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 Diary 2002・7月16日(TUE.)

神聖喜劇』復刊!

 戦後の日本文学を代表する傑作、大西巨人『神聖喜劇』がとうとう復刊した。光文社文庫で全 5 巻。とりあえず第一巻が出たので、本日さっそく購入する。1048 円+税。高い、という事は決してない。安すぎるぐらいだ。私はこの日記を読んでいる人すべてに、購入を勧める。

 前にも書いたが、私が大学生の時に『神聖喜劇』はちくま文庫から復刊したのだけれど、ぐずぐずしているうちに絶版(品切れか?)状態となり、それから 10 年ほど、読みたいのに読めないという苦しみを味わった。そして昨年、ババさんから借りて読み、驚きとともに至福の読書体験を得、多大な感銘と絶大な影響を受けた。だから、今買っておかないと、今度はいつ絶版になるか分かったもんじゃないですよ、と皆さんに注意しておきたい。そして、みなさんが得るであろう初読の感銘を、真剣に嫉妬します!

 ババさんも、すでに持っているにも関わらず、「また買おうーっと」と言っていた。当然ですよね!

 ところで、そのババさんから、本日『カバチタレ!』を借りた。これは原作・田島隆、絵・東風孝広のマンガで、『ナニワ金融道』の青木雄二が監修をしている。絵、内容とも『ナニワ金融道』とそっくりで、こちらは行政書士の世界を描く。もちろん、現在オパールが法律問題に巻き込まれている(?)ので、貸してくれたのだ。さっそく読む。

 うーむ、面白い。世の中の様々な民事上のトラブルに巻き込まれた依頼人を、法律をうまく使って助ける(そして報酬をもらう)。それが行政書士だ。頭脳を使って、サバイブするのだ。

 ……ここでフッと思ったのだが、これってちょっと『神聖喜劇』に似ていないか? 『神聖喜劇』では、軍隊内の様々な理不尽に対して、主人公の東堂太郎は、「内規」など様々な軍隊内の取り決めを盾にとって、論理的に闘いを挑んでいく。その法律があってなきがごとき、すべてが曖昧な軍隊内の様子が、日本社会を象徴しているとされ、戦時中の軍隊内での話ながら、戦後日本社会への批評にもなっている、と『神聖喜劇』は評されているのだ。

 …しかし、東堂太郎は別にトラブルの解決を目指している訳ではない。論理の貫徹を目指しており、あたかもトラブルの解決は眼中にないかのようだ。そこが、『カバチタレ!』とは大きく違うところで、行政書士は商売なので、トラブルの解決を目指す。私もトラブルの解決を目指している。が、だからと言って、『カバチタレ!』の方が『神聖喜劇』より役にたつかと言えば、必ずしもそうは言えなくて、「無用の用」という形で『神聖喜劇』の方が絶大に役に立っているかもしれない。それが、優れた文学の効用というものですから……。

 ま、とにかく、『神聖喜劇』は早めに買っておいた方がいいですよー、という事で。

小川顕太郎 Original:2002-Jul-17;