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 Diary 2004・9月4日(Sat.)

セイブザチルドレン

 ここ 2 ヶ月ほど、密かに日本の音楽界を騒がせてゐる話題があつて、それは日本初の本格的ビーフ、と言はれてゐる、K DUB SHINE VS デブ・ラージのディス合戦である。まだネット上の事とは云へ、お互ひにハッキリと名指しで相手をディス(貶す)する曲を発表しあつてゐる。音楽誌も、この事件に触れるやうな触れないやうな、遠回しの姿勢をとつてをり、「blast」の 10 月号ではとうとう編集長が意見表明を出した。私は京都にゐるのでよく分からないのだが、東京といふ狭い土地にある業界では、色々とややこしい事がありさうな感じである。

 さて、このビーフの様相だが、私は日本のラップには全く詳しくないのであくまで適当な印象判断だが、デブ・ラージ優勢、と見える。お互ひの発表した曲を聴いた訳ではないが、一応リリックは読んでをり、それから判断しても、様々な乱れ飛ぶ情報から判断しても、デブ・ラージが優勢なんぢやないか、と思ふのだ。しかし、この判断には、デブ・ラージは一度オパールに来てをり(そしてシールを店中に貼つて帰つた)なんとなく好感が持てること、対して、K DUB SHINE に私はもともと良い印象を持つてゐない、といふ偏見が多少なりとも作用してゐる可能性がある。K DUB SHINE は、云はずとしれたキングギドラのメンバーで、現在の日本語ラップを確立した人物とされてゐる。が、この現在の日本語ラップを確立したとされるキングギドラの記念碑的作品『空からの力』を昔聴いた時に、私は「なんぢや、これはー! 下らなすぎる!!」と思ひ、それ以来キングギドラ関係の作品は聴かず嫌いできてゐるので、当然 K DUB SHINE の作品も聴いたことがなかつた。また K DUB SHINE といふ人は、社会派的なラップをしたり、インタビューで色んな人々をこき下ろしまくつたりと、かなり「イタい」人といふ印象が、メディア上で流布されてをり、それも私の偏見に拍車をかけてゐたと思ふ。だから、今回も「K DUB SHINE 負けるだらうな。ま、みんなに鬱陶しがられてゐたやうだし、自業自得さね」ぐらゐの気持ちでゐた。

 ところが、トモコが独自に色々と情報を集めてゐる過程で、「K DUB SHINE ッて、いいかも」と言ひ出したのだ。なんでも幼児虐待をテーマにした『セイブザチルドレン』といふ曲のリリックを読んだらしいのだが、それが凄くいい、といふのだ。私は半信半疑であつたが、ここは私の偏見を正すいい機会かもしれない、と思ひ、K DUB SHINE のベスト盤『世界遺産』 を、中古屋で購入してきたのである。

 そして、聴いてみた。セイブザチルドレン。不覚にも、泣いてしまつた。いい、もの凄くいい。まさか日本語ラップなんぞに泣かされるとは、夢にも思はなかつた。あまりにもストレートなリリック。ギャグと紙一重の天然さ加減。しかし、恐ろしく力がある。誰がここまでまともな事を、照れもせずハッキリと歌へるのか。普通の人間は、恥ずかしくてとてもこんなこと、口にできない。私は、K DUB SHINE はワイズフールなんぢやないか、と考へた。みんなから阿呆と思はれてゐるが故に、誰もが恐れて口にできない真実を口にできる。私は、猛烈に感動しました。

「もし殴られてそうな子供がいたら すぐオレに言え」ーセイブザチルドレン

 この名曲、一度は聴いてみる事をオススメします。

小川顕太郎 Original: 2004-Sep-6;
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