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 Diary 2004・5月17日(MON.)

輸入盤CDが消える

 書かう書かうと思ひながら、ついつい先延ばしにしてきたんだけれど、BBS にマキさんが書き込んでくれた事もあるし、勢ひに乗じて書いてしまおう。今国会で審議されてゐる著作権法改正案のことだ。…ほんまねー、私、正直なところ、よく分からないのよ。こんな愚かな法案が通るなんて、一寸考へられない、といふのが率直な感想で。でも、なんと! 4 月 21 日には参議院を通つたらしくて、もー、ねー、なんか、マジ? って、感じ。とりあへず、私の理解してゐる範囲で事態を説明してみます。(多少、誤解があるかもしれませんが)

 まづ、最初はいはゆる「還流 CD 防止」といふ事で始まつたんだよね。アジア各国で作られてゐる日本人アーティストの CD (宇多田ヒカル、とか)が、逆輸入で日本に入つてきてゐる事は、最近レコード屋に行つたことのある人なら気がついてゐると思ふけれど、これが安い! こんな事では日本で作つてゐるオリジナル盤(?)が売れないぢやないか、といふ事で、まァ、この「還流 CD (逆輸入 CD)」が日本に入つてくるのを禁止しようと。これなら分からないでもない、と思つてゐたら、出来上がつた改正案を見ると、なんと! 並行輸入 CD も入れられない、といふ事になつてゐる。つまり、日本盤が出るやうな外国の有名アーティスト(ジャネット・ジャクソン、とか)の CD も輸入できない(輸入盤の発売ができない)、といふ事なのだ。となれば、どういふ事になるのか。

 有名・人気アーティストの作品は、とりあへず日本盤といふ形で発売される。が、これの問題点は、(1)値段が高く、(2)質が悪い、といふ事だ。日本盤は、今でさへ値段が高い。輸入盤で 1500 円前後で売つてゐるものが、2500 円ぐらゐで売つてゐる。これも、たぶん輸入盤が安いのでそれに合はせて渋々この値段にしてゐるフシがあるので(妄想?)、輸入盤がなくなれば、さらに値段があがる可能性がある。で、日本盤の CD といふのは、ほとんどがコピーコントロール CD で、これは音が悪い! といふ事で、音楽ファンの間では非常に評判が悪いものだ。つまり、我々は、質の悪いものを高くで買はされる、といふ事になる。

 しかし、問題はさらに悪い。日本の音楽文化は、世界中の様々な良質な音楽、一般受けはしないけれど音楽ファンの間で愛されるやうなマイナーなアーティストの作品が大量に聴ける、といふ事によつて支へられてゐる部分が大きい。が、そのマイナーなアーティストの作品が入つてこなくなる可能性があるのだ。確かに、日本盤が出ないやうなマイナーなアーティストの作品は、今回の法案の適用外だ。しかし、これらの CD を輸入してゐるインポーターと言はれる輸入代行業者が、日本盤が出るやうな人気アーティストの作品を扱へなくなることで、廃業に追ひ込まれるかもしれないのだ。さうなれば、マイナーなアーティストの作品を聴くことが絶望的に困難になる。マイナーなアーティスト、と言つても、それは一般人(音楽にそれほど興味のない人たち)の間での話であつて、音楽ファンの間では大メジャーといふ場合がしばしばあるのは、言ふまでもないだらう。

 世界中の様々な優れた文物を輸入し、それを吸収・消化する貪欲さによつて、日本文化は支へられてゐる。これは音楽に限つたことではなく、日本文化全般に言へることだ。つまり、今回の輸入 CD を禁止しようとする動きは、日本文化を否定しようとする国賊的行為、と言へるだらう。演歌でさへ、60 〜 70 年代の洋楽文化の影響下に産み出されたことを忘れてはならない。

 とにかく最近の日本政府は、日本の独立と自尊を守るための自衛隊を、アメリカの尻ぬぐいのために(イラクに)派遣したりと、国賊的行為が多すぎる。このやうな事ではいずれ平成維新が……などと妄想してしまうのは、オパールが暇だからでせうか。

小川顕太郎 Original: 2004-May-19;