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 Diary 2002・11月18日(MON.)

ナオちゃん帰国

 3 年半ほど英国に留学していたナオちゃんが帰国、ヤマネくんと(ババさんも?)ともに来店した。ナオちゃんは 3 年半の留学期間中、一度も日本に帰らなかったので、こちらの様子が全く分からず、帰国前になって、ひとつ京都の様子をさぐってやろうと、自分がいなかった時期のオパールのサイトをチェックしてみたのだそうだ。するとそこには「オイシン」という見慣れぬ名前が頻出し、どうやらこの「オイシン」はかなりのアホのようで、且つみんなに虐められている。なんて可哀想な、という憐憫を催すと同時に、どのような人なのか見てみたいという興味が猛然と沸いてきて、日本に帰ってオパールを訪ねる時には是非会ってみたいと思うようになった。その希望を聞いたヤマネくんが、僕にお任せ! とばかりにオイシンに連絡をとり、本日に備えていたのだという。

 しかし、先に来ているはずのオイシンはオパールに居ない。慌ててヤマネくんがオイシンに連絡をとると、案の定オイシンはすっかり今日の約束を忘れていたのであった。

「いやー、オイシンってアホだから」と言い訳しつつ、ナオちゃんの期待を盛り上げるヤマネくん。しばらくしてオイシン登場。

「オイシンでーす」

「………なんか、想像と違うわ…」と、少し落胆するナオちゃん。確かに現在のオイシンは、見ようによっては普通のちょっとお洒落な若者だ。これはいかんと焦ったヤマネくんが、オイシンのアホさを引き出そうと、突っ込みをいれた。

「オイシン! いったい何をしてたんや! あれだけ約束したのに!!」

「いやー、すんません。『神聖喜劇』を読むのに夢中になって、時間がたつのを忘れていたんです」

「な、なにー!!」

 あ、あれ? オイシン、ちっともアホっぽくないぞ。なんか賢い人みたいだ。そこで、ババさんが助け船を出す。

「オイシン、最近観た映画の中で、面白かったのはなんや?」

「そうですねー、ビデオですけど、先日観た『ナッティー・プロフェッサー』がよかったですね」

「な、なにー! 素晴らしい答えだあー!」

 とババさんも頭を抱える。い、いかん、ちっともオイシンのアホさが伝わらない。ナオちゃんも、恐る恐るオイシンに質問してみる。オイシンもイギリスに行った事がある、というのを聞いていたからだ。

「えーっと、イギリスでは、どこが良かったですか?」

「そうですねー、夏目漱石記念館ですね」

「ウソー! なんでー?」

「ボクは漱石を愛読しているんですよ。それで、感激もひとしおでした」

「!!!!!!」

 ……ダメだ。ちっとも、おもしろくない!! オイシンはオパールに通って小知恵をつけて、自らの美質を大部分失ってしまった。あーあ、昔のオイシンはおもしろかったなあー、とみんなは嘆息しながら帰っていった。

 ひとりカウンター席に残ったオイシンは、『神聖喜劇』の続きを貪るように読んでいた。

「店主! これを読み終わったら、次は『阿房列車』に挑戦しようと思っているんです!」

 そ、そうですか。頑張って下さい。

小川顕太郎 Original:2002-Nov-20;