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 Diary 2003・10月24日(FRI.)

日本シリーズ

 とうとう来てしまつた、甲子園。今年はあれほど縁がなかつたのに、最後の最後に、日本シリーズの時にやつて来るなんて…。まるで実感が沸かない。本当に今日あるのか、試合。この時間だと、すでに試合は始まつてゐるはずだ。私は少し遅れて、阪神甲子園駅に着いたのだ。

 駅から出るとすでに空気がどよめいてゐる。球場の方から地鳴りのやうな音が響いてくる。うーん、ホントにやつてゐるよ、試合。私はしばし、球場の前に佇んだ。ヤマネくんと待ち合はせをしてゐる 18 番ゲートに向かひ、その前のベンチに腰を下ろす。ヤマネくんは仕事の関係上、さらに遅れるのだ。ウーハーのやうに揺れる球場を前に、空気の振動に身を任せて、ヤマネくんを待つ。いい感ぢだ。実にいい感ぢになつてきた。このまま此処にゐてもいいな…。

「お待たせしましたー!!!」

 おー! ヤマネくん。行きますか!

「阪神、負けてゐるんですよー」

 お、さうなのか。まァ、まだまだこれからだからね。私とヤマネくんは人の山を掻き分け掻き分けして、自分達の席に着いた。レフト側だつたので、すぐ隣がダイエーホークスの応援席である。少ない人数ながら、かなり派手に応援してゐる。ほー、なかなかやるぢやないか、と私は感心しながらダイエーの応援を見てゐたのだが、いざ回が変はり阪神の攻撃になると、そんな感想は吹つ飛んだ。球場全体が叫んでゐるやうだ。これは、気持ちいい。私も応援バットを 2 本、しつかり手に持ち、うろ覚えのヒッティングマーチを絶唱した。…

 さて、試合の方は、もう皆さん御存知のやうに、桧山のヒットで逆転し、そのままダイエー打線を押さへ込んで、みごと阪神が勝利を収めた。これで甲子園 3 連勝である。日本一への王手をかけたことになる。多分、今日が今年最後の甲子園での試合になるので、みんなの応援にも一層の気合ひが入つてゐたやうだ。逆転した時は、周りの人々とお互ひバットを打ちつけあひながら騒いだし、風船を飛ばした時は、その尋常でない量の色とりどりの風船の乱舞に、思はず溜息が出た。そして「あとひとり」コールから「あと一球」コールへ、ズバッと三振に切つてとつた時の爆発、その終はらない余波…。

 球場を出て、内野席で試合を観戦してゐたチカラくんとジンくんに逢ひ、勝利を喜びあふ。球場前の広場にはすでにかなりの数の人々が群れ、ヒッティングマーチを歌つて騒いでゐる。我々もなんとなくそれに引き寄せられ、一緒に歌ひ出した。「バース、カッ飛ばせ、バース、ライトーにレフトにホームラン!」。なぜバースなのか、そして、さらになぜ掛布コールに、真弓コールなのか。もう、何でもいいんだらう。次々と人は集まつてくる。歌は終はりさうにない。

 京都まで帰る事が出来るのかなァ、と頭の片隅で思ひながら、私はバットを叩き続けた。

小川顕太郎 Original:2003-Oct-26;