日号の「狂牛病ふたたびの恐怖」(福岡伸一×宮崎哲弥×小林よしのり)を読み直す。福岡伸一と宮崎哲弥は、以前からも各所で狂牛病の恐怖を喧伝してをり、この鼎談はそれまでの主張を分かりやすくまとめたもの、とも言へるし、なにより中西準子の『環境リスク学』中の狂牛病に関する文章「全頭検査で『安心』を買う愚かしさ」の初出が『中央公論』2004年5月号なのだ。時期も近いし、扱つてゐる問題も重なる。

 そこで私なりに反対派の人々の意見を纏めると、

  1. アメリカでは検査する牛のサンプル数が少なすぎる。1億頭ゐるうち、約2万頭、最近でも22万頭に増やしたに過ぎない。こんな事では感染牛がちやんと検出できる訳がない。だからちやんと全頭検査せよ。
    また、アメリカの検査法は他国に較べても杜撰だ。
  2. イギリスでは現在までで約150人の感染者が出てをり、これを基に感染率を出してゐるが、狂牛病は潜伏期間があるので、今後もつと増えるかもしれない。つまり、今後感染率は急激にあがるかもしれない(リスクは増えるかもしれない)
  3. 狂牛病はいまだメカニズムがよく分かつてゐない未知の病気である。原因となるとされてゐるプリオンは、宿主によつて進化するとも言はれてをり、今後どのやうな恐ろしい展開をみせることになるやもしれない。ので、今のうちに徹底的に根絶しておくべきだ。
  4. プリオン専門調査会が出したリスク評価は、仮に死者が出ても0.8人、となつてをり、確かにこれは交通事故で死ぬ確率よりずつと低いが、人の死を確率で語るな! 確率でものを言ふなら薬害なんて問題にできない。ここには重大な感性の欠落がある。

 の四つになると思はれる。実は、狂牛病問題は政治問題だ! といふのがまた大きな批判点としてこの3人から出されてゐるのだけれど、それはこの場合問題が別だと思はれるので、その意見は省いた。

 さて、では次にこれらの批判が妥当なのかどうか、中西論文を基に検討していく訳だが、時間がないので続きは明日に

小川顕太郎 Original: 2005-Mar-9;
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