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 Diary 2002・3月23日(SAT.)

かっぱ巻き

 食べ物の嗜好が変わって、ああ大人になったなあ、とか、年を取ったなあ、と思う事がしばしばある。最近では、なんといっても寿司の好みの変化だ。「太巻き」と「かっぱ巻き」が好物になってしまったのだ。

 子供の頃は、この二つが大嫌いだった。母親が能をやっていた関係で、私は小さい頃から何度となく能楽堂に能の大会を観に行っていたのだが、ここで出されるお弁当というのが、太巻き一本。これがイヤでねえ。こんなもん寿司じゃない、にぎりを出せ、にぎりを。にぎりがダメなら、せめてネギトロ巻きとか新香巻きとか、もっとバラエティに富んだものを出せ! と、怒っていた。能楽堂の、なんともいえない陰気な感じと相俟って、太巻きは見るのもイヤだった。

 さらに子供の私にとって不可解だったのが「かっぱ巻き」。これこそ、もう子供騙しとしか思えなかった。だって、胡瓜が巻いてあるんだよ、胡瓜が。胡瓜と寿司にいったい何の関係があるのか。手抜きとしか思えない。たまたまそこに胡瓜があったから、寿司に巻いてみただけじゃないのか。子供の頃の私は、かっぱ巻きとは、寿司屋が手抜きのために、あるいは詰め合わせの量を水増しするために、いわば花束における霞草のような感じで作られているんだと、固く信じていた。

 ところが、なんとトモコが大の「かっぱ巻き」好きだったのだ! 私はトモコから「巻き寿司の中では、かっぱ巻きが一番好き」と聞かされた時、自分の耳を疑った。ちょっと変なんじゃないか? といささか不安な気持ちに襲われたのだが、考え直して、すぐに安心した。少なくとも、寿司の詰め合わせを食べる時、取り合いにはなるまい……。

 が、今や私が大声で結論するに、「寿司は極めれば『かっぱ巻き』だ!」。「かっぱ巻き」こそが寿司の最高峰だ。私はかっぱ巻き(と太巻き)さえあれば、他の寿司は要らない。この事を、ミツギちゃんやクニトモさんに伝えたら、「ええー! かっぱあー! ?」と笑われてしまった。ふっふっふ。まだまだみんな分かっていないな。まあ、これでミツギちゃんやクニトモさんと、寿司の取り合いで喧嘩する事はあるまい。トモコも今では寿司を食べないから、かっぱ巻きは私のものだ。

「いやあ、ボクも大きくなって、かっぱ巻きが一番好きになりました。」

 むむ! ワダくん。そうか、ワダくんとは、かっぱ巻きの取り合いになるかもしれん。「子供はみんな『かっぱ巻き』が嫌いでしょう。きっと子供の成長には、胡瓜は必要ないんですよ。」

 うむうー。独特な考え方やな。とにかく今日は助六寿司を買ってきて、残念ながらかっぱ巻きは入っていず、太巻きといなり寿司だけだったので、私が主に太巻きを食べ、ワダくんがいなりを食べた。はっはっは、ワダくんはいなり好きだったのだ。喧嘩にならなくて良かった。

小川顕太郎 Original:2002-Mar-24;